不動産の取引や相続、農地転用などの手続きを進める際、「公図を取得してください」と言われて戸惑った経験はありませんか。
公図は土地に関する重要な情報が記載された図面ですが、一般の方には馴染みのない書類かもしれません。
この記事では、行政書士の視点から、公図の基本的な知識から取得方法、実務上の注意点まで、わかりやすく解説します。
土地に関する手続きを控えている方は、ぜひ最後までお読みください。
1.公図とは何か?土地の位置関係を示す重要な図面
公図とは、法務局に保管されている図面で、土地の位置や形状、地番、隣接する土地との関係などが記載されたものです。
正式には「地図に準ずる図面」と呼ばれ、不動産登記法第14条第4項に規定されています。
公図には、以下のような情報が記載されています。
• 地番:土地ごとに割り振られた番号
• 土地の形状:各土地の大まかな配置と形
• 隣接関係:どの土地と接しているか
• 道路や水路:無地番地(国や自治体が所有する土地)の位置
ただし注意が必要なのは、公図には「14条地図」と「地図に準ずる図面」の2種類が存在するという点です。
〈14条地図と地図に準ずる図面の違い〉
14条地図は、正確な測量に基づいて作成された精度の高い地図です。
現地復元能力を有し、仮に境界が不明になっても一定の誤差範囲内で復元することができます。
令和5年度末時点で全国の進捗率は約53%となっています。
一方、一般的に「公図」と呼ばれる地図に準ずる図面は、主に明治時代の地租改正時(明治6年~14年)に作成された図面をベースにしています。
当時の測量技術は現代と比べて未熟で、測量経験のない村民たちが縄を使って測ったものです。
そのため、正確性には限界があります。
2.公図が必要になる場面とは
公図は、土地に関するさまざまな場面で必要とされます。
特に行政書士業務において、公図の取得が求められる代表的なケースをご紹介します。
① 不動産売買・相続手続き
土地の売買や相続の際、対象となる土地の位置や隣接関係を確認するために公図が必要です。
特に境界が不明確な場合、公図は重要な資料となります。
② 農地転用許可申請
農地を宅地や駐車場、資材置き場などに転用する場合、農地法に基づく許可申請が必要です。
この申請書類の添付書類として、対象農地の公図が求められます。
公図には対象農地を色枠で囲み、周辺土地の地番や地目、所有者名を記入します。
③ 開発行為や建築確認申請
土地の開発や建物を建てる際の建築確認申請でも、敷地の位置関係を明確にするために公図が必要となることがあります。
④ 補助金・助成金の申請
事業用地に関する補助金申請において、事業実施場所を証明する資料として公図の提出を求められるケースがあります。
⑤ 各種許認可申請
建設業許可、宅地建物取引業免許、産業廃棄物処理業許可など、事務所や事業所の所在地を証明するために公図が必要になることがあります。
3.公図の取得方法を詳しく解説
公図は、誰でも法務局やインターネットを通じて取得できます。
他人が所有する土地の公図も、所有者の許可なく取得可能です。
ここでは、主な取得方法をご紹介します。
① 法務局の窓口で取得する方法
最も基本的な方法です。全国どこの法務局でも、全国の公図を取得できます。
〈手順〉
⑴ 法務局の窓口で「地図・地図に準ずる図面(公図)交付請求書」に必要事項を記入
⑵ 450円分の収入印紙を貼付して提出
⑶ その場で公図を受け取り
〈必要な情報〉
• 土地の所在(例:○○市○○町○丁目)
• 地番(住所とは異なるので注意)
〈窓口対応時間:平日9時~17時〉
地番がわからない場合は、法務局に備え付けのブルーマップで確認するか、職員に尋ねることができます。
② オンラインで取得する方法(登記情報提供サービス)
法務省が運営する「登記情報提供サービス」を利用すれば、インターネットから公図をPDFファイルでダウンロードできます。
〈メリット〉
• 平日8時30分~21時まで利用可能
• 自宅やオフィスから申請できる
• 手数料が365円と窓口より安い
〈デメリット〉
• 公印がないため証明力がない(閲覧用)
• 金融機関への提出用には使えない
利用にあたっては、事前に登録手続きが必要です。
「一時利用」を選択すれば、インターネットとメールが使えるパソコンがあればすぐに利用できます。
③ オンライン申請で証明書を取得する方法
法務局の「登記・供託オンライン申請システム」を利用すると、証明付きの公図をオンラインで申請できます。
〈手順〉
⑴ システム内の「かんたん証明書請求」から申請
⑵ 電子納付で手数料を支払い
・窓口受取:430円
・郵送受取:450円
⑶ 指定した法務局の窓口または郵送で受け取り
〈利用時間:平日8時30分~21時〉
この方法なら、法務局に出向かなくても正式な証明書を取得できます。
ただし、電子納付の手続きに慣れが必要です。
④ 郵送で取得する方法
法務局のホームページから申請書をダウンロードし、450円分の収入印紙を貼付して郵送します。
返信用切手を貼った封筒を同封すれば、郵送で公図が届きます。
⑤ G空間情報センターで無料閲覧
2023年(令和5年)から、G空間情報センターにログインすることで、公開されている公図データを無料で閲覧できるようになりました。
ただし、これらは法的証明力のないデータです。
⑥ 市町村役場での取得について
一部の市町村役場でも公図(地籍図)の写しを取得できます。
ただし、役場の公図は毎年1月1日時点のものであり、その後に分筆登記などが行われた場合、法務局の最新公図とは内容が異なる可能性があります。
そのため、許認可申請などで使用する場合は、法務局で最新の公図を取得することをお勧めします。
4.公図を見るときの重要な注意点
公図を取得したら、以下の点に注意して確認しましょう。
① 現地との誤差がある可能性
公図の多くは明治時代に作成されたもので、当時の測量技術は未熟でした。
そのため、現地の形状や寸法と完全には一致しないことがあります。
判例では、公図について以下のような評価がされています。
• 定性的な情報(土地の配列、形状、道路や水路の有無)は比較的正確
• 定量的な情報(距離、角度、面積)は必ずしも正確ではない
つまり、「この土地はどの土地と接しているか」「境界線は直線か曲線か」といった情報は信用できますが、「正確な距離や面積」は現地測量で確認する必要があります。
② 地図混乱地域に注意
一部の地域では、公図と現況が全く合致しない「地図混乱地域」が存在します。
このような地域では、公図から正確な隣接関係を把握することができず、境界確定作業に大きな障害となります。
③ 無地番地の存在
公図上で地番が記載されていない土地を「無地番地」と呼びます。
これらは一般的に国が所有し、各自治体が管理している道路や水路です。
もし対象土地内に無地番地が含まれている場合、その部分には建物を建てることができません。
払い下げ(購入)や付け替え(位置の交換)の手続きが必要になる場合があります。
④ 分類欄の確認
公図の下部にある「分類」欄を確認してください。
• 「地図(法第14条第1項)」:精度の高い14条地図
• 「地図に準ずる図面」:一般的な公図
どちらが備え付けられているかによって、信頼性が異なります。
⑤ 縮尺の確認
公図の縮尺は地域によって異なります(例:1/250、1/500、1/600など)。
縮尺を確認し、必要な情報が記載されているか確認しましょう。
⑥ 周辺土地情報の把握
許認可申請などで公図を添付する際は、対象土地だけでなく、周辺の地番、地目、所有者名なども記入することが求められます。
これらの情報は、登記事項証明書(登記簿謄本)を取得して確認します。
5.行政書士ができること・できないこと
行政書士は、土地に関するさまざまな手続きをサポートできますが、業務範囲には法律上の制限があります。
〈行政書士ができること〉
① 公図の取得代行
依頼者に代わって法務局で公図を取得することができます。
複数の土地の公図をまとめて取得する必要がある場合など、時間と手間を節約できます。
② 位置図・案内図の作成
許認可申請に必要な位置図や案内図を、公図や市販地図を基に作成できます。
対象地と最寄り駅、役場、主要道路との位置関係を示した図面の作成は、行政書士の業務範囲です。
➡ 行政書士の図面作成については「こちらの記事もおすすめ」
③ 農地転用許可申請
農地転用の許可申請書類の作成と提出代行ができます。
必要な添付書類である公図の取得から、事業計画書、土地利用計画図の作成まで、一連の手続きをサポートします。
➡ 農地転用については「こちらの記事もおすすめ」
④ 各種許認可申請での公図活用
建設業許可、産業廃棄物処理業許可、風俗営業許可など、事業所の所在地を証明するために公図を活用した申請書類の作成を行えます。
⑤ 補助金・助成金申請サポート
事業用地に関する補助金申請において、公図を含む必要書類の準備と申請書作成をサポートできます。
⑥ 相続財産目録の作成
相続手続きにおいて、不動産を含む財産目録を作成する際、公図を活用して土地の位置関係を明確にすることができます。
〈行政書士ができないこと〉
① 測量業務
土地の測量は土地家屋調査士の独占業務です。
境界確定測量、現況測量、地積測量図の作成などは、行政書士では対応できません。
② 登記申請
不動産の登記申請(所有権移転登記、分筆登記、地目変更登記など)は司法書士または土地家屋調査士の業務です。行政書士は登記申請を代理することはできません。
③ 境界紛争の法的対応
境界をめぐる紛争が訴訟に発展した場合の代理人業務は、弁護士の独占業務です。
行政書士は裁判所での代理はできません。
④ 税務相談・申告
不動産の取得や売却に伴う税金の相談や申告は、税理士の業務です。
行政書士は税務相談を行うことはできません。
6.行政書士業務で公図が必要になる具体的な場面
行政書士として実際に業務を行う中で、公図が必要となる代表的な場面をご紹介します。
① 農地転用許可申請
農地法第4条(自己の農地を転用)または第5条(農地の売買を伴う転用)の許可申請では、必ず公図が必要です。
公図には対象農地を色枠で囲み、周辺の土地の地番、地目、所有者氏名を記入します。
周辺土地の情報は登記事項証明書を取得して確認する必要があり、複数枚の公図と登記簿謄本を準備することも珍しくありません。
➡ 農地転用については「こちらの記事もおすすめ」
② 開発行為の許可申請
都市計画法に基づく開発行為許可申請でも、開発区域の位置を示すために公図が必要です。
開発区域内に無地番地(道路、水路)が存在する場合、その付け替えや帰属についても検討が必要になります。
③ 各種事業用地に関する許認可
建設業許可、倉庫業登録、産業廃棄物処理施設の設置許可など、事業用地の所在を証明する必要がある許認可申請で公図が求められます。
④ 会社設立時の事務所証明
株式会社や合同会社の設立登記を行う際、定款に記載する事務所の所在地を証明するため、公図や建物図面が必要になることがあります(特に自己所有の建物の場合)。
7.よくある質問(FAQ)
Q1. 公図と住所(住居表示)は違うのですか?
はい、異なります。
住所は「○○市○○町1丁目2番3号」のように表示される住居表示ですが、公図に記載されるのは「地番」です。
地番は「○○市○○町1丁目12番3」のように表記され、住所とは一致しないことが多いです。
公図を取得する際は地番が必要ですので、登記済権利証や固定資産税納税通知書で確認するか、法務局のブルーマップで調べる必要があります。
➡ 地番と住居表示については「こちらの記事もおすすめ」
Q2. 公図だけで境界は確定できますか?
いいえ、公図だけでは正確な境界は確定できません。
前述のとおり、公図は明治時代に作成されたものが多く、距離や角度などの定量的な情報の正確性には限界があります。
境界を確定するには、地積測量図、現地の境界標、隣接地所有者との立会い確認など、複数の資料と手続きが必要です。
境界に関するトラブルがある場合は、土地家屋調査士にご相談ください。
Q3. 公図に記載されている面積と実際の面積が違う場合は?
公図には通常、面積は記載されていません。
土地の面積(地積)は登記事項証明書に記載されています。
ただし、登記簿上の地積と実測面積が異なることはよくあります。
土地の売買などで正確な面積が必要な場合は、測量士または土地家屋調査士に現況測量を依頼してください。
Q4. 相続した土地の公図を取得したいのですが、相続人でないと取得できませんか?
いいえ、公図は誰でも取得できます。
相続人であることを証明する書類は必要ありません。
地番さえわかれば、第三者でも法務局で公図を取得できます。
ただし、相続登記(所有権移転登記)を行う場合は、別途手続きが必要です。
Q5. 公図の有効期限はありますか?
公図そのものに有効期限はありませんが、許認可申請などで添付書類として使用する場合、「3か月以内に取得したもの」という制限がある場合が多いです。
申請先の自治体や機関によって要件が異なりますので、事前に確認しましょう。
Q6. 古い公図と新しい公図はどう違うのですか?
法務局には、現在使用されている公図のほかに、「旧公図」「旧旧公図」と呼ばれる古い図面も保管されています。
これらは、土地の歴史や境界の変遷を調査する際に重要な資料となります。
境界紛争などで過去の状況を確認したい場合は、土地家屋調査士に依頼して古い公図の調査を行うことができます。
Q7. オンラインで取得した公図は正式な書類として使えますか?
登記情報提供サービスで取得した公図は、公印がないため法的な証明書としては使えません。
あくまで「閲覧用」です。
金融機関への提出や正式な許認可申請には、法務局の窓口で取得した証明書、または登記・供託オンライン申請システムで申請した証明書が必要です。
Q8. 公図に記載されていない土地があるのですが?
稀に、公図に記載されていない土地(いわゆる「公図外」の土地)が存在することがあります。
これは、何らかの理由で登記記録から漏れている土地です。
このような土地を発見した場合は、土地家屋調査士に相談し、表題登記などの手続きが必要になります。
8.まとめ:公図の取得・活用でお困りの方は専門家へ
公図は、土地の位置関係や隣接情報を知るための重要な資料ですが、その成り立ちや特性を理解して活用することが大切です。
この記事のポイント
• 公図には「14条地図」と「地図に準ずる図面」の2種類がある
• 法務局またはオンラインで誰でも取得できる
• 明治時代に作成された公図は、現地と完全には一致しないことがある
• 農地転用や各種許認可申請で公図が必要になる
• 行政書士は公図の取得代行や許認可申請での活用をサポートできる
• 測量や登記は土地家屋調査士・司法書士の業務
土地に関する許認可申請や相続手続きで公図が必要になったとき、「どの公図を取得すればいいのか」「どのように活用すればいいのか」と迷うことがあるかもしれません。
また、公図を見て現地との違いに気づき、不安を感じることもあるでしょう。
• 農地を宅地や駐車場に転用したいが、手続きがわからない
• 許認可申請に公図が必要と言われたが、取得方法がわからない
• 公図を取得したが、現地と形状が違うように見えて不安
• 公図に無地番地が含まれていて、どう対処すればいいかわからない
• 複数の土地に関する公図や書類をまとめて準備する時間がない
このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ専門家(行政書士、土地家屋調査士など)にご相談ください。
行政書士は、お客様の状況に応じた最適な解決策をご提案し、公図の取得から申請書類の作成までサポートいたします。
出典・参考資料
• 法務省 法務局:「登記事項証明書(土地・建物)、地図・図面」
• 登記ネット:「登記事項証明書/地図・図面証明書の交付請求」
• 総務省:「行政書士制度」
• 日本行政書士会連合会:「行政書士の業務」
• 農林水産省:「農地転用許可制度について」
• 国土交通省:「地籍調査Webサイト」
• 東京地裁昭和49年6月24日判決、福岡高裁平成14年6月27日判決(公図の証拠価値に関する判例)
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