・ 「相続した実家の名義が亡くなった祖父のままになっている」
・ 「隣の空き地が荒れ放題だが、誰の持ち物か分からない」
今、日本中でこのような「所有者不明土地・建物」が深刻な社会問題となっています。
2024年4月からは相続登記の申請が義務化され、放置しておくと過料(ペナルティ)が科せられる可能性も出てきました。
本記事では、所有者不明土地・建物がなぜ問題なのか、そして私たちはどのような対策を取ればよいのか、行政書士の視点から分かりやすく解説します。
1.そもそも「所有者不明土地・建物」とは?
所有者不明土地・建物とは、不動産登記簿を確認しても「現在の所有者が誰なのか、すぐには判明しない土地・建物」のことを指します。
具体的には、以下の2つのパターンがほとんどです。
• 相続登記がされていない
登記簿上の所有者が亡くなっているが、名義変更が行われず放置されている。
• 住所変更登記がされていない
引越しなどで住所が変わったのに、登記簿の情報が古いままになっている。
現在、日本全国の土地の約2割(九州の面積以上に相当するとも言われます)が、この所有者不明の状態にあると推測されています。
2.なぜ「所有者不明」が大きな問題になっているのか?
「自分の土地・建物なのだから、放置していても自由ではないか」と思われるかもしれません。
しかし、所有者が分からない土地・建物が増えると、以下のような実害が発生します。
• 公共事業や再開発が進まない
道路の拡張や災害復旧工事をしようとしても、地主の同意が得られず、工事がストップしてしまいます。
• 管理不全による近隣トラブル
空き家が崩れそうだったり、雑草が越境してきたりしても、文句を言う相手がいません。
• 経済的な損失
売りたくても売れない、貸したくても貸せないという「死んだ資産」になってしまいます。
これらを解消するため、国は「負の遺産」を次世代に残さないための強力な法改正を行いました。
3.知っておきたい!2024年からの重要な法改正と対策
所有者不明土地をこれ以上増やさないため、以下の3つの大きなルールが始まっています。
① 相続登記の申請義務化(2024年4月1日〜)
相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記をしなければならなくなりました。
正当な理由なく放置すると、10万円以下の過料が科せられる可能性があります。
② 住所・氏名の変更登記の義務化(2026年4月までに施行)
引越しや結婚などで登記簿上の情報が変わった場合も、変更から2年以内に届け出ることが義務化されます。
③ 相続土地国庫帰属制度
「相続したけれど、遠方で管理できないし、買い手も見つからない」という不要な土地を、一定の条件を満たせば国に引き取ってもらえる制度です(審査手数料や負担金の納付が必要です)。
4.行政書士にできること・できないこと
「何から手を付ければいいか分からない」という時、行政書士は身近な相談相手になります。
ただし、資格によってサポートできる範囲が異なります。
① 行政書士ができること(得意分野)
• 家系図の作成・相続人の調査: 誰が相続人なのか、戸籍を遡って徹底的に調べます。
• 遺産分割協議書の作成: 相続人全員の合意内容を、法的に有効な書類にまとめます。
• 未利用土地の活用・処分の相談: 許認可の知識を活かし、農地転用や開発の可能性をアドバイスします。
② 行政書士ができないこと
• 登記申請の代行: 法務局への登記申請書類の作成・提出代行は、司法書士の独占業務です。
• 紛争の仲裁: 相続人間で激しい争い(遺産争い)がある場合の交渉は、弁護士の業務となります。
5.まとめ:放置は最大のリスクです
所有者不明土地の問題は、時間が経てば経つほど相続人が増え(数世代にわたると数十人になることもあります)、解決が困難になります。
「自分の実家はどうなっているんだろう?」と不安に思われたら、まずはお気軽に専門家(行政書士など)へご相談ください。
複雑な戸籍収集から、最適な解決策のご提案まで親身にサポートいたします。
「まだ大丈夫」と思わず、まずは登記簿謄本を確認することから始めてみませんか?
出典・参考サイト
• 法務省:「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)」
• 法務省:「不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~」
• 法務省:「相続土地国庫帰属制度について」
≪南魚沼で行政書士をお探しの方へ≫
当事務所では、各種許認可申請、相続手続きなど、地域に寄り添ったサポートを行っております。
ご相談の内容により、他の専門家(司法書士・税理士など)との連携や、ご紹介をさせていただきます。
まずはお気軽にご相談ください。
当事務所の詳細はホームページをご覧ください。
「にわの行政書士事務所」のホームページ
※本記事は令和7年12月時点に入手可能な情報をもとにしています。年度によって制度内容が変更されている可能性があります。必ず最新の法改正情報などでご確認ください。