※ 本記事は2026年8月時点で確認できる公的情報にもとづいて作成しています。
制度は今後も改正される可能性があるため、実際の採用にあたっては下記の公的機関のウェブサイトで最新情報を必ずご確認ください。
➡ 参考:出入国在留管理庁「特定技能制度」
➡ 参考:林野庁「林業分野における外国人材の受入れ」
1. この記事は、どんな林業事業者に向けて書いているか
「若手が採れない」
「求人を出しても応募が来ない」
森林組合や素材生産業者から、こうした声を聞く機会が増えました。
全国的な人手不足に加え、林業は高齢化のスピードが他業種より速く、伐採や造林の担い手をどう確保するかは、多くの現場にとって切実な課題になっています。
そのなかで一つの選択肢として動き出したのが、外国人材の受け入れです。
2024年3月29日の閣議決定により、特定技能制度の対象分野に「林業」が新たに加わりました。
それまでは技能実習という限られた枠組みしかなかった林業分野にも、即戦力人材を受け入れる制度が用意されたことになります。
とはいえ、
• 在留資格ごとにできる仕事の範囲が違う
• 採用予定者の在留資格が林業に対応しているとは限らない
• 手続きには準備期間が必要
こういった点は、他分野以上に注意が必要です。
とくに林業は、チェーンソーや林業機械を扱う作業が多く、季節による仕事量の変動も大きいため、一般的な就労ビザの知識だけでは判断がつかない場面が少なくありません。
本記事は、次のような方に向けて書いています。
• 森林組合や造林・素材生産業を営んでいて、外国人採用を初めて検討している方
• 特定技能「林業」の制度概要をひととおり把握したい方
• 在留資格の違いがよく分からず、採用前に整理しておきたい方
• 行政書士に相談する前に、基礎知識を持っておきたい方
まずは制度の全体像をつかんだうえで、必要な手続きを一つずつ進めていくことが遠回りのようで一番の近道です。
「林業だから使える在留資格」が一つ決まっているわけではありません。
仕事内容と本人の在留資格の組み合わせによって、できることとできないことが変わります。
主なパターンを整理すると、次のとおりです。
| 在留資格 | 林業での位置づけ |
| 特定技能1号(林業) | 現時点でもっとも多く利用されている枠組み |
| 育成就労(令和9年4月運用開始予定) | 人材育成を目的とした受け入れルート |
| 技術・人文知識・国際業務 | 現場作業ではなく、管理・営業・技術職などが対象 ➡ 技術・人文知識・国際業務については「こちらの記事もおすすめ」 |
| 永住者・日本人の配偶者等・定住者 | 就労内容に制限がない |
| 留学・家族滞在・短期滞在 | 原則としてフルタイムでの就労は不可 |
在留カードを提示されても、この表のどこに当てはまるかまでは一目では分かりません。
採用前には必ず在留資格の種類まで確認する習慣をつけておくことをおすすめします。
2. 南魚沼・魚沼・湯沢エリアで想定される相談例
当事務所が所在する新潟県南魚沼市や湯沢町・魚沼市などの近隣地域では、豪雪地帯特有の事情を抱える林業事業者も多いため、次のような相談が想定されます。
※ 以下はいずれも特定の事例ではなく、よくある相談内容を参考にした想定例です。
♦ 想定例 ① 「森林組合でも外国人を採用できますか。」
結論から言えば、可能な場合があります。
ただし、任せる業務内容と、採用予定者本人の在留資格の組み合わせによって判断が変わるため、個別の確認が欠かせません。
♦ 想定例 ② 「今いる技能実習生は、このまま働き続けられますか。」
技能実習制度は、令和9年4月1日(2027年4月1日)に育成就労制度へと移行する予定です。
移行時点で実習を継続中の方には経過措置が設けられていますが、採用のタイミングによって適用される制度が異なるため、事前の確認が重要になります。
➡ 育成就労制度については「こちらの記事もおすすめ」
♦ 想定例 ③ 「留学生をそのまま正社員として雇えますか。」
留学の在留資格のままフルタイムで働かせることはできません。
就労できる在留資格への変更許可を受けたうえでの採用となります。
♦ 想定例 ④ 「冬場は除雪の仕事も手伝ってほしいのですが。」
豪雪地帯ではとても多い相談です。
特定技能「林業」には一定の関連業務が認められていますが、あくまで主たる業務は林業でなければならないという前提があります。
除雪をどの程度担当させられるかは、業務内容全体のバランスを見て個別に判断する必要があります。
南魚沼市・魚沼市・十日町市・湯沢町のような積雪の多い地域では、年間を通じた業務計画を採用前に描いておくことが、後々のトラブルを防ぐ意味でも重要です。
加えて、こうした地域では森林組合単位での共同受け入れや、複数の事業体で人材を融通し合う体制についての相談も見られます。
受け入れ機関が変わる場合は雇用契約や支援計画も改めて整理する必要があるため、早めに制度の建て付けを確認しておくと、実際に動き出す際の手戻りを減らせます。
3. 特定技能「林業」で外国人を採用するまでの手続きの流れ
実際に採用へ進む場合、大まかな流れは次のようになります。
① 担当してもらう業務が対象業務にあたるか確認する
特定技能「林業」の対象業務は、植栽・下刈り・枝打ち・間伐・主伐・集材といった育林・素材生産のほか、林業種苗育成や製炭も含まれます。
関連業務として周辺作業が認められる場合もありますが、林業と関係のない業務を主軸にすることはできません。
➡ 参考:林野庁「林業分野における外国人材の受入れ」
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② 採用予定者本人が要件を満たしているか確認する
外国人本人は、原則として林業技能測定試験と日本語試験の両方に合格している必要があります。
対象となる技能実習を良好に修了した人は、試験が免除されるケースもあります。
試験の実施日程や申込方法は、試験実施機関である一般社団法人林業技能向上センターのサイトで公表されています。
➡ 参考:一般社団法人 林業技能向上センター「林業分野特定技能制度」
日本語試験については、国際交流基金の日本語基礎テストのページで詳細を確認できます。
➡ 参考:独立行政法人 国際交流基金「日本語基礎テスト」
③ 雇用契約を締結する
賃金・労働時間・休日・社会保険・労働保険といった労働条件は、日本人が同じ業務に従事する場合と同等以上であることが求められます。
④ 支援体制を整える
特定技能1号では、生活オリエンテーションや相談対応、日本語学習機会の提供、定期面談などの支援を行う義務があります。
自社で対応することもできますし、登録支援機関へ委託することも可能です。
➡ 登録支援機関と行政書士の違いについては「こちらの記事もおすすめ」
⑤ 林業特定技能・育成就労協議会に加入する
林業分野で特定技能外国人または育成就労外国人を受け入れる場合、受入れ機関は「林業特定技能・育成就労協議会」に加入し、協議会の活動へ必要な協力を行うことが求められます。
➡ 参考:林野庁「林業特定技能・育成就労協議会」
在留資格の申請にあたっては、協議会の構成員であることを示す書類の提出が必要になるため、申請準備と並行して早めに加入手続きを進めておくと安心です。
⑥ 在留資格の申請を行う
海外から呼び寄せる場合は在留資格認定証明書交付申請、国内ですでに別の在留資格を持つ方を切り替える場合は在留資格変更許可申請が必要です。
申請先は、本人の住所地などを管轄する地方出入国在留管理局になります。
➡ 参考:出入国在留管理庁「特定技能外国人の受入れに関する運用要領」
➡ 在留資格認定証明書交付申請については「こちらの記事もおすすめ」
➡ 在留資格変更許可申請については「こちらの記事もおすすめ」
⑦ 就労開始、そしてその後の継続的な義務
許可後に就労が始まりますが、受入れ機関には定期的な届出や支援の実施など、採用後も継続する義務があります。
なお、林業は特定技能制度に加えて育成就労制度の対象分野にも位置づけられており、こちらは令和9年4月1日から運用が開始される予定です(前掲・林野庁ページ)。
今のところ即戦力人材の受け入れは特定技能が中心ですが、今後は人材育成を目的とした育成就労のルートも並行して動き出すことになります。
採用のタイミングによってどちらの制度を利用することになるのか、事前に整理しておくと手続きがスムーズです。
また、林業分野に特有の基準は固定されたものではなく、令和8年4月23日にも一部改正が行われています。
➡ 参考:出入国在留管理庁「特定技能制度の林業分野に特有の事情に鑑みて定める基準の改正について」
分野別の基準は今後も見直される可能性があるため、数か月前に調べた内容をそのまま使い回すのではなく、申請の直前にもう一度公的サイトで確認する習慣を持っておくと安心です。
4. 申請に必要な書類
必要書類は申請区分や本人の在留状況によって変わりますが、一般的には次のようなものを準備します。
| 区分 | 主な書類 |
| 外国人本人 | パスポート、在留カード(国内在留者)、履歴書、林業技能測定試験の合格証明書、日本語試験の合格証明書、写真 |
| 受入れ企業 | 登記事項証明書、決算関係書類、雇用契約書、雇用条件書、支援計画書、会社概要 |
| 協議会関連 | 林業特定技能・育成就労協議会への加入を証する書類 |
これらはあくまで一般的な例であり、実際の申請では個々の事情に応じて追加の資料を求められることもあります。
事前に地方出入国在留管理局や行政書士へ確認しておくと、申請直前になって慌てずに済みます。
5. 採用後によく起きる失敗と、その防ぎ方
制度そのものを理解していても、運用の段階でつまずくケースは珍しくありません。
代表的なものを挙げます。
① 在留資格の内容を確認しないまま採用してしまう
在留カードを持っているからといって、フルタイムで林業に従事できるとは限りません。
留学や家族滞在といった在留資格では、資格外活動許可の範囲を超える就労はできません。
採用前には、在留資格の種類と就労制限の有無を必ず照合してください。
② 林業以外の仕事が中心になってしまう
前述のとおり、冬季の除雪業務など関連業務として認められる範囲はあるものの、それが主たる業務に置き換わってしまうと制度の趣旨から外れます。
想定例としては、南魚沼市内の事業者が特定技能外国人を採用し、春から秋は植栽や下刈りを担当してもらっていたところ、冬季の仕事量が減ったため「建設現場の応援に回ってもらおう」という話が持ち上がったケースが考えられます。
建設現場での業務内容次第では、特定技能「林業」の対象範囲を超えるおそれがあるため、実際に判断に迷う場合は、事前に地方出入国在留管理局や行政書士へ相談することをおすすめします。
③ 安全教育が形だけになってしまう
チェーンソーや刈払機、傾斜地での作業など、林業には労働災害のリスクが比較的高い場面が多くあります。
母国語が日本語でない場合、指示が十分に伝わらないまま作業に入ってしまう危険もあるため、写真やイラスト、やさしい日本語を使った教育、実技を交えた指導などを組み合わせることが望まれます。
④ 支援計画が書類上だけで終わってしまう
生活オリエンテーションや定期面談は、提出書類を整えるためだけの手続きではありません。
買い物や通院、公共交通機関の少ない地域での暮らし方など、実際の生活面での戸惑いに寄り添う継続的な対応が求められます。
⑤ 採用スケジュールに余裕がない
求人から面接、雇用契約、在留資格申請、許可、そして入国や転職まで、一定の期間がかかります。
とくに春の植栽や夏場の下刈りなど繁忙期に合わせて採用したい場合は、数か月前から準備を始めることをおすすめします。
⑥ 協議会への加入を後回しにしてしまう
在留資格の申請には、林業特定技能・育成就労協議会の構成員であることを示す書類が必要になります。
加入手続きには一定の日数がかかるため、「申請直前になって加入していないことに気づいた」という事態は避けたいところです。
採用が決まった段階で、雇用契約の準備と並行して加入手続きにも着手しておくと、全体のスケジュールに無理が出にくくなります。
6. 行政書士に依頼「できること」・「できないこと」
〈 ✔ 行政書士に依頼できること 〉
申請取次届出済みの行政書士であれば、一定の条件のもとで、申請人本人に代わって出入国在留管理庁への申請を取り次ぐことができます。
具体的には、在留資格の要件確認、必要書類の案内と作成支援、「在留資格認定証明書交付申請」、「在留資格変更許可申請」、「在留期間更新許可申請」、そして入管からの追加資料要求への対応などです。
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〈 ✖ 行政書士では対応できないこと 〉
一方で、労働条件の決定、給与計算、社会保険・労働保険の手続き、労務管理全般は社会保険労務士の、税務申告は税理士の、訴訟に関する代理は弁護士の業務範囲になります。
外国人採用では複数の専門分野が絡み合うため、必要に応じて他士業と連携しながら進めることが実務上は多くなります。
7. よくある質問
Q1. 特定技能と育成就労、どちらで受け入れるべきですか。
A. 現時点では即戦力人材を受け入れる特定技能が中心です。
育成就労は令和9年4月からの運用開始予定であり、詳細な運用要領は今後も更新される見込みのため、採用を検討している時期によって選ぶべき制度が変わってきます。
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Q2. チェーンソー作業をさせるのに特別な資格は必要ですか。
A. 在留資格の有無とは別に、労働安全衛生法に基づく安全衛生教育や、業務内容によっては特別教育の受講が必要になる場合があります。
外国人であることを理由に基準が緩くなるわけではなく、日本人と同様の安全管理が求められます。
Q3. 外国人を採用すれば使える助成金はありますか。
A. 「外国人を採用したこと」自体を理由に受給できる助成金は、一般的には存在しません。
雇用関係の助成制度が別途設けられることはありますが、対象要件や実施時期は制度ごとに異なるため、厚生労働省や自治体の情報を個別に確認する必要があります。
Q4. 登録支援機関に委託しないと採用できませんか。
A. 必ずしも委託が必須というわけではありません。
生活オリエンテーションや定期面談などの支援業務を自社で実施できる体制が整っていれば、自社支援も選択肢になります。
ただし、初めての受け入れで支援担当者を配置しづらい場合や、多言語対応が難しい場合には、登録支援機関へ委託したほうが安定した運用につながることもあります。
どちらが自社に合うかは、社内の人員体制と相談しながら判断することになります。
8. これからの課題と対応の方向性
林業分野での外国人材の受け入れは始まったばかりで、実務が積み上がっていくのはこれからです。
想定される課題としては、令和9年4月の育成就労制度開始にともなう移行実務の複雑化、地方における日本語学習環境の不足、豪雪地帯特有の冬季就労計画の策定、そして協議会の運営情報が随時更新されることへの追従などが挙げられます。
これらに対しては、採用計画の早い段階から専門家に相談すること、年間を通じた業務計画をあらかじめ文書化しておくこと、行政書士と継続的に情報共有できる関係を築いておくことが、現実的な備えになると考えられます。
制度が固まりきっていない分野だからこそ、最新情報を追いかけながら柔軟に対応する姿勢が事業者側にも求められます。
9. まとめ : 外国人材の採用は、準備の早さが選択肢を広げます
林業分野における外国人材の受け入れは、特定技能制度の対象追加によって現実的な選択肢になりました。
その一方で、
• 在留資格と業務内容が一致しているか
• 支援体制を継続的に運用できているか
• 協議会加入や各種届出に漏れがないか
といった確認事項は多岐にわたります。
制度を十分に理解しないまま採用を進めると、思わぬところで要件を満たさなくなってしまうこともあるため、採用計画の段階から専門家へ相談し、順を追って準備することが結局は近道になります。
南魚沼市・魚沼市・十日町市・湯沢町をはじめ、新潟県内で林業分野の外国人採用をご検討中の事業者様へ。
当事務所では、外国人雇用に関するご相談から在留資格の確認、必要書類のご案内、出入国在留管理庁への各種申請取次まで、一つひとつ丁寧にサポートしています。
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こういったご相談も歓迎しております。
外国人採用は、早い段階で動き始めるほど選べる選択肢が広がります。
ぜひお気軽に当事務所のホームページからお問い合わせください。
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参考・出典
• 出入国在留管理庁「特定技能制度」
• 出入国在留管理庁「特定技能の受入れ見込数の再設定及び対象分野等の追加について(令和6年3月29日閣議決定)」
• 出入国在留管理庁「特定技能制度に係る制度の運用に関する基本方針・分野別運用方針・運用要領」
• 出入国在留管理庁「特定技能制度の林業分野に特有の事情に鑑みて定める基準の改正について」(令和8年4月23日改正)
• 出入国在留管理庁「特定技能外国人の受入れに関する運用要領」
• 林野庁「林業分野における外国人材の受入れ」
• 林野庁「林業特定技能・育成就労協議会」
• 一般社団法人 林業技能向上センター「林業分野特定技能制度」
• 独立行政法人 国際交流基金「日本語基礎テスト」
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