〈 はじめに:インバウンド需要に応えるための外国人雇用とその課題 〉
新潟県南魚沼市や湯沢町など、日本有数の豪雪地帯を抱えるスノーリゾート地域では、インバウンド観光客の増加に伴い、英語・中国語などの多言語対応ができる外国人スキー場スタッフの需要が年々高まっています。
実際に、湯沢町では海外からのスキー客が増加しており、アクセスの良さから毎年多くの訪日外国人が訪れています。
このような背景から、スキー場運営会社や宿泊施設では外国人スタッフの雇用を検討するケースが増えています。
しかし、「雇用契約を結んだのに在留資格(ビザ)申請が不許可になってしまった」という相談が後を絶ちません。
シーズン直前になって人員確保ができず、インバウンド需要に対応できないという事態も発生しています。
本記事では、行政書士の視点から、外国人スキー場スタッフの在留資格申請が不許可になる主な理由を徹底解説し、南魚沼・湯沢エリアで想定されるケースを交えながら、確実な雇用を実現するためのステップをご提案します。
1. 外国人スキー場スタッフの在留資格申請が「不許可」になる主な理由
出入国在留管理庁(入管)から不許可通知が届く理由は、大きく分けて以下の3つのパターンに集約されます。
① 業務内容と在留資格の「ミスマッチ」(単純労働とみなされるケース)
これが最も多い不許可理由です。
例えば、「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の在留資格で申請しながら、実際の業務内容が以下のような場合、入管は「単純労働」と判断し、許可を出しません。
【 単純労働とみなされる業務例 】
• 索道(リフト)の係員
• レンタルショップでの貸出業務のみ
• スキー場内レストランのホール・皿洗い
• 駐車場の誘導・除雪作業
「技術・人文知識・国際業務」は、本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動を対象としています。
つまり、大学卒業程度の専門知識や、翻訳・通訳といった国際業務に関する専門性を活かすための資格であり、スキー場のフロント業務であっても、「ほとんどの時間がレンタル品のサイズ合わせや雪かきである」と判断されると、学歴や職歴との関連性が認められず、不許可となります。
【 重要なポイント 】
業務内容の大半(概ね50%以上)が専門性を必要としない作業である場合、たとえ一部に通訳業務が含まれていても不許可になるリスクが高まります。
➡ 参考:出入国在留管理庁「技術・人文知識・国際業務」
② 「短期雇用」による継続性・安定性の欠如
スキー場は季節営業(シーズン営業)が基本です。
しかし、就労を目的とした在留資格は、原則として継続的・安定的な雇用を前提としています。
「冬の3ヶ月間だけ雇いたい」という短期契約の場合、以下の理由から不許可になる確率が高まります。
【 短期雇用が不許可になる理由 】
⑴ 給与の支払い能力への疑問
雪がない時期の給与はどうするのか?オフシーズンの雇用計画が不明確
⑵ 在留の安定性に対する懸念
3ヶ月で帰国するなら、そもそも就労ビザではなく「短期滞在」や「ワーキングホリデー」で対応すべきではないか?
⑶ 雇用契約の実態への不信
本当に継続的に雇用する意思があるのか、書類上だけの契約ではないか?
【 対策:通年雇用の計画が重要 】
南魚沼地域には県内のおよそ4割のスキー場があり、多様な観光資源を持つこの地域では、冬季以外の雇用計画を明確に示すことが不許可回避の鍵となります。
③ 申請内容の矛盾と立証不足
雇用理由書において、「なぜこの外国人でなければならないのか」という説明が不十分なケースです。
【 不許可につながる説明の例 】
• 「人手が足りないから」→ これは不許可への近道です
• 「日本人が集まらないから」→ 外国人を補完要員として扱う姿勢とみなされます
• 「安い賃金で働いてくれるから」→ 入管法の趣旨に反します
【 許可につながる説明の例 】
• 「海外客への母国語対応が必要で、英語圏出身のこの人材でなければ対応できない」
• 「国際的なマーケティング戦略に不可欠で、その国の文化・商習慣に精通したこの人物が必須」
• 「大学で観光学を専攻し、その専門知識を活かして外国人客向けのツアー企画を担当させる」
入管は、その個人の専門性を活用する具体的な計画を求めています。
単なる「人手不足の解消」という理由では、許可は得られません。
2. スキー場スタッフが取得すべき「適切な」在留資格とは?
不許可を避けるためには、まず「どの在留資格で申請するか」を正しく選定する必要があります。
| 在留資格 | 主な対象業務 | 必要な要件(例) | 職種制限 |
| 特定活動(50号) スキーインストラクター | スキーの指導業務 | SIA(日本プロスキー教師協会)認定資格など | 指導業務のみ (リフト係等は不可) |
| 技術・人文知識・国際業務 | 通訳、翻訳、広報、予約管理、外国人客対応 | 大学卒業 or 10年以上の実務経験 | 単純労働は不可 |
| 特定技能(外食・宿泊) | レストラン、ホテルのマルチタスク業務 | 技能試験・日本語試験の合格 | 幅広い業務が可能 |
| ワーキングホリデー | 全般(単純労働を含む) | 協定国籍、年齢制限(18〜30歳)、休暇目的 | 期間限定(最長1年) 更新不可 |
① 特定活動(スキーインストラクター)について
2020年から新設された「特定活動(告示50号:スキーインストラクター)」は、スキーの資格をもつ外国人が、日本の公私の機関との契約に基づいてスキーの指導に従事することを認める在留資格です。
【 取得要件 】
• 公益社団法人日本プロスキー教師協会(SIA)が認定するアルペンスキー・ステージI〜IVのいずれかの資格を有していること
• または、SIAが同等以上と認めるスキーの指導に関する資格
【 重要な注意点 】
この資格はスキー指導業務に特化しています。
入国後の職務内容は、当然にスキーの指導でない場合は申請が不許可になる可能性が高いとされており、リフト係やレンタル業務などの付帯業務は原則として認められません。
➡ 参考:出入国在留管理庁「特定活動(スキーインストラクター)」
➡ 参考:「公益社団法人 日本プロスキー教師協会」(SIA)
② 特定技能(宿泊・外食)の活用
近年、スキー場に併設された宿泊施設や飲食施設では、「特定技能」の活用が注目されています。
【 特定技能(宿泊)の場合 】
宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客及びレストランサービス等の宿泊サービスの提供に係る業務に従事する外国人材の受入れが可能とされており、ホテルのフロント業務だけでなく、付随する清掃やレストランでの配膳など、幅広い業務に従事可能です。
【 特定技能(外食)の場合 】
レストランや居酒屋などの飲食店での、調理、接客、店舗管理など基本的にどんな業務もできます。
ただし、ホテル内のレストランで調理や接客、配膳の業務をすることも可能です。
しかし、ホテル内のベッドメイキングや受付業務は行えないので注意が必要です。
➡ 参考:出入国在留管理庁「特定技能制度」
3. 南魚沼・湯沢エリアでの想定例と注意点
新潟県南魚沼地域には県内のおよそ4割のスキー場があり、世界でも有数の豪雪地帯であり、湯沢には毎年多くの外国人スキー客が訪れ、基礎の滑り方やリフトの乗り降りを教えてくれるレッスンの需要は高い状況です。
この地域特有の課題と対策を見てみましょう。
〈 想定例:多言語通訳として雇用したが、実態は「雪かき中心」? 〉
南魚沼のあるスキー場では、中国語圏の顧客対応のために「技術・人文知識・国際業務」で外国人を雇用しました。
申請書類では「フロント業務・通訳」と記載していました。
しかし、実際の業務記録を確認すると、
• 業務時間の60%以上が除雪作業とコース整備
• 通訳業務は1日1〜2時間程度
• 残りの時間はレンタル用品の整理と清掃
次回の在留期間更新時に、「実態が申請内容と異なる」として不許可となり、本人は帰国を余儀なくされました。
【 この想定例から学ぶべきポイント 】
① 申請書類と実態は必ず一致させる
② 業務時間の配分を明確に記録する
③ 専門業務が全体の50%以上を占める必要がある
〈 解決策:「特定技能(宿泊)」の活用例 〉
この地域では、「特定技能(宿泊)」を活用する動きが加速しています。
【 成功例 】
南魚沼のあるリゾートホテルでは、特定技能(宿泊)で外国人スタッフを雇用し、以下の業務を担当させています。
• 冬季:フロント業務、レストラン配膳、客室清掃、スキー場案内カウンター
• 春〜秋季:登山・トレッキング客の案内、グリーンシーズンのアクティビティ受付
【 成功のポイント 】
① 通年雇用の実態を明確に示した
② 季節ごとの業務内容を具体的に記載
③ 特定技能協議会への加入を事前に完了
④ 登録支援機関と連携し、外国人スタッフの生活支援を充実
4. よくある質問(FAQ)
Q1. ワーキングホリデーならリフト係もできますか?
A. はい、可能です。
ワーキングホリデーは「休暇を楽しむための資金を補うための労働」が認められているため、職種制限がほぼありません。
ただし、期間に限りがあり(最長1年)、更新はできません。
継続的な雇用を考える場合は、他の在留資格への切り替えを検討する必要があります。
Q2. 以前、不法就労で摘発されたことがあるスキー場でも外国人を雇えますか?
A. 過去の違反歴は厳しくチェックされます。
改善策が講じられていることを証明する必要がありますが、ハードルは非常に高いです。
具体的には以下の対策が必要です。
• 社内の外国人雇用管理体制の整備
• コンプライアンス研修の実施記録
• 行政書士など専門家による定期監査の導入
• 入管への事前相談と改善報告
Q3. 4月から雪がなくなります。その間の業務はどうすればいいですか?
A. これは最も重要な質問の一つです。
グリーンシーズンの業務を雇用契約に含める必要があります。
【 具体的な通年雇用の例 】
• キャンプ場の運営・管理
• 登山道の整備・案内業務
• 観光農園での接客・販売
• ホテル・旅館の通年業務
• 事務作業・マーケティング業務
通年の雇用実態がないと、就労ビザの維持は困難です。
「冬だけ」という雇用形態では、在留資格の更新は認められません。
Q4. 外国人スタッフの報酬はいくら以上必要ですか?
A. 「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上」が原則です。
具体的には、
• 同じ業務内容の日本人スタッフと同等の給与
• 月給制の場合、概ね月額20万円以上が目安
• 時給制でも最低賃金を大きく上回る水準が必要
重要: 外国人だからといって低賃金で雇用することは認められません。
Q5. 申請から許可までどのくらい時間がかかりますか?
A. 標準処理期間は以下の通りです。
• 在留資格認定証明書交付申請:1〜3ヶ月
• 在留資格変更許可申請:2週間〜1ヶ月
ただし、書類に不備があったり追加資料を求められたりすると、さらに時間がかかります。
シーズン開始の最低3ヶ月前には申請を開始することをお勧めします。
5. 行政書士にできること・できないこと
在留資格の申請は、複雑な法律と入管実務の深い理解が必要です。
〈 ✔ 行政書士ができること 〉
① 最適な在留資格の選定と提案
業務内容を詳細にヒアリングし、不許可リスクの低い在留資格を提案します。
例えば、
• 「この業務内容なら技人国ではなく特定技能が適切」
• 「スキー指導が中心なら特定活動が最適」
• 「短期雇用なら、むしろワーキングホリデーを検討すべき」
② 説得力のある申請書類の作成
入管が納得する、専門性と必要性を論理的に説明する書類を作成します。
• 雇用理由書の作成
• 業務内容説明書の詳細化
• 学歴・職歴と業務の関連性の立証
• 通年雇用計画の策定
③ 不許可後のリカバリー対応
万が一不許可になった際、入管へ出向いて不許可理由を聞き取り、再申請の可能性を探ります。
多くの場合、不許可理由を正確に把握することが再申請成功の鍵となります。
④ 更新・変更手続きのサポート
初回の許可だけでなく、在留期間更新や在留資格変更の手続きも継続的にサポートします。
〈 ✖ 行政書士ができないこと(法的な限界) 〉
① 虚偽の申請
「実際は皿洗いだけど、書類上は通訳にする」といった虚偽の構成は、法律により固く禁じられています。
これは以下のリスクを伴います。
• 行政書士の資格剥奪
• 雇用主への刑事罰
• 外国人本人の強制退去
• 今後の外国人雇用の禁止
② 100%の許可保証
最終的な判断は法務大臣(入管)が行うため、絶対に許可が出るという約束はできません。
しかし、適切な準備と書類作成により、許可率を大幅に高めることは可能です。
③ 在留資格の要件を満たさない案件の受任
どんなに書類を工夫しても、法律上の要件を満たさない案件は受任できません。
例えば、
• 大学卒業もなく実務経験も不足している人材での技人国申請
• 短期雇用での就労ビザ申請
• 単純労働しかさせない計画での技人国申請
6. 今後の課題と解決策
〈 日本のスキー業界における最大の課題 〉
日本のスキー業界における外国人雇用の最大の課題は、「季節性(シーズン限定)」と「就労ビザ(通年前提)」のミスマッチです。
〈 解決策:地域間・事業者間の連携雇用 〉
南魚沼エリアであれば、以下のような年間を通じた雇用スキームを構築することが、在留資格取得の安定化につながります。
【 連携雇用の具体例 】
• 12月〜3月:スキー場でのフロント・通訳業務
• 4月〜5月:近隣の農家での農作業補助・農産物販売
• 6月〜8月:ラフティング会社での外国人客対応
• 9月〜11月:観光農園での接客・販売業務
【 このモデルの利点 】
① 外国人材が通年で安定収入を得られる
② 各事業者が繁忙期だけ人材を活用できる
③ 地域全体で外国人材を支える仕組みができる
④ 在留資格の要件(継続的雇用)を満たせる
【 実現に向けた課題 】
• 複数事業者間での雇用契約の調整
• 住居の確保(通年での居住場所)
• 社会保険の加入形態の整理
• 地域全体での受け入れ体制の構築
一箇所の事業主で完結させるのではなく、地域全体で外国人人材をシェアする仕組みづくりが、これからのインバウンド戦略には不可欠です。
7. まとめ:確実に雇用を成功させるために
外国人スタッフの雇用は、単なる「人手不足の解消」ではなく、スキー場の価値を高め、インバウンド需要に応える重要な投資です。
しかし、一度「不許可」の履歴がつくと、その後の申請が極めて難しくなるというリスクもあります。
【 在留資格申請成功のチェックリスト 】
申請前に必ず確認してください。
✅ 業務内容は専門的か?(単純労働ではないか)
✅ 雇用は安定しているか?(短期すぎないか、通年計画はあるか)
✅ 学歴や職歴と業務に一貫性はあるか?
✅ 報酬は日本人と同等以上か?
✅ 「なぜこの外国人が必要か」を明確に説明できるか?
✅ 適切な在留資格を選択しているか?
これらを自社だけで判断するのは非常に危険です。
入管実務に精通した専門家のサポートを受けることが成功への近道です。
【 専門家への相談が重要な理由 】
① 入管の審査基準は年々厳格化しており、最新情報が必須
② 地域特性(南魚沼・湯沢の季節雇用の実態など)を踏まえた対応が必要
③ 一度の不許可が将来の申請に悪影響を及ぼすリスク
④ 書類作成のノウハウ(どう書けば許可されるか)の有無
このようなお悩みありませんか?
• 「このスタッフ、どの在留資格なら雇用できる?」
• 「不許可にならないための書類の書き方は?」
• 「短期雇用だけど、何か方法はない?」
• 「以前不許可になった。再申請は可能?」
シーズン直前になって慌てる前に、まずは一度、行政書士などの専門家への相談をご検討ください。
貴社のインバウンド戦略を、在留資格のプロとして強力にバックアップいたします。
出典・参考
• 出入国在留管理庁トップページ
• 出入国在留管理庁「特定活動(スキーインストラクター)」
• 出入国在留管理庁「技術・人文知識・国際業務」
• 出入国在留管理庁「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について
• 出入国在留管理庁「特定技能制度」
• 出入国在留管理庁「特定技能制度(外食業分野)」
• 出入国在留管理庁「特定技能制度(宿泊業分野)」
• 「公益社団法人 日本プロスキー教師協会」(SIA)
• 新潟県「【南魚沼・湯沢の魅力】スキー場」
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