「せっかく書いた遺言書が、死後に見つけてもらえなかったらどうしよう…」
「自筆の遺言書は、後から書き換えられたり無効になったりしないか心配だ」
大切なご家族へ思いを繋ぐ「遺言書」。
しかし、自分で書く「自筆証書遺言」には、紛失や改ざん、そして死後の煩雑な手続きといった高いハードルがありました。
そんな不安を解消するために始まったのが、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」です。
2020年の開始以来、利用者は年々増加しており、2024年4月からの「相続登記の義務化」を受けてさらに注目が集まっています。
本記事では、この制度の仕組みから、最新の注意点、行政書士に依頼するメリットまで、専門家の視点で分かりやすく解説します。
1.法務局の「自筆証書遺言書保管制度」とは?
「自筆証書遺言書保管制度」とは、自分で書いた遺言書を、国(法務局)が責任を持って預かってくれる制度です。
本来、自分で書いた遺言書は自宅の金庫や引き出しに保管するのが一般的でしたが、それでは「見つからない」「捨てられる」「書き換えられる」といったリスクが常に付きまといました。
この制度を利用すれば、遺言書の原本は法務局で厳重に保管され、データとしても管理されます。
主な仕組みと費用
• 保管場所: 全国の遺言書保管所(指定された法務局)
• 費用: 保管申請1件につき 3,900円
• 保管期間: 遺言者の死後50年間(原本)、150年間(データ)
2025年現在、デジタル化の流れにより公正証書遺言の電子化も進んでいますが、この自筆証書遺言の保管制度は「安価で安全に遺言を残せる公的手段」として定着しています。
2.知っておきたい!この制度のメリットとデメリット
この制度は非常に画期的ですが、良い面ばかりではありません。
公正証書遺言など他の方法と比較して、メリットとデメリットを正しく理解しましょう。
【メリット】
• 家庭裁判所の「検認」が不要
通常、自筆の遺言書は死後に裁判所で「検認」という手続きが必要ですが、この制度を使えば不要になります。
相続人の負担が大幅に減り、すぐに相続手続きに入れます。
•紛失・隠匿・改ざんの心配ゼロ
国が保管するため、誰かに書き換えられたり、捨てられたりするリスクがありません。
• 形式不備による無効を防げる
受付時に法務局の職員が、日付の有無や署名・押印などの「形式的なチェック」をしてくれます。
• 死亡時の通知サービス
遺言者が亡くなった際、法務局があらかじめ指定された人(相続人など)に「遺言書を預かっていますよ」と通知してくれる仕組みがあります。
【デメリット】
• 法務局へ本人が行く必要がある
代理人による申請はできず、必ず本人が法務局の窓口へ足を運ばなければなりません(※体調が悪い方には負担となります)。
•「内容の有効性」までは保証されない
法務局がチェックするのはあくまで「形式(日付があるか、余白は足りているか等)」です。
「遺留分を侵害していないか」「文章の意味が不明瞭でないか」といった法律的な内容の正しさについては判断してくれません。
• 作成ルールが細かい
用紙サイズ(A4のみ)や余白の指定など、法務局独自のルールを守る必要があります。
3.この制度が「向いている人」と「向かない人」
制度の特徴を踏まえ、どのような方に適しているかをまとめました。
【向いている人】
• 費用を抑えたい方: 公正証書遺言(数万円〜)に比べ、3,900円と圧倒的に安価です。
• 内容を秘密にしたい方: 公正証書遺言のように証人を立てる必要がないため、自分一人で完結できます。
• 相続手続きをスムーズに進めたい方: 「検認」という数ヶ月かかる手続きを省きたい場合に最適です。
【向かない人】
• 外出が困難な方: 法務局へ本人が出向く必要があるため、入院中や足腰が不自由な方には不向きです。
• 複雑な相続関係の方: 財産が多岐にわたる、または相続人間で揉めそうな場合、法務局の形式チェックだけでは不十分なケースが多いです。
• 絶対に無効にならない遺言を作りたい方: 内容の法的確実性を求めるなら、公証人が関与する「公正証書遺言」の方が安心です。
4.【2025年以降】遺言制度をめぐる今後の展望
2024年4月から始まった「相続登記の義務化」により、不動産を持つ方が遺言を残す重要性は一段と高まりました。
遺言書がないと遺産分割協議に時間がかかり、義務化の期限(3年以内)を過ぎて過料を科されるリスクがあるためです。
また、2025年度中には「デジタル遺言」の法的整備がさらに進む見込みです。
まずは公正証書遺言からデジタル化が先行しますが、将来的には法務局の保管制度もオンラインでの手続きがより簡便になることが期待されています。
こうした変化の激しい時期だからこそ、単に「書く」だけでなく「正しく保管し、確実に執行する」ための準備が求められています。
5.行政書士にできること・できないこと
「法務局がチェックしてくれるなら、専門家はいらないのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、法務局と行政書士の役割は全く異なります。
【行政書士ができること(依頼する価値)】
• 「争族」を防ぐ内容の起案: 法務局がチェックしない「法律的な有効性」や「遺留分への配慮」を考慮し、後で揉めない文章を作成します。
• 戸籍謄本などの書類収集: 申請に必要な戸籍関係の書類一式を、漏れなく代理で取得できます。
• 財産目録の作成: 漏れがあるとトラブルの元になる財産リストを正確に作成します。
• 法務局への同行・予約サポート: 手続きの不安を解消するため、窓口への同行や予約のアドバイスを行います。
【行政書士ができないこと】
• 法務局での代理申請: 法律の定めにより、保管の申請そのものは「ご本人の出頭」が必須です。
行政書士が代わりに窓口でハンコを押すことはできません。
行政書士は、いわば「遺言書が確実に実現されるための設計士」です。
法務局の制度(ハコ)を最大限に活かすために、中身(内容)をプロが磨き上げます。
6.まとめ:安心な未来のために、まずはご相談を
法務局の自筆証書遺言書保管制度は、正しく使えば非常に強力な味方になります。
しかし、その「正しさ」には形式だけでなく、中身の法律的な精査も含まれます。
「自分の場合は保管制度で十分?」「内容はこれで大丈夫?」と少しでも不安に思われたら、お近くの行政書士へご相談ください。
あなたの思いが確実に大切な人へ届くよう、プロの視点でサポートいたします。
出典・参照元
• 法務省:「自筆証書遺言書保管制度について」
• 新潟地方法務局:「相続登記の申請義務化について」
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※本記事は令和7年12月時点に入手可能な情報をもとにしています。年度によって制度内容が変更されている可能性があります。必ず最新の法改正情報などでご確認ください。