近年、「墓じまい・改葬」を検討するご家庭が増えています。
子どもが遠方に住んでいる、後継ぎがいない、管理が負担になった、供養のあり方を変えたい──そうした理由から選ばれるケースが多く、統計でも改葬の件数は大きく増加しています。
この記事では、最近の状況、代表的な墓じまい・改葬の方法、必要な手続き(書類と流れ)、行政書士ができること・できないこと、費用相場や注意点までを詳しくお伝えします。
1.近年の「墓じまい」事情 — なぜ増えているのか(データで見る動向)
厚生労働省の衛生行政報告例(改葬数)等によると、改葬の件数はここ数年で大幅に増加しています(例:令和4年度の改葬件数は過去最多クラス)。
これは「核家族化」「都市への人口移動」「子世代の遠隔地居住」「管理負担を軽くしたい」といった社会変化が背景です。
※ 家庭の事情や地域差で事情は変わります — 例えば地方の寺院事情や公営霊園の空き状況など、自治体によって手続きや受け入れ先の要件が異なります。
実際の数値や自治体ごとの扱いは各市区町村の窓口で確認が必要です。
2.「墓じまい」と「改葬」の違い(言葉の整理)
• 墓じまい:お墓を撤去・整理し、これまでの埋蔵場所を解消する行為の総称。
• 改葬(かいそう):遺骨を別の墓地や納骨堂へ移す正式な手続き(行政に申請して許可を得る必要がある場合が多い)。
→ 実務では「墓じまいをして改葬する(永代供養に移す)」という流れが一般的です。
3.代表的な墓じまい(改葬)のパターン
① 永代供養へ移す(寺院・霊園の永代供養墓や合祀墓、納骨堂)
② 家族が持ち帰って自宅で供養(保管方法・宗旨により可否が異なる)
③ 散骨(海洋散骨・樹木葬など)(自治体・海域のルールや同意が必要な場合あり)
④ 改葬して別のお墓へ移す(郷里→現住所近くへ)
それぞれの選択肢で受け入れ先の条件、費用、供養方法が変わります。
移転先が決まっていないと改葬許可が出せない自治体もあるため、まず受け入れ先を確保してから書類準備を進めるのが一般的です。
4.墓じまい(改葬)の一般的な手続きと必要書類(ステップ順)
以下はよくある流れの例です。自治体や霊園により詳細は異なりますので、必ず事前確認してください。
① 移転先(永代供養や納骨堂等)を決め、受入証明書を取得
・新しい収容先(受入先)に、遺骨を受け入れてもらえるか確認し「受入証明書」をもらいます。
② 現在のお墓の管理者に埋葬(埋蔵)証明や墓地返還に関する同意を得る
・寺院や霊園の管理者により書式が異なります。管理者の押印・署名が必要なことが多いです。
③ 改葬許可申請書を作成して自治体へ提出 → 「改葬許可証」を取得
・多くの場合、元の埋葬地(遺骨がある場所)を管轄する市区町村へ、改装許可申請書を提出します。
その際、埋葬地(遺骨がある場所)の管理者から埋葬許可証(または埋葬証明)・改葬承諾書を取得し、改装許可申請書と共に申請します。改葬許可証交付まで数日〜1週間程度かかる場合があります。
④ 石材店や墓石業者と相談のうえ撤去工事を実施(必要に応じて)
・墓石の撤去と骨上げ(遺骨の取り出し)は専門の施工業者が行います。費用や日程調整が必要です。
⑤ 新しい受入先へ改葬許可証を提出し納骨
・新しい納骨先に改葬許可証を渡して納骨手続きを行います。
5.費用の目安(相場)
• 改葬手続き(書類・役所手続き)を行政書士に依頼した場合
目安は数万円〜十数万円(事務所や作業範囲により差)。
改葬許可取得代行のみなら比較的低め、現地調整や石材店とのやり取り、戸籍等の書類取得を含めると上がります。
• 石材撤去・骨上げ・運搬・納骨の実務費用
数十万円〜(墓地の規模・工事内容により変動)。
• 永代供養へ合祀する場合の費用
施設によっては数万円〜数十万円。
※費用は個別案件で大きく差が出ます。見積りは必ず複数社・事務所で比較してください。
6.行政書士に依頼するとき:「できること」・「できないこと」
行政書士に「できること」
• 官公署へ提出する書類(改葬許可申請書など)の作成と代理提出。
• 役所・霊園・寺院等との事務的なやり取り(書類取得・押印の確認など)の代行。
• 戸籍謄本など必要書類の取得代行(一部条件あり)。
• 全体の進行管理やスケジュール調整、関係者(石材業者等)との連絡窓口。
行政書士に「できないこと」
• 裁判上の代理(訴訟代理)や、弁護士のみが行える法的代理行為。
• 登記に関しては司法書士、税金に関しては税理士が窓口となります。
※行政書士資格を持たない業者(一般の墓じまい代行会社や石材店)が「行政への申請代理」を行うことは法律で禁止されています。依頼時には、その業者が行政書士かどうか確認してください。
行政書士法の規定により、官公署へ提出する書類の作成・代理提出は行政書士の業務です。
資格のない第三者による代行は法的に問題になりますので注意してください。
7.よくあるトラブル&注意点(実務的アドバイス)
• 受入先が思った条件で受け入れてくれない
特に郊外の寺院や公営霊園で受け入れ条件が厳しい場合があり、事前確認が重要。
• 書類不備で改葬許可が出ない
埋葬許可証(火葬許可証を証明書化したもの)や受入証明書の様式不備で差し戻されることがあります。行政書士による事前チェックでミスを減らせます。
• 無資格業者に依頼して処分問題に
石材店や代行業者が「役所手続きもやります」と言っても、行政書士資格がないと違法になる場合があります。契約前に資格や業務範囲を確認しましょう。
• 関係者(檀家、親族)間の同意トラブル
宗教的・感情的問題が絡みやすい分野です。合意形成は時間をかけて行い、書面で記録を残すのがおすすめです。
8.「相談→依頼→完了」までの実務的な進め方(行政書士目線でのおすすめ)
① まずは現状把握(現地・書類の確認) — 埋葬許可証の有無、墓地の管理者、受入先の候補。
② 受入先候補の事前確認 — 条件(合祀・永代供養・個別安置など)と費用を確認。
③ 書類準備と代理申請の見積り依頼 — 行政書士に作業範囲・費用を明記した見積りを出してもらう。
④ 石材業者の手配(撤去・骨上げ) — 見積り内容に「墓石撤去費・骨上げ費」を明確に。行政書士は業者選定のアドバイスを行えますが、施工は石材店が行います。
⑤ 改葬許可を役所から受け取り、納骨 — 完了後の書類保管も重要です。
行政書士に依頼すると、役所や霊園との煩雑なやり取りを一括して任せることも可能なため、精神的負担が軽くなりやすいです。
9.ケース別:こんなときはどうする?
• 子どもが皆遠方にいる → 都市部の永代供養(管理費不要の合祀等)を検討。
• 檀家(寺)を離檀したくないが管理が難しい → 寺院と金銭的な話し合い(離檀料や供養方法)を検討、行政書士は事務的調整を支援。
• 散骨を検討している → 散骨は自治体・海域のルール、法令や船業者のガイドラインに注意。自治体への届け出が必要な場合もあるため事前確認を。
※ケースごとの詳細は、個別相談で状況に合わせて検討することをおすすめします。
10.最後に — まず何をすべきか(行政書士事務所からの提案)
① 「今ある書類(埋葬許可証など)が手元にあるか」を確認してください。書類の有無で手続きの進め方が変わります。
② 「移転先の候補(永代供養・納骨堂等)」を1〜2候補あげて、受け入れ可否と費用を確認してください。
③ 書類準備や役所手続き、関係者とのやり取りに不安がある場合は、ぜひ行政書士へご相談ください。
改葬許可申請は行政書士が代理できる分野であり、手続きミスや違法代行によるトラブルを避けられます。
墓じまいは「心の問題」や「家族間の合意」を伴う繊細な手続きです。
書類や役所対応、受入先との調整、石材店との工事手配など、やることが多く時間の負担も少なくありません。
行政書士は以下をワンストップで支援することも可能です。
※支援可能な範囲は行政書士によって違うため、ご相談の際に必ずご確認ください。
• 改葬許可申請書の作成と自治体への代理提出
• 受入先(永代供養・納骨堂)への調査・交渉サポート
• 既存墓地管理者との書面調整・返還手続きの案内
• 関係書類(戸籍・埋葬許可証等)の取得代行
• 石材店との連絡調整や工事スケジュール管理(工事は施工業者が実施)
まずは「現状の書類(埋葬許可証の有無・墓地の所在)をお伝えください。
状況に合わせて、必要な手順と概算費用をわかりやすくご案内します。
行政書士は、墓じまいの不安を減らし、次の供養の形を一緒に考えていきます。
参考(主な出典)
• 厚生労働省「衛生行政報告例(埋葬・改葬数等)」e-Stat政府統計の総合窓口
• 南魚沼市「改葬許可手続き」(手続きの窓口や要件は自治体で異なります。)
• 日本行政書士会連合会「行政書士の業務」行政書士の業務範囲に関する公式説明
• e-Gov法令検索「行政書士法」 業務独占の根拠等
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※本記事は令和7年12月時点に入手可能な公的情報をもとにしています。年度によって制度内容が変更されている可能性があります。必ず最新の法改正情報などでご確認ください。