「所有している山林の維持管理が大変で、固定資産税ばかりかかっている……」
「最近よく聞く『カーボンニュートラル』や『脱炭素』は、自分たちに何かメリットがあるの?」
南魚沼市の豊かな自然に囲まれて暮らす皆様の中には、このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
実は今、適切に管理された山林には「J-クレジット」という新しい価値(環境価値)が認められ、それが売買される仕組みが整っています。
本記事では、行政手続きの専門家である行政書士の視点から、山林管理におけるJ-クレジットの仕組みや南魚沼市での事例、そして今後の展望について分かりやすく解説します。
1.山林管理が生む「環境価値」とJ-クレジットの仕組み
J-クレジット制度とは、省エネ設備の導入や適切な森林管理によって削減・吸収された温室効果ガス(CO2など)の量を、国が「クレジット」として認証する制度です。
山林における「環境価値」とは?
木々は光合成によってCO2を吸収し、炭素を体内に蓄えます。
しかし、手入れの行き届かない森林では成長が鈍り、吸収効率が落ちてしまいます。
そこで、間伐(木を間引くこと)や植林を適切に行い、元気な森林を保つことで、「追加で吸収されたCO2の量」が生まれます。
これが「環境価値」であり、J-クレジットとして数値化・資産化できるのです。
収益化の流れ
① プロジェクト登録:森林管理の計画を立て、国や県に登録します。
② 適切な管理:計画に基づき、間伐や再造林などの施業を行います。
③ モニタリング・認証:実際にどれくらい木が成長したかを調査し、吸収量を国が認証します。
④ クレジット発行・売買:発行されたクレジットを、脱炭素を目指す企業などに売却します。
2.南魚沼市における事例:豊かな「水」を育む森林の価値
南魚沼市は、市域の約83%を森林が占める自然豊かな地域です。
この広大な森林は、日本一の「コシヒカリ」や美味しい「地酒」を育む清らかな水の源泉でもあります。
南魚沼 銘水の森クレジット
南魚沼市では、市の森林整備を通じて生まれた価値を「南魚沼 銘水の森クレジット」として運用しています。これは新潟県版J-クレジット制度などを活用したもので、市内の間伐プロジェクトによって創出されています。
• 地元企業との連携:市内に拠点を持つ印刷会社(株式会社明昌堂など)が、自社の事業活動で排出されるCO2を相殺(カーボン・オフセット)するためにこのクレジットを購入しています。
• 資金の循環:クレジットの売却益は、再び南魚沼の森林整備(歩道整備や標識設置、間伐など)に充てられ、地域の環境が守られるという好循環が生まれています。
南魚沼市は2025年4月1日に「ゼロカーボンシティ宣言」を行うことを表明しており、今後ますます地域の森林が持つ「環境価値」に注目が集まることは間違いありません。
3.今後予想される展望:クレジット価格の上昇と企業の需要
J-クレジットを取り巻く環境は、今後数年で劇的に変化すると予想されます。
取引価格の上昇
現在、世界的に「GX(グリーントランスフォーメーション)」が進められており、日本でも大手企業を中心にCO2排出量の削減が義務化されつつあります。
自社で削減しきれない分をクレジットで補う需要が高まっているため、森林由来のクレジット価格は上昇傾向にあります。
山林の資産価値の再定義
これまで「負動産」と呼ばれがちだった地方の山林が、クレジットを創出する「資産」として見直されています。
特に南魚沼のような豪雪地帯の森林は、水源涵養機能(水を蓄える力)も高く、生物多様性の観点からも企業が「応援したい」と思う付加価値がつきやすいのが特徴です。
4.行政書士に「できること」と「できないこと」
J-クレジットの申請には、膨大な書類作成と複雑な手続きが伴います。
ここで行政書士がどのようなサポートを行えるのか整理します。
行政書士ができること(主な業務範囲)
• 申請書類の作成と代行:国や新潟県へのプロジェクト登録申請、モニタリング報告書の作成などを代理で行います。
• 契約書の起案・チェック:クレジットの売買に関する契約や、森林所有者間での合意書の作成をサポートします。
• 補助金活用のアドバイス:森林整備に関する各種補助金(森林環境譲与税を活用した施策など)の申請をサポートします。
• 法的コンプライアンスの確認:森林法や関連条例に適合した計画になっているかを確認します。
行政書士ができないこと(他士業の独占業務)
• 税務申告・税務相談:クレジット売却益の確定申告や具体的な節税相談は、税理士の業務です。
• 登記手続き:山林の相続に伴う登記は、司法書士の業務です。
• 紛争の交渉:所有者間でのトラブルや価格交渉で争いが生じた場合の代理交渉は、弁護士の業務です。
5.まとめ:山林の未来を専門家と一緒に考えませんか?
J-クレジットは、単なる「環境保護」の取り組みではなく、地域の森林を守りながら経済的なリターンを得るための有力な手段です。
南魚沼市がゼロカーボンに向けた歩みを加速させる今、お手持ちの山林が持つ可能性を一度確認してみる価値は十分にあります。
「自分の山でもクレジットが作れるの?」「手続きが難しそうで一歩踏み出せない」という方は、行政書士などの専門家へご相談ください。
行政書士は複雑な行政手続きのパートナーとして、地域の皆様の資産活用を全力でバックアップいたします。
出典・参考
• 「J-クレジット制度公式ホームページ」
• 南魚沼市:「南魚沼 銘水の森クレジット」
• 南魚沼市:「ゼロカーボンシティ宣言について」
• 新潟県:「新潟県版J-クレジット制度」
• 林野庁:「J-クレジット制度」
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※本記事は令和7年12月時点に入手可能な情報をもとにしています。年度によって制度内容が変更されている可能性があります。必ず最新の法改正情報などでご確認ください。