「親から相続した実家が雪で潰れそう」
「隣の空き家から木が伸びてきて困っている」
「所有者が海外にいて連絡がつかない土地がある」
このようなお悩みを抱えている方が、南魚沼市を含む新潟県内で急増しています。
2024年4月の相続登記義務化、そして2023年4月に新設された「管理不全土地・建物管理制度」により、不動産を取り巻く法律は大きな転換期を迎えました。
放置すれば最大10万円の過料や損害賠償のリスクがある一方、適切に対処すれば「負の遺産」を「安心」へと変えることができます。
本記事では、相続や不動産管理でお悩みの方に向けて、管理不全物件の対処法を日本人・外国人所有者別に詳しく解説します。
南魚沼地域特有の豪雪対策や、行政書士が実際に行う調査実務まで、実践的な情報をお届けします。
1. 管理不全土地・建物とは? 放置のリスクを知る
① 管理不全の状態とは
管理不全土地・建物とは、所有者による管理が適切に行われず、荒廃・老朽化等によって周囲に危険を生じさせている不動産のことです。
【 建物の場合 】
• 屋根や外壁が剥落している
• 窓ガラスが割れたまま放置されている
• 構造が腐朽して倒壊の恐れがある
• ゴミが放置され、悪臭や害虫が発生している
【 土地の場合 】
• 雑草や樹木が繁茂し、隣地に侵入している
• 不法投棄の温床になっている
• 擁壁にひび割れ・破損が生じている
• 害虫(ハチ、シロアリ等)が発生している
➡ 参考:法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」
② 放置が招く「4つの重大リスク」
【 損害賠償責任(工作物責任) 】
民法第717条により、建物の管理に瑕疵(欠陥)があって他人に損害を与えた場合、所有者は「無過失責任」を負います。
これは、所有者に過失がなくても責任を問われるという厳しいルールです。
例えば、雪の重みで屋根が崩れ、隣家を破壊したり通行人に怪我をさせた場合、数千万円単位の賠償請求を受ける可能性があります。
【 固定資産税の激増(特定空家制度) 】
「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、市町村から「特定空家」に指定されると、住宅用地の特例(固定資産税の優遇)が解除されます。
結果として、税金が最大6倍に跳ね上がることがあります。
➡ 参考:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」
➡ 空き家問題については「こちらの記事もおすすめ」
【 行政代執行による強制解体 】
倒壊の危険が差し迫っている場合、市役所が強制的に解体を行う「行政代執行」が実施されます。
その費用は後日、所有者に全額請求されます。
解体費用は年々高騰しており、一般的な住宅でも100万円~200万円以上かかることが珍しくありません。
【 相続登記義務化による過料(罰金) 】
2024年4月より、相続を知った日から3年以内に登記をしないと、10万円以下の過料の対象となります。
これは新しい制度であり、今後実際に過料が課されるケースが出てくると予想されています。
➡ 参考:法務省「相続登記の義務化について」
➡ 相続登記義務化については「こちらの記事もおすすめ」
2. 【日本人所有者向け】 複雑な相続問題の解決策
日本人の場合、管理不全の最大の原因は「相続」の放置です。
① 深刻な「数珠つなぎ相続」の実態
南魚沼市をはじめとする地方の古い集落では、明治・大正時代から名義が変わっておらず、相続人が100人を超えているケースも珍しくありません。
一人の同意を得るのにも数ヶ月かかり、その間に別の相続人が亡くなってさらに枝分かれする「負のループ」に陥っています。
② 行政書士による「家系図調査」の実務
行政書士は、これらの「迷宮入り」した所有者を特定するため、以下のプロセスを踏みます。
【 明治・大正期の「原戸籍」の解読 】
達筆な手書き文字を読み解き、隠れた相続人を見つけ出します。
【 職務上請求 】
正当な理由に基づき、全国から戸籍を収集します。
行政書士は法律上、職務上請求書を使用して戸籍謄本等を取得できる権限を持っています。
【 戸籍の附票調査 】
住所の変遷を追い、現在の居所を特定します。
③ 相続土地国庫帰属制度の活用
「管理できない土地を国に返す」ことができる制度が、2023年4月27日からスタートしました。
【 費用の内訳 】
• 審査手数料: 1筆あたり14,000円
• 負担金(10年分の管理費相当額):
宅地(市街化区域外):約20万円
田・畑(農地):約20万円~(面積により変動)
山林:面積に応じて約20万円~
※境界の確定にかかる測量費用が別途必要になる点に注意が必要です。
➡ 参考:法務省「相続土地国庫帰属制度について」
➡ 相続土地国庫帰属制度については「こちらの記事もおすすめ」
④ 遺産分割協議書の作成
相続人全員の合意を法的に有効な書面にまとめる「遺産分割協議書」の作成は、行政書士の重要な業務の一つです。
相続人が遠方にいる場合や、多数に及ぶ場合でも、丁寧な説明と調整を行います。
➡ 遺産分割協議書については「こちらの記事もおすすめ」
3. 【外国人所有者向け】 国境を越えた不動産トラブル対策
南魚沼市や湯沢エリアのリゾート物件には、外国人所有者の不動産が少なくありません。
これらには特有の課題があります。
① 外国人所有者特有の「3つの壁」
【 「住所」の壁 】
海外には日本のような住民票システムがない国が多く、登記簿上の住所から転居されると追跡が極めて困難になります。
【 「法律」の壁(準拠法) 】
所有者が亡くなった場合、その国の法律(例:中国法、韓国法、アメリカ州法等)に従って相続人を決める必要があります。
国ごとに相続のルールが異なるため、専門的な知識が必要です。
【 「言葉と文化」の壁 】
日本の「豪雪リスク」や「固定資産税の義務」を正しく理解していないケースが多く、悪意なく放置されている場合もあります。
② 所有者の居所を特定するための「高度な調査」
行政書士は、海外居住者に対しても以下のようなアプローチを試みます。
【 納税管理人の照会 】
役所に届け出られている納税管理人がいれば、そこを窓口に調査・交渉を開始します。
【 各種記録の調査 】
登記簿、固定資産税の納税記録、過去の郵便物の転送先などから手がかりを探ります。
③ 連絡が取れない場合の「法的解決策」
もし連絡が取れなくても、2023年4月から施行された新制度を活用すれば道が開けます。
【 所有者不明土地・建物管理命令 】
裁判所が選任した管理人が、所有者に代わって売却や取り壊しの判断を下します。
この制度により、所有者と連絡が取れなくても、適切な管理や処分が可能になりました。
➡ 参考:裁判所PDF「所有者不明土地管理命令等の申立てについてQ&A」
➡ 所有者不明土地・建物問題については「こちらの記事もおすすめ」
【 管理不全土地・建物管理命令 】
所有者の所在が判明していても、適切な管理がなされず、隣地などに悪影響を及ぼしている場合、利害関係人(隣地所有者など)が裁判所に申し立て、管理人を選任してもらうことができます。
管理人は、裁判所の許可を得れば、土地・建物の売却や建物の取り壊しなども行うことができます(ただし、所有者の同意が必要)。
➡ 参考:裁判所PDF「管理不全土地・建物管理命令について(汎用)」
4. 南魚沼市における具体的な問題と支援制度
南魚沼市ならではの課題と、利用できる支援制度をご紹介します。
① 豪雪による「倒壊スピード」と賠償リスク
南魚沼市の積雪は3メートルを超えることもあり、空き家にとっては致命的です。
「空き家を壊す金がないから放置する」という選択は、倒壊後に隣家を破壊し、解体費用以上の損害賠償を支払うリスクを抱えることと同義です。
豪雪地では、ひと冬、人が住まず放置すると、危険な「特定空き家」になる可能性が高いとされています。
② 南魚沼市の空き家支援制度
南魚沼市では、空き家問題に対応するため、以下の支援制度を用意しています。
【 南魚沼市空家等除却事業補助金 】
危険な空き家の解体費用の一部を補助する制度です。
2023年7月から、人が住まなくなった建物であれば状態は問わず対象となる南魚沼市独自の制度が始まりました。
• 対象建物: 専用住宅または併用住宅(延べ床面積の半分以上が居住用)
• 対象区域: 居住誘導区域内
• 注意点: 相続により取得した空家の場合は、条件によって必要書類が異なります
➡ 参考:南魚沼市「南魚沼市空家等除却事業補助金」
【 空き家バンク制度 】
南魚沼市では空き家バンクを運営しており、使用していない住宅の売買や賃貸による活用を支援しています。
• 登録費用: 無料(ただし、必要書類の取得費用や仲介手数料は別途発生)
• 登録期間: 2年間(再登録可能)
➡ 参考:南魚沼市「空き家バンク」
【 その他の支援制度 】
• U・Iターン促進住宅支援事業補助金
• 中古住宅リフォーム補助金 など
③ リゾートマンションの「管理費滞納問題」
バブル期に建設されたリゾートマンションでは、所有者が外国人に移り、管理費や修繕積立金が数百万単位で滞納されている例があります。
管理組合からの相談も多く、滞納者(外国人含む)の特定や、法的措置への橋渡しが必要となります。
④ 消雪パイプ・除雪費用の分担トラブル
管理不全の土地があることで、町内の消雪パイプの維持管理費や除雪費用が他世帯に重くのしかかるケースがあります。
これは地域コミュニティの崩壊を招くため、早期の権利関係整理が必要です。
5. 行政書士にできること・できないこと
〈 ✔ 行政書士が担当する具体的な業務 〉
① 徹底的な相続人調査
複雑な戸籍収集を代行し、すべての相続人を特定します。
② 行政への計画書提出
「特定空家」の指定を避けるための管理計画を策定し、市町村に提出します。
③ 遺産分割協議書の作成
相続人全員の合意を法的に有効な書面にまとめます。
④ 相続土地国庫帰属制度の申請書類作成
制度を利用する際の複雑な申請書類を作成します。
専門家に依頼する場合の費用相場は、10万円~30万円程度です。
⑤ 農地転用・開発許可
土地活用のための行政手続きを代行します。
⑥ 公的書類の翻訳・認証
外国人所有者とのやり取りに必要な書類を整えます。
【 他士業との連携 】
• 司法書士: 調査後の「登記」そのものは司法書士が行います。
• 弁護士: 相続人同士で激しい争い(裁判)になっている場合は弁護士が担当します。
また、管理不全土地・建物管理命令の申立ても弁護士が行います。
• 税理士: 譲渡所得税等の計算は税理士が担当します。
• 土地家屋調査士: 境界確定測量は土地家屋調査士が担当します。
〈 ✖ 行政書士ができないこと 〉
• 登記申請の代理: 司法書士の専門業務です
• 裁判の代理: 弁護士の専門業務です
• 税務申告: 税理士の専門業務です
6. よくある質問(FAQ)
Q1. 親が亡くなり、実家が放置状態です。まず何をすればいいですか?
A. まずは「現状の確認」と「名義の確認」です。
① 登記簿謄本を取得し、誰の名義になっているか調べましょう(法務局で取得可能)
② 固定資産税の納税通知書を確認し、現在の税額を把握しましょう
③ 建物の状態を写真で記録しておきましょう
④ 相続人が誰なのかを確認しましょう
迷ったらすぐに行政書士などの専門家へご相談ください。
Q2. 隣の空き家から木が伸びてきています。勝手に切れますか?
A. 民法改正により、一定の条件を満たせば可能になりました。
2023年4月1日施行の改正民法233条3項により、以下の場合は越境してきた枝を自分で切り取ることができます。
① 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したが、相当の期間内に切除しない場合
② 竹木の所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができない場合
③ 急迫の事情がある場合
ただし、トラブルを避けるため、事前に専門家に相談することをお勧めします。
Q3. 相続土地国庫帰属制度を利用できない土地はありますか?
A. はい、以下のような土地は対象外となります。
• 建物がある土地
• 担保権が設定されている土地
• 境界が明らかでない土地
• 崖がある土地
• 土壌汚染がある土地
• 隣地との争いがある土地
詳細は法務省「相続土地国庫帰属制度について」でご確認ください。
Q4. 相続放棄をすれば管理責任はなくなりますか?
A. いいえ、管理責任は残ります。
相続放棄をしても、「相続財産の管理」は引き続き必要です(民法940条)。
次の相続人や相続財産清算人が管理を始めるまでは、放棄した人も管理義務を負います。
単純に「いらないから放棄する」だけでは問題は解決しません。専門家にご相談ください。
Q5. 行政書士への依頼費用はどのくらいかかりますか?
A. 業務内容により異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。
• 相続人調査(戸籍収集): 5万円~15万円
• 遺産分割協議書作成: 5万円~10万円
• 相続土地国庫帰属制度の申請書類作成: 10万円~30万円
• 複合的な業務: 20万円~50万円
※事務所や案件の複雑さにより異なります。相談時に見積もりを取得しましょう。
7. まとめ:専門家への相談が最善の一歩
管理不全土地・建物の問題は、南魚沼市という美しい地域を守るための大きな課題です。
豪雪地の冬は容赦ありません。
春になって「家が潰れていた」と絶望する前に、今できる対策を打ちましょう。
〈 今後の課題と解決案 〉
【 今後予想される課題 】
• 登記義務化の罰則適用の本格化: 2024年4月から施行されており、今後は実際に10万円以下の過料が課されるケースが増えると予想されます
• 解体費用の高騰: 人手不足と産廃費用の値上がりにより、解体コストは年々上昇しています
• 所有者不明土地のさらなる増加: 高齢化と人口減少により、問題はさらに深刻化する見込みです
【 解決案 】
① 「終活」としての不動産整理: 元気なうちに、子供たちに負債を継がせないよう不動産を整理しましょう
② 空き家バンクの活用: 南魚沼市も空き家バンクを運営しています。リフォーム補助金が出る場合もあります
③ 専門家への早期相談: 「まだ大丈夫」が、取り返しのつかない事態を招きます
南魚沼市の管理不全土地・建物のお悩みは、行政書士などの専門家へご相談ください。
あなたの不安を安心に変えるお手伝いをいたします。
出典・参考
• 法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」
• 法務省「相続土地国庫帰属制度について」
• 法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」
• 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」
• 裁判所PDF「所有者不明土地管理命令等の申立てについてQ&A」
• 裁判所PDF「管理不全土地・建物管理命令について(汎用)」
• 南魚沼市「南魚沼市空家等除却事業補助金」
• 南魚沼市「空き家バンク」
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