近年、人口減少や消費行動の変化により、全国で空き店舗が増加しています。
総務省の調査によると、2023年時点での全国の空き店舗率は約10%に達しており、地方都市を中心に深刻な社会問題となっています。
こうした中、特に雪国地域では冬季の利用形態を考慮した「雪国型シェアスペース」への転用が注目を集めています。
本記事では、新潟県南魚沼地域を例に、空き店舗をシェアスペースに転用する際に必要な法的手続き、雪国特有の注意点、そして行政書士がどのようにサポートできるかについて詳しく解説します。
1. 雪国型シェアスペースとは何か
① シェアスペースの基本概念
シェアスペースとは、時間単位や月単位で複数の利用者が共有できるスペースを貸し出すビジネスモデルです。
コワーキングスペース、貸し会議室、イベントスペース、シェアキッチンなど、様々な用途で活用されています。
② 雪国型シェアスペースの特徴
雪国型シェアスペースとは、積雪地域特有の課題と需要に対応した運営形態を持つシェアスペースです。
以下のような特徴があります。
• 冬季限定・季節変動型の利用形態 : 夏季は観光客向けワークスペース、冬季はスキー客向けロッカールームなど
• 短期集中型の貸出 : 週末や連休期間に特化した利用プラン
• 雪国体験スペース : 雪国文化の体験や地域交流の場としての活用
• 除雪・暖房設備の完備 : 利用者が安心して使える環境整備
③ 南魚沼地域での活用可能性
新潟県南魚沼市は、日本有数の豪雪地帯であり、同時に南魚沼産コシヒカリの産地やスキーリゾート地として知られています。
このような地域特性を活かし、以下のような雪国型シェアスペースの展開が考えられます。
• スキー観光客向けの短期利用スペース(荷物預かり、着替え場所など)
• 農繁期の作業場・倉庫(米の収穫時期など)
• 冬季の地域交流スペース(雪国料理教室、伝統工芸体験など)
• リモートワーカー向けワークスペース(雪景色を楽しみながら仕事)
2. 用途変更に必要な法的手続き
空き店舗をシェアスペースに転用する際、最も重要なのが建築基準法上の用途変更の手続きです。
① 用途変更の確認申請が必要なケース
建築基準法では、以下の2つの条件を両方満たす場合に用途変更の確認申請が必要とされています。
【 条件1 : 変更後の用途が特殊建築物に該当すること 】
特殊建築物とは、建築基準法別表第一(い)欄に定められた用途で、不特定多数の人が利用する建物です。
シェアスペースとして利用する場合、その運営形態によって特殊建築物に該当するかどうかが変わります。
【 条件2 : 用途変更する床面積が200㎡を超えること 】
2019年6月の法改正により、確認申請が必要な面積基準が100㎡超から200㎡超に緩和されました。
つまり、200㎡以下の用途変更であれば、原則として確認申請は不要となります。
② 類似用途への変更は確認申請不要
建築基準法施行令第137条の18に定める「類似用途」間での変更の場合は、面積に関わらず確認申請が不要です。
ただし、物販店舗から飲食店への変更などは類似用途とみなされないため注意が必要です
③ 確認申請の流れ
用途変更の確認申請が必要な場合、以下の流れで手続きを進めます。
⑴ 事前調査 : 建築士による法的要件の確認
⑵ 図面・申請書の作成 : 確認申請図面、確認申請書の作成
⑶ 確認申請の提出 : 建築主事または民間確認検査機関へ提出
⑷ 審査 : 建築基準法への適合性審査
⑸ 確認済証の交付 : 審査通過後、確認済証が交付される
⑹ 工事実施 : 確認済証交付後に着工可能
⑺ 完了届の提出 : 工事完了後4日以内に建築主事へ届出
重要 : 用途変更には完了検査がありませんが、完了届の提出が必要です。また、届出先は確認済証を交付した機関ではなく、所轄の建築主事となります。
3. シェアスペース運営に必要なその他の許認可
① 消防法への対応
不特定多数の人が利用するシェアスペースでは、消防法に基づく設備の設置が求められます。
• 避難経路の確保
• 消火設備の設置
• 火災報知器の設置
• 防火管理者の選任(収容人員によって必要)
消防設備の設置や変更には、着工7日前までに消防署への届出が必要です。
② 飲食提供を伴う場合の許可
シェアキッチンや飲食スペースとして利用する場合は、保健所への営業許可申請が必要です。
• 飲食店営業許可 : 保健所への申請
• 施設基準の確認 : 厨房設備、換気、排水処理など
• 食品取扱者資格 : 食品衛生責任者の設置
内装工事着手前に保健所へ事前相談することが推奨されます。
➡ 飲食店営業許可については「こちらの記事もおすすめ」
③ 宿泊を伴う場合の許可
宿泊目的でスペースを貸し出す場合は、以下のいずれかの許可・届出が必要です。
• 旅館業法に基づく許可(簡易宿所営業など)
• 住宅宿泊事業法に基づく届出(民泊)
地域の条例によって営業日数が制限される場合があるため、自治体への確認が必要です。
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4. 雪国特有の設備と管理上の注意点
① 暖房設備の確保
雪国でシェアスペースを運営する上で、十分な暖房能力の確保は必須です。
以下の点に注意が必要です。
• 暖房設備の種類選定 : 石油ストーブ、ガスファンヒーター、FF式ストーブなど、用途に応じた選択
• 24時間暖房の検討 : 夜間の凍結防止のため、一定温度を保つ必要がある
• 燃料費の負担 : 利用料金への反映方法の検討
• 換気設備の整備 : 一酸化炭素中毒防止のための換気計画
② 除雪対策と責任の所在
除雪は雪国のシェアスペース運営において最重要課題の一つです。
• 除雪責任の明確化 : 契約書で除雪責任の所在を明記する
• 除雪業者との契約 : 定期的な除雪サービスの手配
• 駐車場の除雪 : 利用者の車両アクセス確保
• 屋根雪対策 : 落雪による事故防止、雪止めの設置
除雪費用は季節変動が大きいため、冬季料金の設定や除雪費用の別途請求などの対応が必要です。
③ 水道管凍結防止
雪国では水道管の凍結は深刻な問題です。
• 水抜き設備の設置 : 長期不使用時の水抜き対応
• 凍結防止ヒーターの設置 : 配管への凍結防止装置
• 断熱材の施工 : 配管周辺の適切な断熱
• 利用者への使用方法の周知 : 水抜き方法の説明書作成
④ 短期貸しにおける季節変動への対応
雪国では夏季と冬季で利用ニーズが大きく異なるため、以下の工夫が求められます。
• 季節別料金プランの設定 : 繁忙期と閑散期の料金差別化
• 用途の季節変更 : 夏はワークスペース、冬はスキー客向けなど
• 長期契約と短期契約の組み合わせ : 安定収入と柔軟性の両立
• 冬季限定サービスの提供 : 雪かき道具の貸出、乾燥室の提供など
5. 南魚沼地域での支援制度と活用事例
① 南魚沼市の創業支援補助金
南魚沼市では、市内での創業を促進する補助金制度を設けています。
➡ 参考:南魚沼市「南魚沼市創業支援補助金」
【 対象者 】
• 市内に事業所を設け創業する個人または法人
• 創業支援セミナーを受講し、証明書の発行を受けた人
• 金融機関から資金借入れを行った、または行う人
【 補助対象経費 】
• 創業に必要な経費(設備費、備品費、改装費など)の一部を補助
【 活用のポイント 】
• シェアスペース開設の際、改装費用や設備購入費用として活用可能です。
ただし、申請前に創業支援セミナーの受講が必要となります。
② 南魚沼市チャレンジ支援事業補助金
新規事業の調査研究段階を支援する補助金も用意されています。
➡ 参考:南魚沼市「南魚沼市ビジネスチャレンジ補助金(チャレンジ支援事業補助金)」
【 対象事業 】
• 南魚沼市を拠点とした事業展開が見込めること
• 地域産業への波及効果が期待できること
【 補助対象経費 】
• 調査研究に必要な旅費、印刷費、賃借料、専門家謝金など
【 活用例 】
• 雪国型シェアスペースの需要調査、事業計画の策定、専門家によるコンサルティング費用などに活用できます。
③ 空き家バンク制度と連携
南魚沼市では空き家バンク制度も運営しており、空き店舗情報の入手に活用できます。
➡ 参考:南魚沼市「空き家バンク」
また、移住者向けの中古住宅リフォーム補助金なども用意されており、シェアスペース開設時の改修工事に活用できる可能性があります。
➡ 参考:南魚沼市「中古住宅リフォーム補助金」
➡ 空き家バンクについては「こちらの記事もおすすめ」
④ 想定される活用事例
南魚沼地域での雪国型シェアスペースの具体例として、以下が考えられます。
【 事例1 : スキー観光客向け短期利用スペース 】
• 駅近くの空き店舗を活用
• ロッカールーム、着替えスペース、乾燥室を完備
• 冬季のみの営業、1日単位の利用料金設定
• 除雪は業者に委託、暖房は常時稼働
【 事例2 : 農繁期対応型作業スペース 】
• 米の収穫・出荷時期に合わせた短期貸し
• 作業台、保管スペースを提供
• 農家グループでの共同利用
• 夏季は別用途(ワークスペースなど)に転用
【 事例3 : 地域交流型シェアキッチン 】
• 地元食材を使った料理教室
• 雪国伝統料理の体験スペース
• 飲食店営業許可を取得
• 時間単位での貸出と自主イベント開催の併用
6. 行政書士ができること・できないこと
空き店舗の雪国型シェアスペース転用において、行政書士がサポートできる業務範囲を正しく理解することが重要です。
〈 ✔ 行政書士ができること 〉
行政書士は、官公署に提出する書類の作成と手続き代行を業務としています。
【 具体的な業務内容 】
① 各種許認可申請の代行
• 飲食店営業許可申請
• 旅館業営業許可申請
• 消防設備等の設置届出
• その他必要な届出書類の作成・提出
② 契約書類の作成
• 賃貸借契約書
• 利用規約
• 利用者との契約書
• 除雪業者との委託契約書
③ 補助金申請のサポート
• 創業支援補助金の申請書作成
• チャレンジ支援事業補助金の申請書作成
• 必要書類の収集・整理
④ 法的相談・アドバイス
• 許認可要否の判断サポート
• 法令遵守のためのアドバイス
• 手続きの流れや必要書類の説明
〈 ✖ 行政書士ができないこと 〉
以下の業務は行政書士の業務範囲外となります。
① 登記申請業務
• 建物の登記変更は司法書士の業務
• 行政書士は登記申請を代行できません
② 建築確認申請の設計図書作成
• 用途変更の確認申請に必要な設計図面の作成は建築士の業務
• 行政書士は設計図面の作成は行えません
③ 税務関連業務
• 確定申告や税務相談は税理士の業務
• 行政書士は税務申告を代行できません
④ 紛争代理業務
• 利用者とのトラブル対応における法的代理は弁護士の業務
• 訴訟代理や交渉代理は行政書士には認められていません
〈 他士業との連携 〉
複雑な案件では、複数の専門家と連携してサポートすることが一般的です。
• 建築士 : 用途変更の確認申請図面作成、建築基準法への適合確認
• 司法書士 : 不動産登記、建物所有権の確認
• 税理士 : 事業計画の税務面サポート、開業後の税務申告
• 弁護士 : 契約書のリーガルチェック、トラブル発生時の対応
• 行政書士 : 各種許認可申請、契約書作成、補助金申請
ワンストップサービスを提供できる事務所を選ぶことで、スムーズな手続きが可能となります。
7. よくある質問(FAQ)
Q1. 200㎡以下なら何も手続きは不要ですか?
A. いいえ、そうではありません。
用途変更の確認申請は原則不要ですが、建築基準法への適合は必須です。
また、消防法、保健所の許可など、他の法令に基づく手続きは別途必要です。
Q2. 既に営業している店舗からシェアスペースへの変更は用途変更に該当しますか?
A. はい、該当する可能性が高いです。
例えば「物販店舗」から「不特定多数が利用するシェアスペース(集会場に類する用途)」への変更は、建築基準法上の用途変更となります。
事前に建築士や行政窓口に相談することをお勧めします。
Q3. 冬季のみの営業でも許可は必要ですか?
A. はい、営業期間に関わらず必要な許可は取得しなければなりません。
ただし、季節営業である旨を申請書に記載し、休業期間中の管理方法を明確にすることが重要です。
Q4. 除雪費用は誰が負担すべきですか?
A. 契約内容によって異なります。一般的には以下のパターンがあります。
• オーナー負担で利用料金に含める
• 利用者負担として別途請求
• 共益費として定額を徴収
• 実費精算方式
契約書で明確に定めることが重要です。
Q5. 補助金申請は自分でもできますか?
A. 可能ですが、申請書類の作成や事業計画書の策定には専門知識が必要です。
行政書士に依頼することで、採択率の向上や手続きの円滑化が期待できます。
Q6. 用途変更と同時に建物の増築もしたい場合は?
A. 用途変更と増築は別々の確認申請が必要です。
また、増築の場合は完了検査も必要となります。
建築士と相談の上、計画的に進めることをお勧めします。
Q7. 既存不適格建築物でも用途変更できますか?
A. 可能ですが、一定の緩和規定が適用される一方、新たな規制も適用されます。
建築士による詳細な調査が必須です。
違反建築物の場合は、まず是正が必要となります。
8. 今後想定される課題と解決案
空き店舗を雪国型シェアスペースとして活用する取り組みは、地域活性化の観点から大きな期待を集めていますが、実現に向けてはいくつかの課題が存在します。
ここでは、今後想定される主要な課題とその解決案について記載します。
① 空き店舗マッチングの課題
【 課題 】
• 空き店舗情報の不足
• オーナーと利用希望者のミスマッチ
• 仲介・相談窓口の不足
【 解決案 】
• 自治体の空き店舗バンク活用
• 地域商工会との連携
• オンラインマッチングサービスの利用
• 行政書士による相談窓口の開設
② 雪国特有のコスト負担
【 課題 】
• 除雪費用の高額化
• 暖房費の季節変動
• 設備維持コストの増大
【 解決案 】
• 季節別料金制度の導入
• 複数用途での通年活用
• 共同運営による費用分担
• 補助金・助成金の積極活用
③ 法規制への対応
【 課題 】
• 複雑な許認可手続き
• 法令の頻繁な改正
• 自治体ごとの規制の違い
【 解決案 】
• 専門家(行政書士、建築士等)への早期相談
• 着工前の十分な調査期間確保
• 定期的な法令確認
• 行政との事前協議の実施
④ 持続可能な運営体制
【 課題 】
• 利用率の季節変動
• 管理人員の確保
• 長期的な収益性
【 解決案 】
• 複合的な用途設定(コワーキング+イベント+宿泊など)
• IT技術活用による無人管理
• 地域コミュニティとの連携
• 段階的な事業拡大
9. まとめ:成功への道筋
空き店舗を雪国型シェアスペースに転用することは、地域活性化と新たなビジネスチャンスの創出につながる有望な取り組みです。
しかし、成功のためには以下のポイントが重要です。
〈 成功のための5つのステップ 〉
【 ステップ1 : 綿密な事前調査 】
• 市場調査と需要分析
• 建物の現状確認(既存不適格の有無など)
• 必要な許認可の洗い出し
【 ステップ2 : 専門家チームの構築 】
• 建築士 : 用途変更の設計・確認申請
• 行政書士 : 許認可申請・契約書作成
• 税理士 : 事業計画・税務対応
• 必要に応じて弁護士、司法書士
【 ステップ3 : 資金計画と補助金活用 】
• 初期投資の見積もり
• 南魚沼市創業支援補助金の活用
• 金融機関からの融資検討
【 ステップ4 : 法的手続きの完遂 】
• 用途変更の確認申請(必要な場合)
• 各種許認可の取得
• 消防・保健所等への届出
【 ステップ5 : 雪国対応の運営体制確立 】
• 除雪体制の整備
• 暖房設備の最適化
• 季節変動に対応した料金・運営プラン
空き店舗の雪国型シェアスペース転用は、法的手続きが複雑で専門知識が必要です。
まずはお気軽に行政書士などの専門家へご相談ください。
あなたの雪国型シェアスペース開設を、法的側面から全面的にサポートいたします。
参考・出典
• 南魚沼市「南魚沼市創業支援補助金」
• 南魚沼市「南魚沼市ビジネスチャレンジ補助金(チャレンジ支援事業補助金)」
• 南魚沼市「空き家バンク」
• 南魚沼市「中古住宅リフォーム補助金」
• 南魚沼市「支援・補助」一覧
• 南魚沼市「住宅」住宅に関する補助金等一覧
• 総務省「行政書士制度」
• 日本行政書士会連合会「行政書士とは」
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