〈 はじめに : この記事はこんな方に向けて書きました 〉
「隣の空き家の屋根から雪が一気に落ちてきて、カーポートがつぶれた」
「庭木の枝が敷地に越境して、毎年困っている」
「市役所に相談したら『個人間で解決してください』と言われた」
南魚沼市・湯沢町・十日町市などの豪雪地帯では、こうした相談が年々増えています。
この記事は、次のような悩みを抱えている方のために書きました。
• 隣の空き家が放置されていて、実害(落雪・倒壊の危険・害虫・悪臭・枝の越境)が出ている
• 所有者が誰なのかわからず、連絡のとりようがない
• 市役所に頼ろうとしたが「民事の問題」と言われ、次の一手が見えない
• 自分で動こうとしても、法律的に何ができて何ができないかが不安
空き家問題は「放置しているだけで解決しない」問題です。
しかし、正しい手順と専門家のサポートがあれば、確実に動かすことができます。
順を追って説明していきます。
1. 南魚沼・湯沢・十日町で多い相談——雪国ならではのリスクとは
都市部の空き家問題と、豪雪地帯の空き家問題は、深刻さの種類が違います。
放置された空き家は見た目の問題だけでなく、近隣の生命・財産に直結する危険をはらんでいます。
〈 雪国特有の深刻なトラブル事例 〉
【 落雪・倒壊の危険 】
除雪が行われない空き家に雪が積もり続けると、屋根や外壁が変形・倒壊します。
隣家に向かって傾いたり、溜まった雪が一気に落下してフェンスや車を破壊したりする事故が、冬のたびに繰り返されています。
【 消雪パイプ・排水路の詰まり 】
共同で使用している消雪用の排水路が、空き家からの土砂やゴミで詰まり、冬場に道路が冠水するトラブルも報告されています。
【 害虫・悪臭の発生 】
春から夏にかけて、草木が繁茂した空き家から害虫が発生したり、廃棄物の腐敗臭が周辺に広がるケースもあります。
【 湯沢町のリゾートマンション問題 】
湯沢町に多い古いリゾートマンションでは、室内が長年放置されて「所有者不明」に近い状態になり、管理費の長期滞納や漏水トラブルが発生しているケースが見られます。
マンション全体の管理に影響が出ることもあります。
➡ 空き家問題については「こちらの記事もおすすめ」
【 想定例 】 南魚沼市での落雪被害ケース
Aさんは南魚沼市内の自宅の隣に、数年前から無人になった一軒家がある。
昨冬、その家の持ち主が亡くなったことがわかったが、相続した人物が誰かは不明のまま。
冬になっても除雪が一切行われず、屋根に積み上がった大量の雪がAさんの庭へ落下。
春には外壁の一部が剥がれてAさん宅の窓ガラスを割った。
市の窓口に相談したところ「まず所有者に連絡してみてください」と言われたが、どこに連絡すればいいのか、まったくわからなかった。
この「誰が責任者なのか分からない」という状況こそが、解決を阻む最大の壁です。
※ 上記は相談内容をもとにした想定例です。個人は特定しておりません。
2. 解決への具体的な流れ——行政書士と進める4つのステップ
では、実際にどういう手順で問題を動かしていくのか。
行政書士が関与する場合の標準的な流れをお伝えします。
♦ ステップ 1 : 登記簿・戸籍・住民票で「所有者」を特定する
まず取り組むべきは、「相手が誰かを明らかにすること」です。
法務局で不動産登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、現在の名義人を確認します。
登記はオンラインでも取得可能です。
➡ 参考:法務局:「登記・供託オンライン申請システム」
名義人がすでに亡くなっている場合(空き家では非常によくあるケースです)は、戸籍謄本をたどって相続人を特定する作業が必要になります。
さらに、特定した相続人の現在の住所を住民票や戸籍の附票で確認します。
ここで重要なのが行政書士の「職務上請求」という権限です。
弁護士や司法書士と同様に、行政書士は正当な業務目的がある場合(隣接する空き家に困っている方からのご依頼など)に限り、本人以外の戸籍や住民票を取得することが法律上認められています。
一般の方が「隣の空き家の所有者を調べたい」と役所に行っても、原則として第三者の住民票は取得できません。
行政書士に依頼することで、この壁を正規の手続きで越えることができます。
♦ ステップ 2 : 被害状況を記録し、証拠を残す
所有者が判明したあとの交渉や、万が一の損害賠償請求に備えて、被害の証拠をしっかり残しておくことが重要です。
• 被害箇所の写真・動画(日付入り)を複数撮影する
• 被害が発生した日時と内容を記録に残す
• 市区町村の空き家担当窓口に相談し、行政指導の記録を残してもらう(記録があると、後の交渉で有効に活用できます)
南魚沼市では空き家対策の担当窓口があります(南魚沼市役所都市計画課)。
まずここへ相談し、自治体としての問題認識を共有してもらうことは、解決に向けた重要な一歩となります。
♦ ステップ 3 : 行政書士名での「内容証明郵便」を送付する
所有者(または相続人)の住所が判明したら、次に行うのが内容証明郵便による「適正管理の通知」です。
内容証明郵便とは、「誰が・誰に・いつ・どんな内容を送ったか」を郵便局が証明する書面で、法的な効力を持ちます。
行政書士名と職印の入った書面が届くことで、相手方に「このまま放置すれば法的責任を問われる」という明確なメッセージが伝わります。
書面に盛り込む主な内容は次のとおりです。
• 現状の被害状況の具体的な説明(写真添付も可)
• 管理義務(民法上の不法行為責任など)の根拠
• 速やかな対応(除雪・修繕・伐採など)の要請
• 放置した場合の損害賠償責任への言及
• 回答・対応の期限の設定
「感情的な手紙」ではなく、冷静かつ法的な根拠に基づいた書面であることが肝心です。
書き方一つで、相手の反応が大きく変わります。
♦ ステップ 4 : それでも解決しない場合——制度を活用する
内容証明を送っても所有者が何も対応しない場合は、次の段階として以下の制度を検討します。
〈 「管理不全土地管理命令」の活用 〉
2023年4月施行の改正民法により、所有者が適切に管理を行わず、他の土地への侵害が及んでいる場合に、裁判所が管理人を選任して管理等を行わせる「管理不全土地管理命令」制度が創設されました(民法第264条の9)。
この申立ては弁護士や司法書士が担いますが、そこに提出する証拠・資料の整備については行政書士が担うこともできます。
〈 「管理不全空家」としての行政措置 〉
2023年12月13日に施行された改正空家等対策特別措置法では、放置すれば特定空家になるおそれのある空き家を「管理不全空家」として指定し、市区町村が指導・勧告を行えるようになりました。
➡ 参考:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について」
勧告を受けた管理不全空家は、固定資産税の住宅用地特例(最大6分の1)が解除され、税負担が大幅に増加します。
この仕組みを所有者に対して事前に伝えることも、任意の解決を促す有効な手段になります。
3. 手続きを進めるために必要な書類
スムーズに動くために、以下の書類を揃えておきましょう。
| 書類 | 取得場所・方法 | 用途 |
| 不動産登記事項証明書 | 法務局(窓口・オンライン) | 現在の所有名義人の確認 |
| 公図・地積測量図 | 法務局 | どの土地・建物が問題なのかを特定する |
| 戸籍謄本・除籍謄本 | 市区町村役場(行政書士が職務上請求) | 名義人死亡時に相続人を特定する |
| 住民票・戸籍の附票 | 市区町村役場(行政書士が職務上請求) | 相続人の現住所を確認する |
| 被害状況の写真・動画 | 自分で撮影 | 被害の客観的な証拠として使用 |
| 自治体の条例・空き家関連資料 | 南魚沼市役所など | 行政との連携・指導の根拠として活用 |
特に、戸籍や住民票は一般の方が第三者分を取得できないため、行政書士への依頼が現実的な解決方法となります。
4. よくある失敗例——「よかれと思って」が逆効果になるケース
実際のご相談の中で多い失敗を紹介します。
焦って動いてしまうことで、解決がさらに遠のくことがあります。
❌ 勝手に敷地内に入ったり、枝を切ったりする
2023年4月施行の改正民法(第233条)により、隣地の竹木の枝が越境している場合、一定の条件(①催告したのに切除しない、②所有者の所在が不明、③急迫の事情)を満たせば、越境された側が自ら枝を切り取ることができるようになりました
➡ 参考:全日本不動産協会「〜民法233条改正を学ぶ〜越境する根・枝の切除問題とは?」
ただし、この権利には手順があります。
正しい手順を踏まずに勝手に切ると、住居侵入罪や器物損壊罪のリスクが残ります。
また「催告した」という証拠を残すためにも、内容証明郵便を使うことが重要です。
❌ 感情的な手紙を送る
「あなたのせいで迷惑している、すぐに何とかしろ」という内容の手紙では、相手が感情的に反発し、かえって話し合いが困難になるケースがあります。
法的根拠に基づいた冷静な書面が、相手を動かすうえで最も効果的です。
❌「市役所が代わりに動いてくれる」という誤解
改正空家特措法により、市区町村が「特定空家」に対して助言・指導・勧告・命令を行う権限は強化されました。
しかし、実際に行政代執行(行政が直接工事を行い費用を請求する)が行われるケースは、危険が非常に高い場合に限られており、決して多くはありません。
基本は当事者間(民事)での解決が優先です。
市役所は相談先・連携先として活用しつつ、主体的に動く必要があります。
5. 行政書士に「できること」・「できないこと」—依頼前に知っておくべき範囲
行政書士に相談する前に、「何を頼めるのか」「何は頼めないのか」を明確に理解しておくことが大切です。
| 業務の種類 | 行政書士ができること | 他士業の担当領域 |
| 調査 | 戸籍・住民票調査(職務上請求)、相続人の特定、登記簿・公図の確認 | 境界確定のための測量(土地家屋調査士) |
| 書類作成 | 内容証明郵便の作成、示談書(案)の作成、各種申請書類の作成補助 | 裁判所提出用の訴状・申立書(弁護士・司法書士) |
| 意思表示の代行 | 書面を通じた事実の通知・管理要請の書面作成 | 代理人としての示談交渉・訴訟代理(弁護士) |
| 予防・管理 | 管理委託契約書の作成、将来の解体・売却に備えた書類整理 | 不動産の所有権移転登記(司法書士) |
| 行政手続きのサポート | 解体補助金の申請書類作成補助、相続土地国庫帰属制度の書類作成補助 | ― |
行政書士は「書類作成と所有者調査の専門家」であり、法律上、代理人としての交渉行為(示談交渉・訴訟)はできません。
しかしその分、内容証明の送付や証拠の整理を通じて、「紛争が始まる前に相手を動かす」という段階での貢献が最も大きい専門家です。
複雑なケース(裁判が必要・強制執行に発展しそう)では、弁護士・司法書士への橋渡しも含めてサポートします。
6. 知っておくと役立つ関連制度——最新の動向
〈 「管理不全空家」の新設(2023年12月施行) 〉
改正空家等対策特別措置法では、倒壊レベルに達していなくても、このまま放置すれば特定空家に至るおそれのある空き家を「管理不全空家」として指定できるようになりました。
改正により、市区町村長は放置すれば特定空家等になるおそれがある空家等を管理不全空家等として指導・勧告できるようになり、勧告を受けた管理不全空家等の敷地は固定資産税の住宅用地特例が解除されます。
これにより、空き家の状態が悪化する前から行政が介入できる仕組みが整備されました。
➡ 参考:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について」
〈 相続土地国庫帰属制度(2023年4月27日開始) 〉
「相続した土地を手放したい」という所有者側のニーズに応える制度として、相続または遺贈によって土地の所有権を取得した相続人が一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする「相続土地国庫帰属制度」が創設されました。
隣の空き家の所有者が「管理したくないが売れない」という状態である場合、この制度を紹介することで解決の糸口になることがあります。
申請書類の作成は行政書士がサポートできます。
➡ 参考:法務省「相続土地国庫帰属制度」
➡ 相続土地国庫帰属制度については「こちらの記事もおすすめ」
〈 南魚沼市の空き家解体補助金 〉
南魚沼市では、危険な空き家の発生を未然に防ぐことを目的として、空家の除却(解体)に補助金を交付する制度があります。
対象となるのは専用住宅または居住用部分が半分以上の建物で、市税の滞納がないことが条件の一つです。
空き家の所有者がわかった場合に、解体費用の補助制度の存在を伝えることも、自主的な対応を促す効果的なアプローチになります
➡ 参考:南魚沼市「住宅」空家等除却事業補助金
7. よくあるご質問
Q1. 登記簿の名義人が亡くなっていても、相続人を調べてもらえますか?
A. はい、対応可能です。
行政書士は「職務上請求」によって戸籍謄本をさかのぼり調査し、現在の相続人を特定することができます。
複数の相続人がいる場合でも、全員を特定して通知先を確定します。
Q2. 所有者がわかったとして、対応してもらえない場合はどうなりますか?
A. 内容証明郵便を送っても無視されるケースでは、弁護士・司法書士との連携のもとで、管理不全土地管理命令の申立てや損害賠償請求訴訟へ移行することも選択肢となります。
Q3. 依頼してから解決まで、どのくらいかかりますか?
A. 所有者調査から内容証明発送まで、案件によりますが通常1〜2か月程度が目安です。
所有者が複数いる場合や相続が複雑な場合は、それ以上かかることがあります。
早く動くほど、選択肢も広がります。
Q4. 市役所にも相談しているのですが、並行して行政書士に頼めますか?
A. もちろんです。
市役所による行政指導の記録は、その後の法的手続きで有力な証拠となります。
行政と連携しながら民事の対策を並行して進めることが、最も効果的な解決方法です。
8. まとめ : 空き家問題は「早く動く」ほど選択肢が広がる
空き家問題の最大の特徴は、放置するほど状況が複雑になるという点です。
所有者が認知症になったり、相続が二次・三次と重なったりすると、相続人の特定だけでも膨大な時間と費用がかかります。
今できる三つのこと:
一つ目は「早期に相続人を特定しておくこと」です。
空き家になり始めた時点で相談いただければ、最も少ないコストで所有者を特定できます。
二つ目は「書面で記録を残しておくこと」です。
口頭での話し合いは証拠になりません。
内容証明郵便や自治体への相談記録が、後の手続きで大きな役割を果たします。
三つ目は「専門家チームを早めに組むこと」です。
行政書士・司法書士・弁護士・不動産業者がそれぞれの役割を担うことで、一つの窓口から複合的な問題を整理できます。
隣の空き家は、誰かが動かない限り動きません。
しかし、正しい手順を踏めば、必ず動かせます。
【 行政書士へのご相談について 】
「冬になるたびに、隣の空き家からの落雪が怖い」
「相続人が誰なのか全くわからない、どこから手をつければいいのか」
そんなお悩みを抱えたまま、時間だけが過ぎていませんか。
行政書士は、南魚沼を拠点に、地域特有の空き家・不動産トラブルに関する書類作成・所有者調査・相続人特定を承ります。
• 登記簿の確認から戸籍調査・相続人特定まで、ワンストップで対応
• 内容証明郵便の作成・送付をサポート
• 弁護士・司法書士・不動産業者との連携ネットワークを活用
• 解体補助金・国庫帰属制度など、行政サポートの活用もご提案
まず現状をじっくりお聞きし、行政書士でできることと、他の専門家への橋渡しが必要なケースを明確にお伝えします。「何からすればいいかわからない」という段階からでもお気軽、お近くの行政書士までお問い合わせください。
出典・参考
・ 法務省「相続土地国庫帰属制度」
・ 法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」(申請手引き)
・ 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について」
・ 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」
・ e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」
・ e-Gov法令検索「民法」(改正民法第233条含む)
・ 法務局:「登記・供託オンライン申請システム」
・ 南魚沼市「住宅」空家等除却事業補助金
・ 全日本不動産協会「〜民法233条改正を学ぶ〜越境する根・枝の切除問題とは?」
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