個人の自宅や店舗で地下水(井戸水)を利用したいとお考えの方は多いのではないでしょうか。
特に雪国では冬の消雪用として、また飲食店では経費削減のために井戸水の活用を検討されることもあります。
しかし、地下水の利用には自治体への許可申請や届出が必要となるケースがほとんどです。
この記事では、南魚沼市や湯沢町を中心に、地下水・井戸水を利用する際の手続きや注意点について、行政書士の視点から詳しく解説いたします。
1.地下水利用に許可が必要な理由
なぜ自分の土地の地下にある水を使うのに許可が必要なのでしょうか。
その理由は地盤沈下の防止にあります。
地下水を大量に汲み上げると、地下の粘土層が収縮し、地盤沈下が発生する可能性があります。
南魚沼市では、特に冬期間の消雪用地下水の大量くみ上げが原因で地盤沈下が起きており、六日町駅西側を中心とする市街地では顕著な沈下が見られます。
こうした背景から、地域の貴重な地下水資源を守り、公共の福祉を維持するために、条例による規制が設けられているのです。
2.南魚沼市での地下水利用の手続き
① 基本的な流れ
南魚沼市で井戸を設置する場合、市内全域で市長の許可が必要です。
無許可で井戸を設置すると条例により罰せられますので、必ず事前に手続きを行ってください。
手続きの流れは以下の通りです。
⑴ 施工業者(登録業者)の選定
南魚沼市では、井戸の施工は市に登録した業者でなければできません。
登録されていない業者に依頼したい場合は、事前に業者から市への登録申請が必要となります。
現在、市に登録されている施工業者は50社以上あり、市のウェブサイトで業者名、住所、電話番号を確認できます(参考:南魚沼市「井戸を設置するには」)。
⑵ 井戸設置等許可申請書の提出
登録業者を決定したら、「井戸設置等許可申請書」を南魚沼市長(環境交通課)へ提出します。
申請書には以下の書類を添付する必要があります。
• 井戸設置場所の案内図
• 土地地番図の写し(井戸の位置を示すこと)
• 消雪用井戸の場合:建築面積または水平投影面積を確認できる平面図等
• 産業用井戸の場合:地下水使用量の算出根拠資料
• 主要配管の系統図
• 申請者と土地所有者が異なる場合:権利関係を確認できる書面
• 農地の場合:農地転用許可証の写し
• その他、市長が必要と認める書類
許可を受ける際には、許可手数料2,000円が必要です。
⑶ 許可の審査
市長は申請を受理してから30日以内に許可または不許可を決定します。
ただし、一定の基準を超える井戸の場合は、南魚沼市地下水対策委員会に諮問されるため、さらに時間がかかることがあります。
申請内容によっては許可までに時間がかかる場合があるため、余裕を持って申請することをお勧めします。
⑷ 井戸設置等検査
許可が出たら施工を開始できますが、揚水機を取り付ける前に「井戸設置等検査届」を提出し、市の検査を受けなければなりません。
具体的には、井戸の掘削(ケーシングの設置)が終了し、揚水機を設置する前の段階で検査を受けます。
施工業者は検査時に立ち会う必要があります。
② 重点区域とその他区域
南魚沼市では、地盤沈下の状況に応じて市内を「重点区域」と「その他区域」の2つに分けています。
【重点区域】
地盤沈下が顕著である六日町市街地およびその周辺で、魚野川の左岸の一定範囲が指定されています。
重点区域では、井戸の規模に対してより厳しい基準が適用されます。
【その他区域】
地盤沈下の被害がない、または比較的少ない地域で、重点区域を除く市内すべての範囲です。
3.湯沢町での地下水利用の手続き
湯沢町でも、井戸を掘削する場合は「湯沢町地下水採取の規制に関する条例」により、町長の許可を受ける必要があります。
湯沢町の特徴は、指定地域ごとに掘削できる井戸のケーシング口径と設置するポンプの吐出口径に規制があることです。
また、一事業地につき井戸は2本までという制限があります。
許可申請には、住所・氏名、井戸の位置、用途、ケーシングの口径、揚水機の吐出口径、工事施工者などを記載した申請書を事前に町長に提出する必要があります。
4.消雪用井戸を設置する場合の特別な手続き
消雪用井戸は、冬期間に道路や駐車場、建物周辺の雪を溶かすために地下水を利用するもので、雪国では非常に一般的です。
ただし、消雪用井戸は地下水の使用量が多くなるため、特に厳しい規制の対象となっています。
① 南魚沼市の場合
南魚沼市では、消雪用井戸の設置にあたり、建築面積または水平投影面積を確認できる平面図等の提出が求められます。
また、市では冬期間の地下水節水対策として、以下の取り組みを実施しています。
【警報・注意報の発令】
市役所本庁舎の地下水位観測井戸の水位が継続して15メートル以上低下する恐れがある場合は「警報」、10メートル以上低下する恐れがある場合は「注意報」を発令し、FMラジオなどを通じて広報します。
【定期的なパトロール】
市内全域を対象に地下水の利用状況について定期的にパトロールし、過剰または不要と思われる散水があった場合は、節水をお願いします。
② 新潟県の条例による規制
新潟県全体でも、地盤沈下を防止するため「新潟県生活環境の保全等に関する条例」により、指定地域での揚水設備の設置を規制しています。
指定地域内では、一定規模以上の揚水設備(井戸)を設置する場合、知事等の許可が必要です。
ただし、病院等における災害時の水源や幹線道路の交通確保のための消雪用等に使用する場合は例外が認められることがあります。
一般住宅、店舗、施設の消雪用には許可されないケースもあるため、事前に確認が必要です。
③ 消雪用井戸設置の補助金
南魚沼市では、消雪用井戸降雪検知器等設置事業補助金を設けている場合があります。
これは、節水型の降雪検知器の設置を促進し、地下水の過剰な使用を抑制するための制度です。
申請を検討される方は、市の環境交通課にお問い合わせください。
5.飲食店が井戸水を使用する場合の手続き
飲食店で井戸水を使用する場合は、地下水採取の許可申請に加えて、保健所への届出や水質検査が必要になります。
① 水質検査の実施
飲食店などの食品営業施設で井戸水、湧き水、山水等を使用する場合、食品衛生法に基づき、水道水と同等の安全性を確保する必要があります。
具体的には、以下の水質検査が求められます。
【営業許可申請時】
10項目程度の簡易水質検査(一般細菌、大腸菌、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素、塩化物イオン、有機物、pH値、味、臭気、色度など)
【定期的な検査】
年1回以上の水質検査(食品製造用水26項目)の実施が推奨されています。
水質検査は、都道府県知事等の登録を受けた水質検査機関に依頼する必要があります。
検査費用は検査項目数によって異なりますが、10項目で1万円前後、26項目で2~3万円程度が一般的です。
② 保健所への届出
飲食店の営業許可を申請する際、井戸水を使用する場合は保健所に対してその旨を届け出る必要があります。
営業許可申請時に水質検査成績書の提出を求められるのが一般的です。
各自治体によって具体的な要件が異なる場合があるため、施設の所在地を管轄する保健所に事前に確認することをお勧めします。
③ 衛生管理の注意点
井戸水は地下水を汲み上げるものなので、水道水とは違い消毒殺菌などの処理がされていません。
飲食店で使用する場合は、以下の点に注意が必要です。
• 井戸周辺の衛生管理(汚染源となる施設からの距離確保)
• 定期的な水質検査の実施
• 水質異常時の対応手順の確立
• 必要に応じた浄水設備の導入
6.下水道使用料について
井戸水を使用する場合でも、汚水を公共下水道に流す場合は下水道使用料を納める必要があります。
① 下水道使用料の計算方法
井戸水を使用して下水道に排出する場合、排出する汚水の量(汚水排水量)に応じて下水道使用料が計算されます。具体的な方法は自治体によって異なりますが、一般的には以下のような方法があります。
【量水器(メーター)の設置】
使用者の負担で井戸水汲み上げ量を計測するための量水器を設置し、定期的に水量を報告する方法
【認定基準汚水量】
世帯人数や用途に応じて、自治体が定めた基準量を適用する方法
② 届出の必要性
井戸水を使用して下水道に排出する場合は、下水道事業者(多くの場合、市町村の上下水道課)への届出が必要です。
届出を怠ると、後から遡及して使用料を請求される可能性もあるため、井戸設置と同時に手続きを行うことをお勧めします。
7.地下水利用が多い南魚沼市・湯沢町の地域
① 南魚沼市
南魚沼市では、特に以下の地域で消雪用井戸の利用が多く見られます。
【六日町市街地】
住宅や事業所・店舗などが密集しており、消雪用地下水の使用量が多い地域です。
地盤沈下が顕著であるため、重点区域に指定されています。
【塩沢地区】
同様に市街地が形成されており、消雪用井戸の設置が多い地域です
② 湯沢町
湯沢町は日本有数の豪雪地域であり、地下水は限られた貴重な資源です。
特に湯沢市街地や神立地区など、住宅や商業施設が集中する地域では、消雪用井戸の設置が多く見られます。
8.地下水利用の注意点
① 冬期間の節水協力
南魚沼市や湯沢町などの豪雪地域では、冬期間に消雪用地下水の使用が集中します。
地下水位の急激な低下を防ぐため、以下の点に注意してください。
• 過剰な散水の防止:必要以上に水を流さないよう注意する
• 降雪検知器の活用:降雪時のみ自動的に散水する節水型降雪検知器の設置を検討する
• 警報・注意報への対応:市から警報や注意報が発令された場合は、積極的に節水に協力する
② 井戸の維持管理
井戸を設置した後も、適切な維持管理が必要です。
• 定期的な点検:ポンプの動作確認、配管の漏水チェックなど
• 水質検査:特に飲用や食品製造に使用する場合は、定期的な水質検査が必要
• 揚水量の報告:一定規模以上の井戸では、揚水量の報告が義務付けられている場合があります
③ 廃止時の届出
井戸を廃止した場合は、廃止が完了した日から30日以内に市長に届け出なければなりません。
9.行政書士ができること・できないこと
地下水利用に関する手続きについて、行政書士がお手伝いできることと、できないことを明確にしておきましょう。
〈 ✔ 行政書士ができること 〉
行政書士は「官公署に提出する書類の作成」を業務とする国家資格者です。
地下水利用に関して、行政書士は以下の業務を行うことができます。
① 井戸設置等許可申請書の作成
南魚沼市や湯沢町などへの許可申請書の作成を代行できます。
② 添付書類の準備支援
案内図、配管系統図、その他必要書類の準備をサポートできます。
③ 申請手続きの代理
申請者の委任に基づき、代理人として申請書を提出できます(南魚沼市の条例第15条では、登録を受けた施工業者を代理人として申請できる旨が規定されていますが、行政書士も官公署への書類提出を代理できる資格者です)。
④ 各種届出書類の作成
井戸の廃止届、施工業者変更届、検査届などの作成を代行できます。
⑤ 相談業務
手続きの流れ、必要書類、注意点などについて相談に応じることができます。
⑥ 他の許認可との調整
農地転用許可が必要な場合など、関連する手続きについても一括してサポートできます。
〈 ✖ 行政書士ができないこと 〉
一方で、以下の業務は行政書士の業務範囲外です。
① 井戸の施工工事
井戸掘削や設備設置などの実際の工事は、登録施工業者が行います。
行政書士は書類作成の専門家であり、工事業者ではありません。
② 水質検査の実施
水質検査は、都道府県知事等の登録を受けた水質検査機関が行います。
③ 法的紛争の代理
許可が不許可になった場合の審査請求等については、特定行政書士の資格を持つ行政書士のみが代理できます。
④ 登記申請
土地や建物の登記申請は司法書士の業務です。
〈 行政書士に依頼するメリット 〉
専門知識を持つ行政書士に依頼することで、以下のようなメリットがあります。
• 手続きの確実性:複雑な条例や規則を理解し、適切な書類を作成できます。
• 時間の節約:平日に何度も役所に足を運ぶ必要がなくなります。
• 書類の不備防止:書類の不備による再提出や許可の遅れを防げます。
• 総合的なサポート:関連する手続きについても一括して相談できます。
10.よくある質問(FAQ)
Q1. 自分の土地でも井戸を掘るには許可が必要ですか?
はい、南魚沼市や湯沢町では、自分の土地であっても井戸を掘る際には市町村長の許可が必要です。
無許可で設置すると条例により罰せられる可能性があります。
Q2. 許可申請から許可が下りるまでどのくらいかかりますか?
南魚沼市の場合、申請受理から30日以内に許可または不許可が決定されます。
ただし、一定の基準を超える井戸で地下水対策委員会の審議が必要な場合は、さらに時間がかかります。
余裕を持って2~3ヶ月前には申請することをお勧めします。
Q3. 井戸を設置する費用はどのくらいかかりますか?
井戸の深さ、用途、設備によって大きく異なります。
一般的に、家庭用の浅井戸で50万円程度から、深井戸や消雪用井戸では100万円以上かかることもあります。
登録施工業者に見積もりを依頼してください。
Q4. 飲食店で井戸水を使いたいのですが、どんな検査が必要ですか?
営業許可申請時に10項目程度の水質検査が必要です。
さらに、営業開始後も年1回以上の定期的な水質検査(食品製造用水26項目)が推奨されています。
検査機関に依頼して、基準に適合しているか確認してください。
Q5. 井戸水を使っても下水道使用料はかかりますか?
はい、井戸水を使用して汚水を公共下水道に流す場合、下水道使用料を納める必要があります。
量水器を設置して使用量を報告するか、認定基準汚水量が適用されます。
Q6. 冬だけ消雪用井戸を使いたいのですが、特別な許可が必要ですか?
消雪用井戸も通常の井戸と同様に、事前に許可申請が必要です。
さらに、節水型降雪検知器の設置が求められる場合があります。
Q7. 隣の土地に井戸を掘りたいのですが可能ですか?
申請者と井戸設置場所の土地所有者が異なる場合は、権利関係を確認できる書面(土地使用承諾書など)の提出が必要です。
土地所有者の承諾を得た上で申請してください。
Q8. 農地に井戸を設置したいのですが?
井戸設置場所の地目が農地の場合は、農地転用許可証の写しを添付する必要があります。
農地転用許可の手続きも併せて行ってください。
Q9. 井戸を廃止する場合はどうすればよいですか?
井戸を廃止した場合は、廃止が完了した日から30日以内に「井戸の廃止届」を市長に提出しなければなりません。
Q10. 行政書士に依頼すると費用はどのくらいかかりますか?
行政書士の報酬は各事務所によって異なりますが、井戸設置許可申請の書類作成代行で3万円~5万円程度が一般的です。
相談料や出張料は別途かかる場合があります。
複雑な案件や急ぎの場合は費用が変動することもあるため、事前に見積もりを取ることをお勧めします。
11.まとめ
地下水・井戸水の利用には、地域の貴重な水資源を守り、地盤沈下を防止するために、自治体への許可申請や各種届出が必要です。
南魚沼市や湯沢町では独自の条例により厳格な規制が設けられており、手続きには専門的な知識が求められます。
特に以下の点に注意が必要です。
• 市内全域で市町村長の許可が必要(無許可設置は処罰の対象)
• 登録施工業者による施工が義務付けられている
• 消雪用井戸は使用量が多いため特に厳しい規制がある
• 飲食店で使用する場合は水質検査と保健所への届出が必要
• 下水道に排出する場合は下水道使用料が発生する
• 冬期間は節水への協力が求められる
手続きの流れや必要書類は複雑で、申請内容によっては審査に時間がかかることもあります。
書類の不備による再提出や許可の遅れを避けるためにも、専門家(行政書士など)に相談することをお勧めします。
行政書士は、地域の地下水・井戸水利用に関する以下の許可申請手続きをサポートいたします。
• 井戸設置等許可申請書の作成・提出代行
• 必要書類の準備支援
• 関連する農地転用許可などの手続き
• 下水道使用の届出サポート
• 飲食店の水質検査に関する相談 など
平日に何度も役所に足を運ぶ時間がない方、書類作成に不安がある方、確実にスムーズに許可を取得したい方は、ぜひ一度行政書士への相談をご検討ください。
参考・出典
• 南魚沼市公式サイト「地下水」:過去の地下水位情報など
• 南魚沼市公式サイト「地下水について」:井戸の設置・南魚沼市地下水の採取に関する条例など
• 湯沢町公式サイト「井戸の掘削」
• 湯沢町例規集「湯沢町地下水採取の規制に関する条例」
• 新潟県公式サイト「県条例による地下水採取規制」
• 総務省「行政書士制度」
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