相続が発生すると、「誰が何を相続するのか」を決める必要があります。
法的には相続財産は一旦相続人全員の共有になりますが、実務では不動産の名義変更や金融機関での払戻しなどを進めるため、相続人全員の合意を文書にまとめた「遺産分割協議書」が重要になります。
本記事では遺産分割協議書についての疑問を、最新の法令・公的ガイドラインに基づき、分かりやすく解説します。
1.「遺産分割協議書」とは?
遺産分割協議書とは、相続人全員が合意した遺産の分け方(誰が何を取得するか)を文書にしたものです。
協議が成立すれば、その合意内容に基づき各相続人は遺産を取得したものと扱われます。
この書面は、後々の争いを防ぐだけでなく、不動産の相続登記や金融機関の手続きで実務的に必要とされます。
2.どんなときに遺産分割協議を行うのか?
次のような場合、遺産分割協議が必要になります(典型例)。
① 遺言書がないとき
遺産の分け方を定めた遺言書がなければ、法定相続人全員で話し合い、分け方を決める必要があります。
② 遺言書があっても、記載されていない財産があるとき
遺言書に不動産しか書かれていない…よくあるケースです。
その場合、記載のない財産については相続人同士で協議を行います。
③ 遺産の分け方に特別な事情があるとき
・ 相続人の一人が多く介護した
・ 事業を継いでいる人がいる
・ 相続人の数が多い
など、法定割合では現実に合わないケースも多く、協議が必要になります。
また、遺言がある場合でも、相続人全員の合意があれば遺言の内容と異なる分割を行うことができます(合意があれば法律上は可能です)。
3.遺産分割協議書が必要とされる主な状況
遺産分割協議書作成について、行政書士の実務で特に多いのは以下の場合です。
① 不動産の相続登記に必要な遺産分割協議書作成
遺産分割協議書は、不動産を取得した相続人が登記申請を行う際の主要な証明書類になります。
2024年4月から相続登記は「3年以内」の申請義務化が始まっており、遺産分割が完了したら登記手続を速やかに進める必要があります(遺産分割協議書がないと登記ができないケースが多い)。
※登記手続きは司法書士の職域であり、行政書士が扱えるのは登記の際に必要となる遺産分割協議書の作成です。
② 金融機関での払戻しに必要な遺産分割協議書作成
預貯金の払戻しや名義変更を行う際、金融機関は遺産分割協議書の提出(および相続人全員の印鑑証明等)を求めることが一般的です。
金融機関の対応は各行で差がありますが、協議書を準備しておくと手続がスムーズです。
③ 自動車・株式などの移転に必要な遺産分割協議書作成
実務上、名義変更や譲渡のために協議書が必要になることが多いです。
④ 相続税申告との関係
相続税申告(原則10ヶ月)やその他の期限と関連する場合は、分割内容を確定させる必要があります(※遺産分割そのものに法定期限はありませんが、関連手続きに期限があります)。
※相続税の申告手続きは税理士の職域であり、行政書士が扱えるのは相続税申告の際に必要となる遺産分割協議書の作成です。
4.なぜ遺産分割協議書が必要なのか?
遺産分割協議書の作成は、「トラブル予防+実務的手続」を進めるために不可です。
具体的な理由を以下に記載します。
① 相続人全員が合意した証拠として残せる(法的安定性)
相続人同士が良好な関係でも、後になって
• 「そんな話は聞いていない」
とトラブルになることは実務上よくあります。
協議書には、
• 「誰がどの財産を取得するか」
• 「取得した後の管理や費用負担」
などを整理して書くことができ、相続トラブルの予防に大きく役立ちます。
② 公的手続きで必ず求められる(手続き要件)
法務局・銀行・証券会社はいずれも、口頭の合意では手続きを進めてくれません。
文書がなければ、ほとんどの相続手続きが止まってしまいます。
③ 期限対応
相続登記の義務化(3年)や相続税等の期限に備えるため、早めに協議書を整えることが安心です。
5.遺産分割協議書作成の流れ
行政書士が実際に行う作成手順を、わかりやすくご紹介します。
ステップ①:相続人の確定と財産の洗い出し
まず戸籍類で相続人を確定し、預貯金、不動産、株式、保険、その他の権利をリストアップします(相続人調査、名寄せ作業)。
ステップ②:話し合い(協議)の実施
相続人全員で分け方を話し合います。
合意に至らない場合は家庭裁判所の調停・審判手続に移行することになります(民法907条)。
ステップ③:協議書の起案(文案作成)
合意内容を具体的に文章化します(取得財産の特定・割合・代償金の取り決め・税負担・寄与分の扱い等)。
不動産を特定する際は住所・地番や登記事項を正確に記載する必要があります。
法務局の雛形を参考にすると実務上便利です。
ステップ④:署名・押印と印鑑証明の取得
協議書には相続人全員の署名(実印が求められる場合あり)と、それぞれの印鑑証明書(金融機関や登記のために必要)を添付します。
法務局が推奨する書式と添付書類を確認しましょう。
ステップ⑤:必要機関への提出または関係者への提示
• 不動産の名義変更(登記)は司法書士と連携して行うケースが一般的です(登記自体は司法書士の業務)。
ただし、遺産分割協議書の作成や書類収集は行政書士が得意分野です。
• 銀行・証券・自動車登録などへ協議書を提出して名義変更・払い戻し手続きを進めます。
6.実務でよくある注意点(トラブル回避)
• 相続人全員の同意が必須
一部の相続人を除外した協議は無効になる危険があります(全員の同意を得ること)。
• 印鑑証明の期限
金融機関や法務局で求められる印鑑証明の形式・取得時期は機関によって異なるため、事前確認が重要です。
• 遺言の存在確認
遺言があると分割方法が優先される場合があります。ただし相続人全員の合意があれば変更可能です。
• 相続登記の期限に注意
不動産を取得した事実を「知った日」から3年以内に登記が義務化されています(正当な理由なく怠ると過料の可能性)。遺産分割が長引くと登記の起算点にも影響します(登記は司法書士の業務です)。
7.行政書士が遺産分割協議書を作成するメリット
「自分で作れるけど、行政書士に頼むとここが違います」
① 書式・文言の正確性
法務局や金融機関で受理されやすい書き方を熟知しているため、補正や差戻しを減らせます。
② 戸籍・名寄せの代行
相続人の確定(戸籍収集)や財産の名寄せは手間がかかる作業です。
行政書士に任せれば短期間で正確にまとまります。
③ 関係士業との連携
登記(司法書士)や相続税(税理士)が絡む場合、窓口調整や書類の橋渡しをワンストップで行えます。
④ 争いになりそうなケースの事前チェック
寄与分・特別受益など、後で争いになりやすい要素を事前に整理し、合意が取りやすい文案を作成します。
⑤ 委任による代理作業
委任状をいただければ、戸籍収集や各種申請書類の提出など、行政手続の代行・相談を行えます(ただし不動産登記の申請は司法書士の業務となる点はご注意ください)。
8.よくあるQ&A
Q:遺産分割協議書は自分で作れますか?
A:はい。
法務局の雛形も公開されています。
ただし実務上は記載ミスや添付不足で手続きが止まることが多く、特に不動産や多種類の財産がある場合は専門家に任せることをおすすめします。
Q:期限はありますか?
A:遺産分割自体に厳格な期限はありませんが、相続登記(不動産)には3年の登記義務化、相続税申告は10か月など、関係する手続きには期限があります。早めの対応が安心です。
9.まとめ — まず何をすればよいか
① まずは被相続人の戸籍を取得し、相続人を確定しましょう。
② 財産目録を作成して、どの財産を誰が引き継ぐか大まかに話し合ってください。
③ 話がまとまったら、遺産分割協議書を作成し、相続人全員の署名・実印押印と印鑑証明を揃えておきましょう。
登記や金融機関対応が必要なら、行政書士・司法書士・税理士と連携して進めると確実です。
遺産分割協議書の作成・相続人調査・関係書類の収集は、手続きが煩雑になりやすく、些細な書き方でトラブルや手続遅延が生じがちです。
行政書士は、戸籍収集から協議書の起案、必要書類の整理・各関係機関への案内までワンストップでサポートいたします(登記が必要な場合は信頼する司法書士と連携します)。
まずは初回相談で現状をお聞かせください。
専門家が具体的に進め方をご提案します。
参考(主な出典)
法務省:「不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう」
法務局:「遺産分割協議書(記載例・雛形)」PDF(登記申請の実務上の注意点)
e-Gov(法令検索) 民法(相続に関する規定:第898条・第907条 等)
法務省:相続登記の申請義務化(2024年4月施行、3年ルールに関するQ&A)
日本行政書士会連合会:「行政書士の業務」
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※本記事は令和7年11月時点に入手可能な公的情報をもとにしています。年度によって制度内容が変更されている可能性があります。必ず最新の法改正情報などでご確認ください。