〈 この記事は、こんな方に向けて書いています 〉
「外国人を採用したいが、どの在留資格なら宿泊施設で働けるのか分からない。」
「フロントだけでなく、客室清掃やレストラン業務もお願いしたい。」
「スキーシーズンだけ人手が足りず、外国人採用を検討し始めた。」
こうしたご相談を、ホテルや旅館を営む事業者様から数多くいただいています。
とりわけ新潟県南魚沼市や湯沢町は、冬はスキー・スノーボード、雪解け後は登山や温泉旅行と、年間を通じて宿泊需要が絶えない地域です。
その一方で人手不足は年々深刻さを増しており、外国人材の採用に踏み切る宿泊施設が着実に増えています。
宿泊業の人手不足は今に始まった話ではありませんが、観光需要の回復以降、状況はより一段と厳しくなっています。
厚生労働省が毎年公表している「外国人雇用状況」の届出結果を見ても、日本国内で働く外国人労働者数は届出が義務化された平成19年以降、過去最多を更新し続けており、宿泊業や飲食サービス業は外国人を雇用する事業所の割合が高い業種のひとつに数えられます。
フロント対応、客室清掃、レストランサービス、予約管理など、外国人スタッフが活躍する場面はすでに珍しいものではなくなりました。
➡ 参考:厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況について(報道発表)」
ただし、外国人であれば誰でも宿泊業で働けるわけではありません。
外国人が日本で働くには、原則として就労が認められた在留資格が必要であり、担当させたい業務と在留資格の内容が食い違っていると、事業者にも本人にも不利益が及びます。
本記事は、2026年7月時点の制度にもとづき、宿泊業の外国人採用で押さえておくべきポイントを行政書士の視点から整理したものです。
なお、本文で紹介する公的機関の資料は、出入国在留管理庁「在留資格から探す」をはじめとする公式サイトです。
1. 南魚沼市・湯沢町エリアで想定される相談例
南魚沼市・湯沢町エリアでは、各地域や各業態により類似したパターンの悩みが存在します。
以下、代表的な4つの想定例をご紹介します。
♦ 想定例 ① : 卒業予定の留学生をそのまま正社員にしたい
専門学校を卒業する留学生を、そのままホテルの正社員として迎えたいという相談です。
在留資格が「留学」のままでは就職できず、就労可能な在留資格への変更が必要になります。
しかも、学歴と担当業務のつながりが審査で見られるため、希望の職種によっては通らないケースもあるので注意が要ります。
➡ 在留資格の変更については「こちらの記事もおすすめ」
♦ 想定例 ② : 客室清掃だけを任せたい
旅館の客室清掃は慢性的に人手が足りません。
しかし「技術・人文知識・国際業務」では、清掃のみを主たる業務とすることは想定されていないのです。
一方で特定技能(宿泊分野)であれば、一定の条件下で清掃業務に従事させることができます。
どちらの在留資格が使えるかは、実際の業務配分次第で変わってきます。
➡ 技術・人文知識・国際業務については「こちらの記事もおすすめ」
➡ 特定技能については「こちらの記事もおすすめ」
♦ 想定例 ③ : 多言語対応ができるフロントスタッフが欲しい
湯沢町は冬季に海外からのスキー客が多く訪れるため、英語や中国語を話せるスタッフへの需要は高いです。
フロント業務は在留資格によって就労可能な場合がありますが、雇用形態や業務の中身次第で判断が分かれるため、個別の確認が欠かせません。
♦ 想定例 ④ : 繁忙期だけ外国人を増員したい
12月から3月のスキーシーズンに限って働いてもらいたい、という声も珍しくありません。
永住者や日本人の配偶者等など、就労に制限のない在留資格であれば職種を問わず働けますが、そうでない場合は在留資格の内容次第です。
期間限定の雇用であっても、在留資格の確認は必ず必要になります。
2. 「ビザ」と「在留資格」の違い、まず整理しておきましょう
日常会話では「ビザ」という言葉が広く使われますが、法律上、査証(ビザ)と在留資格は別のものです。
査証は日本へ入国する際の推薦文書のような役割にすぎず、日本国内でどんな活動ができるかを定めているのは在留資格のほうです。
採用時に確認すべきは在留カードに記載された在留資格であり、この点を混同したまま採用を進めると後々のトラブルにつながります。
➡ 参考:出入国在留管理庁「在留カードとは?」
➡ 在留資格と査証(ビザ)の違いについては「こちらの記事もおすすめ」
宿泊業に関係する主な在留資格を整理すると、次のようになります。
| 在留資格 | 就労の可否 | 主な対象業務の例 |
| 技術・人文知識・国際業務 | 〇 | フロント、予約管理、通訳、インバウンド企画、海外営業など |
| 特定技能(宿泊分野) | 〇 | フロント、企画・広報、接客、レストランサービスが中心。付随的に清掃等も可 |
| 永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者 | 〇 | 制限なし |
| 留学(資格外活動許可あり) | △ | アルバイトのみ、週28時間以内 |
| 家族滞在(資格外活動許可あり) | △ | アルバイトのみ、週28時間以内 |
「技術・人文知識・国際業務」と「特定技能(宿泊)」は混同されやすいのですが、対象業務がかなり異なります。
前者は専門知識を要する仕事、たとえばフロント業務や海外営業、インバウンド企画などが中心で、客室清掃を主たる業務とすることは基本的に想定されていません。
後者は宿泊サービス全般に従事でき、フロント・企画広報・接客・レストランサービスを主とし、清掃やベッドメイクは付随的な範囲でなら可能という整理です。
なお特定技能2号は令和5年8月31日から宿泊分野にも追加され、熟練した技能を持つ人材の受け入れが可能になりました。
➡ 参考:観光庁「宿泊分野における外国人材受入れ(在留資格「特定技能」)」
加えて、特定技能で初めて外国人を受け入れる事業者は、令和6年6月15日以降、在留申請の前に「宿泊分野特定技能協議会」への加入手続きを済ませておく必要がある点も見落とされがちです。
3. 採用から就労開始までの手続きの流れ
海外から呼び寄せる場合と、国内で在留資格を切り替える場合とで多少手順は異なりますが、大まかな流れは次のとおりです。
① 採用計画を立てる
担当してもらう業務、必要な日本語レベル、雇用形態、勤務地を整理し、この段階でおおよその在留資格の見当をつけます。
ここを曖昧にしたまま採用活動を始めると、後から業務内容と在留資格が噛み合わないという事態が起きやすくなります。
特に、フロントと清掃を兼任させたいなど複数業務にまたがる場合は、どちらの業務を主とするかを先に決めておくと、後工程がスムーズになります。
② 在留資格を確認する
すでに日本にいる外国人であれば、在留カードで在留資格・在留期間・就労制限の有無を確認します。
カードの真偽や失効の有無は、出入国在留管理庁「在留カード等番号失効情報照会」で照会可能です。
海外に在住している人材を新たに呼び寄せる場合は、この段階でパスポートの有効期限や学歴・職歴の裏付け資料が揃っているかもあわせて確認しておきます。
③ 雇用契約を締結する
労働条件を明示し、契約を結びます。
外国人であっても労働基準法など労働関係法令は日本人と同様に適用されるため、待遇面での差をつけることは認められません。
特定技能(宿泊)の場合は、報酬額が日本人従業員と同等以上であることが審査上の要件にもなっているため、給与テーブルの整合性も確認しておくと安心です。
④ 必要な在留資格申請を行う
ケースに応じて、
⑴ 在留資格認定証明書交付申請(海外から呼び寄せる場合)
⑵ 在留資格変更許可申請(国内で在留資格を切り替える場合)
⑶ 在留期間更新許可申請(在留期間を延ばす場合)
以上のいずれかを行います。
申請先は地方出入国在留管理局です。
➡ 参考:出入国在留管理庁「手続の種類から探す」
特定技能(宿泊分野)で初めて外国人を受け入れる場合は、申請に先立って宿泊分野特定技能協議会への加入手続きも済ませておく必要があります。
➡ ⑴ 在留資格認定証明書交付申請については「こちらの記事もおすすめ」
➡ ⑵ 在留資格変更許可申請については「こちらの記事もおすすめ」
➡ ⑶ 在留期間更新許可申請については「こちらの記事もおすすめ」
⑤ 許可を受けてから就労を開始する
許可前に就労を始められるかどうかは、現在の在留資格や申請内容によって異なります。
判断に迷う場合は、地方出入国在留管理局か行政書士に確認したうえで動くことをおすすめします。
審査には一定の期間を要するため、繁忙期に間に合わせたい場合ほど早めの着手が結果的に近道になります。
雇入れ・離職の際には、出入国在留管理庁への在留資格手続きとは別に、厚生労働省への「外国人雇用状況の届出」も必要です。
これは事業主全員に課された義務であり、怠ると罰則の対象になり得ます。
➡ 参考:厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」
4. 申請にあたって準備する主な書類
どの在留資格で、どのルートから申請するかによって必要書類は変わります。
「これだけ揃えれば良い」という共通のセットは存在しませんが、多くの申請で求められがちな資料を紹介します。
〈 企業側が準備することが多い書類 〉
雇用契約書または労働条件通知書、会社案内・パンフレット、登記事項証明書、決算書類(カテゴリーにより提出の要否が異なる)、給与支払に関する資料、業務内容を説明する資料などです。
提出書類は申請区分や企業のカテゴリーで細かく変わるため、最新の一覧を出入国在留管理庁「手続の種類から探す」で確認するのが確実です。
〈 外国人本人が準備することが多い書類 〉
パスポート、在留カード(すでに在留している場合)、顔写真、履歴書、卒業証明書、成績証明書、職歴を証明する資料などです。
技人国では、担当業務と学歴・職歴の関連性が審査上のポイントになりやすい傾向があります。
〈 特定技能(宿泊)で追加的に必要になりやすい資料 〉
宿泊業技能測定試験の合格証明、日本語能力試験等の合格証明、支援計画(登録支援機関へ委託する場合を含む)などです。
技能実習2号を宿泊職種で良好に修了した人は技能試験が免除される仕組みもありますが、制度の運用は変更されることがあるため、申請前には必ず観光庁・出入国在留管理庁の最新情報を確認してください。
5. 実務でよく見かける失敗例
宿泊業の採用では、次のような失敗が繰り返し起こりがちです。
地域の相談を踏まえた想定例としてご紹介します。
♦ 失敗例 ① : 「ホテル勤務なら何でも同じ」という思い込み
客室清掃、ベッドメイク、レストラン配膳、フロント業務を区別せず配置してしまうケースです。
どの業務が主になるかによって在留資格との適合性が問われるため、配置は慎重に決める必要があります。
♦ 失敗例 ② : 在留カードを確認しないまま面接を進めていた
日本語能力や接客経験だけを重視し、在留カードの確認を後回しにした結果、就労できない在留資格だった、在留期間がまもなく切れる、資格外活動許可が必要だったといった事実が採用直前に判明することがあります。
♦ 失敗例 ③ : 書類作成を急ぎすぎて追加提出を求められた
「来月には働いてほしい」という要望に応えようとして、必要書類が不十分なまま申請してしまうパターンです。
追加資料の提出が求められれば、想定していた就労開始日に間に合わなくなります。
南魚沼市や湯沢町ではスキーシーズン前に採用が集中しやすいため、余裕を持ったスケジュールで準備することが肝心です。
♦ 失敗例 ④ : 卒業予定の留学生をそのまま働かせてしまった
留学生は卒業しただけでは就労できません。
原則として就労可能な在留資格への変更許可を受けてから働き始める必要があり、卒業と採用のタイミングが重なる場合は早めの着手が求められます。
6. よくある質問
Q1. 外国人なら誰でもホテルや旅館で働けますか?
A. いいえ。
就労が認められる在留資格を持ち、かつ担当業務がその在留資格の範囲内に収まっていることが前提です。
Q2. 客室清掃だけを担当してもらうことはできますか?
A. 在留資格によります。
技人国では清掃のみを主業務とすることは想定されておらず、特定技能(宿泊)であれば制度上認められる範囲内で従事できる場合があります。
Q2. アルバイトとして雇う場合も在留資格の確認は必要ですか?
A. 必要です。
留学や家族滞在の在留資格であれば資格外活動許可により一定範囲でアルバイトが認められますが、許可のない状態や許可範囲を超えた就労は認められません。
Q3. 「特定技能」で採用すれば、業務内容を自由に決められますか?
A. いいえ。
宿泊分野の特定技能はフロント・企画広報・接客・レストランサービスが主たる業務であり、清掃等はあくまで付随的な位置づけです。
清掃業務が中心になる場合は別の在留資格や分野の検討が必要になることがあります。
Q4. 在留カードだけで、就労可能な業務の範囲まで分かりますか?
A. 在留カードには在留資格と就労制限の有無は記載されますが、具体的にどこまでの業務が認められるかまでは記載されません。
細かい業務範囲を公的に確認したい場合は、出入国在留管理局で「就労資格証明書」の交付を申請するという方法もあります。
➡ 就労資格証明書交付申請については「こちらの記事もおすすめ」
7. 今後の課題ー人手不足はまだ続く見通し
観光需要が回復基調にあるなかで、宿泊業の人材確保は今後も重要な経営課題であり続けると見られています。
温泉旅館、ホテル、スキー場に併設された宿泊施設では、特に繁忙期の人員確保が難しく、外国人材の活用は選択肢のひとつというより、事業継続のための現実的な手段になりつつあります。
南魚沼市や湯沢町のように冬季にインバウンド需要が集中する地域では、多言語対応が可能な人材への需要が今後も続くと考えられます。
一方で、外国人雇用に関する制度は社会情勢や法改正に合わせて見直されることがあります。
「数年前はこのやり方で採用できた」という情報だけを頼りに進めると、現在の運用とずれが生じることがあるため、採用を検討するタイミングごとに最新の公的情報を確認する姿勢が欠かせません。
8. 行政書士としての立場 ー 「できること」・「できないこと」
外国人採用の相談では、「申請書だけ作ってほしい」というご依頼をいただくこともあります。
ですが、行政書士として大切にしているのは、単に書類を仕上げることではなく、制度全体を踏まえたうえで適法な雇用を組み立てることです。
行政書士ができるのは、在留資格に関する一般的な相談対応、在留資格認定証明書交付申請・変更許可申請・更新許可申請の書類作成、そして申請取次行政書士による手続きの取次(地方出入国在留管理局長の承認を受けた行政書士に限る)などです。
➡ 申請取次行政書士については「こちらの記事もおすすめ」
一方で、審査結果を保証すること、「必ず許可されます」と断言すること、虚偽の内容で申請することはできません。
審査を行うのはあくまで地方出入国在留管理局であり、行政書士の役割は、制度に沿って適切な申請を組み立てることに尽きます。
また、「フロント業務をお願いしたい」という説明だけでは実務上情報が足りないことが多く、接客が中心なのか、予約管理も含むのか、清掃との割合はどれくらいかまで具体的に確認したうえで、初めて適切な在留資格の見当がつけられます。
採用が決まってからではなく、採用を検討し始めた段階でご相談いただくほうが、結果的にスケジュールにも余裕が生まれます。
9. まとめ ー 南魚沼市・湯沢町で外国人採用をお考えの宿泊事業者様へ
宿泊業で外国人を採用する際に大切なのは、「外国人を採用すること」自体ではなく、担当してもらう仕事内容に見合った在留資格で、適法に雇用することです。
在留資格と業務内容が一致しているか、在留カードを確認したか、必要書類は揃っているか、採用スケジュールに無理がないか。
この4点を採用前に整理できているかどうかで、その後の進みやすさが大きく変わってきます。
南魚沼市や湯沢町のように、観光需要が高く季節による繁閑差の大きい地域では、繁忙期の直前になって慌てるのではなく、早い段階から採用計画を立てておくことをおすすめします。
当事務所は、南魚沼市・湯沢町をはじめ魚沼地域の宿泊事業者様から、外国人採用や在留資格に関するご相談を承っております。
「この業務はどの在留資格で採用できるのか」「今の在留資格のまま働かせて問題ないのか」など、些細なことでも構いません。
採用を決定する前の段階でお気軽にお問い合わせください。
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出典・参考
• 出入国在留管理庁「在留資格から探す」
• 出入国在留管理庁「在留手続」
• 出入国在留管理庁「手続の種類から探す」
• 出入国在留管理庁「在留カードとは?」
• 出入国在留管理庁「在留カード等番号失効情報照会」
• 厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況について(報道発表)」
• 厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」
• 観光庁「宿泊分野における外国人材受入れ(在留資格「特定技能」)」
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