はじめに —「名称変更」ではなく「制度の根本的な転換」
農業や食品加工、建設業が盛んな新潟県南魚沼市・湯沢町・十日町市周辺では、外国人労働者は企業活動を支える重要な存在です。
しかし今、その外国人雇用の仕組みが、歴史的な大転換点を迎えています。
30年以上続いた「技能実習制度」は廃止が決定し、2027年(令和9年)4月1日より、新たに「育成就労制度」が施行されることが正式に閣議決定されました。
これは単なる名称の変更ではなく、制度の目的・仕組み・ルールがすべて刷新される、まったく新しい制度の創設です。
しかも、監理支援機関(現行の監理団体に相当)の事前の許可申請は2026年4月15日から、育成就労計画の認定申請は2026年9月1日から始まります。
➡ 参考:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」
制度施行まで1年あまりの今こそ、正確な情報をもとに準備を進める必要があります。
本記事では、行政書士の視点から、育成就労制度の制度の中身・手続きの流れ・南魚沼地域の企業が特に意識すべき点・行政書士にできることとできないことを、わかりやすく徹底解説します。
1. 技能実習制度との違い —「国際貢献」から「人材育成・確保」へ
〈 なぜ制度が変わるのか? 〉
技能実習制度は1993年にスタートし、「開発途上国への技能移転」という国際貢献を名目に運営されてきました。
しかし実態は、慢性的な人手不足を補う「労働力確保の手段」として機能していたことは否定できません。
転職が原則禁止されていたため、劣悪な環境でも泣き寝入りを強いられる外国人が後を絶たず、人権上の問題として国際社会から批判を受け続けてきました。
こうした問題を解消し、外国人が安心してキャリアアップできる仕組みを整えるため、2024年6月21日に改正法が公布されました。
〈 育成就労制度の3大ポイント 〉
① 目的が「人材育成・確保」に転換
技能実習の「国際貢献」という建前を廃し、「日本の人手不足分野における人材の育成・確保」を正面から掲げました。
原則3年間の就労を通じて、特定技能1号レベルの技能を習得させることを目標とします。
➡ 参考:出入国在留管理庁「育成就労制度の制度概要・関係法令」
② 転籍(転職)が一定条件のもとで認められる
技能実習制度で原則禁止されていた転籍(自己都合による転職)が、育成就労では一定の条件を満たせば認められます。
これが制度改正の最大の変更点です。
| 転籍の要件 | 内容 |
| 制限期間 | 同一機関での就労が1年以上(分野によっては2年以内の範囲で設定)経過していること |
| 技能要件 | 技能検定試験(基礎級等)に合格していること |
| 日本語要件 | 日本語能力A1相当以上の試験(JLPT N5等)に合格していること |
| 転籍先の適正 | 転籍先が適切な基準を満たしていること |
| 業務区分 | 同一業務区分内での転籍に限る |
➡ 参考:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」
③ 特定技能制度へのスムーズな移行が可能
育成就労で3年間就労した外国人は、試験(技能試験・日本語試験)に合格することで特定技能1号へ移行できます。
さらに特定技能2号まで進めば、在留期間の更新に上限がなくなり、将来的には永住への道も開かれます。
これにより、外国人が日本で長期的なキャリアを築ける「一気通貫の制度」が実現します。
➡ 参考:JITCO「育成就労制度とは」
【 施行スケジュール(2026年3月現在) 】
• 2024年6月21日 : 改正法公布(出入国管理及び難民認定法等の一部改正法)
• 2026年1月23日 : 分野別運用方針を閣議決定
• 2026年2月20日 : 育成就労制度運用要領を公表
• 2026年4月15日〜 : 監理支援機関の許可に係る施行日前申請の受付開始
• 2026年9月1日〜 : 育成就労計画の認定に係る施行日前申請の受付開始
• 2027年4月1日 : 育成就労制度 正式施行
➡ 参考:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」
2. 受入れ企業が押さえるべき手続きの流れ
2027年4月の制度施行に向け、実際に育成就労外国人を受け入れるためには、以下のステップを踏む必要があります。現時点で判明している情報をもとに整理しましたが、一部の詳細については今後の省令・通達で明らかになる部分もあります。
【 STEP 1 】 受入れ分野・業務区分の確認
育成就労の受入れ分野は、特定技能制度の対象である「特定産業分野」に限定されます。
農業、食品製造・加工、建設、製造業など、南魚沼・湯沢・十日町エリアに多い産業分野は対象となっています。
自社の業務内容が対象業務区分に含まれるか、まず確認が必要です。
なお、季節性のある農業・漁業については、派遣形態での受入れも認められる予定です。
➡ 参考:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」Q14、19など
【 STEP 2 】 監理支援機関の選定・確認
現行の監理団体は、新制度では「監理支援機関」として改めて許可を取得し直す必要があります。
現在取引している監理団体が、育成就労の監理支援機関として許可申請を予定しているかどうかを早急に確認してください。
⚠️ 監理支援機関になるための主な新要件(厳格化)
• 外部監査人の設置が義務化(弁護士・社労士・行政書士など)
• 事業所ごとに常勤役職員2名以上の配置が必要
• 職員1人あたりの担当受入れ機関数:8者未満 / 育成就労外国人:40人未満
• 外部監査人は3か月に1回以上の事業所訪問が必要
• 受入れ機関と密接な関係を持つ者は監理に関与不可(中立性確保)
➡ 参考:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」Q27〜Q30
【 STEP 3 】 育成就労計画の作成・認定申請
受入れ企業(育成就労実施者)は、外国人一人ひとりに合わせた「育成就労計画」を作成し、外国人技能実習機構(OTIT)に認定申請を行う必要があります。
計画には、習得させる技能の内容・評価方法・日本語教育の支援体制などを記載します。
認定申請の受付は2026年9月1日から開始予定です。
➡ 参考:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」Q10
【 STEP 4 】 在留資格(ビザ)の申請
認定された育成就労計画に基づき、外国人の在留資格認定証明書(COE)を地方出入国在留管理局へ申請します。
この申請取次は、法務大臣に届け出た「申請取次行政書士」が行います。
➡ 申請取次行政書士については「こちらの記事もおすすめ」
【 STEP 5 】 入国後の育成・支援
入国後は育成就労計画に沿って、技能習得の支援を行います。
就労開始から1年以内に技能検定試験(基礎級等)を受験させること、および日本語能力の向上支援(A1相当からA2相当へ)が義務づけられる見通しです。
日本語教育にかかる費用の負担や、学習時間の確保など、受入れ機関側のサポートが求められます。
3. 南魚沼・湯沢・十日町の企業が「今すぐ」意識すべき外国人雇用の透明化
〈 「選ばれる企業」にならなければ外国人は来ない時代へ 〉
転籍の自由化は、企業側にとって見方を変えれば大きなリスクです。
「育成就労計画の期間が終われば当然うちに残ってくれる」という従来の発想は通用しません。
条件のよい企業へ外国人が移っていく「人材の流動化」が現実のものとなります。
南魚沼市・湯沢町・十日町市周辺は冬場の積雪が多く、農繁期・農閑期の業務量の差が大きいエリアです。
季節による繁閑の差や、除雪作業など特有の労働環境を、外国人にも理解してもらい「それでもここで働き続けたい」と思わせる職場づくりが、制度移行後の雇用確保の鍵となります。
〈 企業が今から取り組むべき「雇用の透明化」3つのポイント 〉
① 賃金体系・昇給基準の明確化
最低賃金の遵守はもちろん、昇給の基準を明文化することが重要です。
たとえば「技能検定試験合格で月額〇千円アップ」「日本語能力N4取得で手当支給」など、目に見える形で示すことで、外国人が将来像を描きやすくなります。
新制度では転籍が可能になるため、賃金水準が相場より低い企業は人材流出リスクが高まります。
新潟県の最低賃金などを踏まえながら、定期的な見直しを行ってください。
② 育成計画・業務マニュアルの多言語化
「見て覚えろ」式の指導は、育成就労制度のもとでは通用しません。
育成就労計画には、どのステップでどの技能を習得させるかを具体的に記載する必要があります。
あわせて、業務マニュアルの多言語化(英語・ベトナム語・インドネシア語など)を進めることで、コミュニケーションの齟齬を減らし、早期離職を防ぐことができます。
③ 地域コミュニティへの参加支援
南魚沼・湯沢・十日町エリアは、地域行事・祭り・消防団活動など地域コミュニティのつながりが強いエリアです。
外国人を「期間限定の労働力」としてではなく、「地域の一員」として迎え入れる姿勢が、定着率の向上に直結します。
地域住民との交流機会を設けたり、日本語でのコミュニケーションをサポートしたりすることが、結果として転籍防止につながります。
4. 南魚沼周辺で想定される外国人雇用の成功・失敗パターン
▶ 想定例 ① : 建設業A社(南魚沼市)のケース〈成功パターン〉
【 取り組み 】
• 入国前から「3年後に特定技能へ移行した場合の見込み給与」を文書で提示
• 業務マニュアルをベトナム語に翻訳し、OJTの進捗を週次で可視化
• 地域の消防団活動への参加を会社としてサポート・費用も負担
【 結果(想定) 】
• 外国人スタッフが将来像を描け、自発的に日本語学習に取り組むように
• 技能検定試験を就労1年以内にクリアし、特定技能への移行をスムーズに準備
• 育成就労移行後も転籍を選ばず継続雇用される可能性が高い
※本事例は実際の相談をもとに作成した想定例です。個別の状況により結果は異なります。
▶ 想定例 ② : 食品加工業B社(十日町市)のケース〈失敗リスクパターン〉
【 懸念される状況 】
• 技能実習生を「期間満了まで辞めない安価な労働力」とみなし、日本語教育・住居環境の改善を後回し
• 賃金は最低賃金ぎりぎりで、昇給の基準が不明確
• 外国人の悩みや不満を聞く機会・担当者がいない
【 リスク(想定) 】
• 育成就労制度が施行されると、転籍可能な時期に好条件の近隣企業へ移動される可能性が高い
• 採用コスト(渡航費・研修費等)を回収できないまま人材を失うことに
※本事例は実際の相談をもとに作成した想定例です。
5. 行政書士に「できること」と「できないこと」
新制度への対応にあたり、複雑な書類作成や法令確認をプロに任せることで、手続きの漏れや誤りを防ぐことができます。
ただし、行政書士には役割の範囲(業法上の制限)があります。
正確に理解しておきましょう。
| 業務の種類 | ✔ 行政書士ができること | ✖ 行政書士ができないこと |
| 書類作成・申請 | 育成就労計画の作成支援・在留資格認定証明書の申請取次(※) | 虚偽書類の作成・不法就労の助長 |
| 制度対応コンサルティング | 就業規則の整備支援・制度改正に伴う対応アドバイス | 労働争議の代理交渉(弁護士業務) |
| 日本語教育サポート | 日本語教育機関の情報提供・育成計画への組み込み支援 | 教育そのもの(専門機関との連携が必要) |
| 監理支援機関選定支援 | 適切な監理支援機関の情報提供・書類作成サポート | 職業紹介(厚生労働大臣の許可が必要な業務) |
【 ※ 申請取次行政書士とは 】
在留資格(ビザ)の申請を本人や受入機関に代わって出入国在留管理局へ提出するのは、出入国在留管理庁に届け出た「申請取次行政書士」が行います。
届出のない行政書士が申請取次を行うことは法令違反となります。
➡ 申請取次行政書士については「こちらの記事もおすすめ」
6. よくある質問(Q&A)
Q1. 今いる技能実習生は、制度施行後どうなりますか?
A. 2027年4月1日(施行日)の3か月前(2027年1月1日頃)までに在留資格認定証明書を取得している技能実習生は、従来の技能実習生として入国可能です。
すでに在留中の技能実習生については、最長で技能実習2号修了まで現行制度のまま継続できる経過措置が設けられています。
なお、技能実習制度に基づく監理団体の新規許可申請は2026年9月30日までに行う必要があります。
➡ 参考:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」Q39
➡ 参考:「外国人技能実習機構」
Q2. 転籍されたら、採用にかかった費用は戻りますか?
A. 「育成就労制度では、転籍先の企業が転籍元の企業に対して一定の費用(取次ぎ・育成に係る費用として告示で定める額を就労期間で按分した金額)を支払う仕組みが法律・省令で定められています。
ただし、具体的な金額を定める告示は2026年3月現在まだ制定されていません。
転籍が発生してからでは手遅れなので、「転籍されない職場環境づくり」が最優先です。
➡ 参考:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」Q47
Q3. 日本語教育は企業が全額負担しなければなりませんか?
A. 育成就労計画には日本語能力の向上が含まれ、受入れ機関(企業)が日本語学習を支援することが求められます。
費用負担や学習時間の確保など、具体的な義務の範囲については、今後の分野別運用方針や省令で明確化される予定です。
現時点では「企業側が積極的に支援する義務がある」ことが制度の方針として示されています。
➡ 参考:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」Q57
Q4. 家族の帯同は認められますか?
A. 育成就労(在留期間3年間)中の家族帯同は、原則として認められていません。
特定技能2号に移行して初めて、家族帯同が可能となります。
➡ 参考:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」Q51
Q5. 農業・食品加工業での育成就労は派遣形態でも可能ですか?
A. 農業や漁業については、季節性のある業務の実情に応じて、派遣形態での受入れが認められる予定です。
南魚沼・湯沢・十日町周辺の農業関係者にとっては、農繁期への対応という観点からも注目すべきポイントです。
詳細は分野別運用方針をご確認ください。
➡ 参考:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」Q14、19など
7. 地方企業が抱える課題と、今から始められる解決策
課題 ① 手続きの複雑化とコスト増加
監理支援機関への手数料・外部監査コスト・日本語教育費など、企業の負担は増える方向にあります。
「場当たり的な短期採用」ではなく、5〜10年単位で人材を育てる「長期採用計画」を立てることで、一人あたりのコストを分散させることが重要です。
【 今すぐできること 】
信頼できる行政書士・監理支援機関と早めにパートナーシップを構築し、制度移行に伴うコストの試算と計画を立てる。
課題 ② コミュニケーション不足による離職・転籍
転籍の最大の原因は「人間関係・コミュニケーションの問題」とされています。
外国人が不満を抱えていても、言葉の壁があって相談できない状況が続くと、ある日突然転籍という事態につながります。
【 今すぐできること 】
翻訳ツール・多言語対応アプリの導入、日本人社員向けの「やさしい日本語」研修など、受け入れ側の社内教育を今から始める。
南魚沼・湯沢・十日町周辺の国際交流協会や、ハローワークなどの公的機関も相談先として活用してみてください。
課題③ 情報収集・最新情報のキャッチアップ
育成就労制度はまだ施行前であり、省令・分野別運用方針など詳細ルールが今後も順次公表されます。
誤った情報に基づいて準備を進めると、やり直しが発生します。
【 今すぐできること 】
出入国在留管理庁・外国人技能実習機構(OTIT)・JITCOなどの公式サイトをブックマークし、定期的に確認する習慣をつける。
または、最新情報を把握している行政書士に定期的に相談する。
8. まとめ —「制度が始まってから」では遅い
育成就労制度への転換は、地方の中小企業にとって脅威でもあり、大きなチャンスでもあります。
制度をきちんと活用し、外国人から「選ばれる企業」になることができれば、人手不足の課題を長期的に解決できます。一方、準備が遅れた企業は、育成した人材を他社に奪われるリスクを抱えることになります。
今から始めるべき「6つの準備」チェックリスト
• 自社の業務区分が育成就労の対象分野かどうかを確認した
• 現在の監理団体が「監理支援機関」許可申請を予定しているか確認した
• 賃金体系・昇給基準を文書化し、外国人にも説明できる状態にした
• 業務マニュアルの多言語化に着手した
• 日本語学習支援の体制(費用・時間の確保)を検討した
• 信頼できる行政書士・専門家と相談する機会を設けた
南魚沼・湯沢・十日町周辺の企業様、ぜひ一度行政書士などの専門家にご相談ください
「育成就労計画の作り方がわからない」
「転籍リスクを抑えるための就業規則を見直したい」
「在留資格申請を任せたい」
「どの監理支援機関を選べばよいかわからない」
こうしたお悩みを抱える経営者・人事担当者様のご相談に、行政書士は丁寧にお応えしています。
また、入管に届け出た正規の「申請取次行政書士」であれば、在留資格申請の取次から、育成就労計画の作成支援、就業規則の整備まで、ワンストップでサポート可能です。
御社の外国人雇用を「不安」から「安心」へ。
まずは、お近くの行政書士などの専門家まで、お気軽にお問い合わせください。
出典・参考
• 出入国在留管理庁「育成就労制度」
• 出入国在留管理庁「育成就労制度の制度概要・関係法令」
• 出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」
• 厚生労働省「育成就労制度の概要(資料)」 PDF
• 公益財団法人 国際人材協力機構(JITCO)「育成就労制度」
• 外国人技能実習機構(OTIT)
• e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」
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