「実家の土地を相続したけれど、遠方に住んでいて管理ができない」
「南魚沼の山林や農地、固定資産税を払い続けるだけで使い道がない」
そんな悩みを抱える方にとって、2023年4月から始まった「相続土地国庫帰属制度」は、大きな解決策になる可能性があります。
2025年現在、制度の運用も進み、実際に土地を国へ返還できた事例が全国で増えています。
しかし、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではありません。
本記事では、南魚沼地域特有の事情(雪、農地、山林)を踏まえ、制度の仕組みから、行政書士に依頼するメリットまでを詳しく解説します。
1.相続土地国庫帰属制度とは?「負動産」を手放すための新ルール
相続土地国庫帰属制度とは、相続や遺贈によって取得した土地を、一定の条件を満たせば国に引き取ってもらえる制度です。
これまでは「いらない土地」であっても、一度相続すると手放す方法がほとんどありませんでした。
この制度は、所有者不明土地の発生を防ぐために作られた画期的な仕組みです。
2025年最新の運用状況
法務省の発表(2025年時点)によると、制度開始から申請件数は右肩上がりに増えています。
当初は「審査が厳しい」と言われていましたが、実際には申請された土地のうち、一定の基準をクリアしたものの多くが承認されています。
ただし、審査には半年〜1年程度の期間を要するのが一般的です。
2.どんな土地なら返せる?引き取りの「5つのNG条件」
国が土地を引き取るためには、管理に過度なコストやリスクがないことが条件となります。
以下の「却下事由(申請すらできない)」と「不承認事由(審査で落ちる)」に該当しないことが必要です。
① 建物がある土地:家屋は解体して更地にする必要があります。
② 担保権や使用権がついている土地:抵当権が入っている、または他人に貸している土地は不可です。
③ 土壌汚染がある土地:有害物質が含まれる土地は引き取れません。
④ 境界が不明な土地:隣地との境界が確定していない土地は申請できません。
⑤ 危険な崖や工作物がある土地:崩落の危険がある崖地や、管理を阻害する看板・車両などが放置されている土地は不可です。
3.南魚沼エリアで多い相談事例と注意点
南魚沼市や湯沢町周辺にお住まいの方、あるいはこの地域に土地をお持ちの方からは、特に以下のような相談が多く寄せられます。
① 耕作放棄地(田んぼ・畑)の処分
南魚沼は日本有数の米どころですが、農業の担い手不足により「耕作放棄地」となった農地の相談が絶えません。
• 注意点
農用地区域(青地)などの農地は、負担金(国に納める管理費)が面積に応じて加算されるため、通常の宅地より高額になる場合があります。
② 管理しきれない山林
「先祖代々の山を相続したが、どこからどこまでが自分の土地かわからない」というケースです。
• 注意点
境界が不明瞭な山林は、この制度の最大の難所です。
土地家屋調査士による測量が必要になる場合、多額の費用がかかるため、制度を利用すべきか慎重な判断が求められます。
③ 積雪によるリスク
南魚沼は豪雪地帯です。
古い空き家を残したままだと、雪の重みによる倒壊や、隣家への被害が懸念されます。
• ポイント
建物を解体して更地にすれば申請の道が開けますが、解体費用と負担金のバランスを考える必要があります。
4.利用にかかる費用:審査手数料と「負担金」
この制度は無料ではありません。主に以下のコストがかかります。
| 費用の種類 | 内容 | 金額の目安 |
| 審査手数料 | 申請時に法務局へ納める印紙代 | 1筆あたり 14,000円 |
| 負担金 | 承認後に納める10年分の管理費 | 原則 20万円〜 |
※負担金は、土地の種目(宅地、農地、森林、その他)や面積によって決まります。
例えば、市街化区域内の宅地や、特定の農地・森林などは、面積に応じた算定式により数十万円〜100万円以上になるケースもあります。
5.今後予想されること:相続登記の義務化との関係
2024年4月から「相続登記の義務化」が始まっています。
相続を知った日から3年以内に登記をしないと、10万円以下の過料(ペナルティ)が科される可能性があります。
今後、「登記をしなければならないが、土地を持っていても困る」という人が増え、国庫帰属制度の利用者はさらに加速すると予想されます。
また、国側の審査基準も事例の蓄積により、より明確化・効率化されていくでしょう。
6.行政書士にできること・できないこと
複雑な書類作成や手続きをプロに依頼する場合、行政書士は心強いパートナーになります。
① 行政書士ができること(書類作成代行者)
• 申請書類の作成:法務局に提出する膨大な書類や図面の作成。
• 現地調査の同行・サポート:土地の状況を確認し、制度の要件に合致するかのアドバイス。
• 戸籍謄本等の収集:相続人を特定するための書類収集。
• 窓口相談の代行:法務局との事前相談のサポート。
② 行政書士ができないこと(注意点)
• 代理人としての申請:この制度の「代理人」になれるのは、原則として弁護士や司法書士に限られます(行政書士は「書類作成代行者」としてのサポートになります)。
• 紛争の解決:隣地との境界争いがある場合、その交渉を代行することはできません。
• 登記申請そのもの:不動産登記(名義変更)の手続きは司法書士の業務範囲です。
7.まとめ:放置が一番のリスクです
南魚沼の豊かな土地を次世代に「重荷」として残さないために、相続土地国庫帰属制度は有力な選択肢です。
ただし、更地にする費用や境界確定の有無など、事前のシミュレーションが欠かせません。
「この土地、返せるかな?」と少しでも思ったら、まずは専門家へご相談ください。
出典・参考サイト
• 法務省:「相続土地国庫帰属制度について」
• 政府広報オンライン:「相続した土地を手放したいときの「相続土地国庫帰属制度」」
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※本記事は令和7年12月時点に入手可能な情報をもとにしています。年度によって制度内容が変更されている可能性があります。必ず最新の法改正情報などでご確認ください。