はじめに:なぜ今、「エンディングノート」が必要なのか?
「終活」という言葉をよく耳にするようになりました。
人生の終わりに向けて準備をすることは、決して後ろ向きなことではありません。
むしろ、残りの人生を自分らしく豊かに過ごすための前向きな行動です。
その「終活」の第一歩として、多くの方が手に取るのがエンディングノートです。
しかし、「遺書や遺言書と同じもの?」や「難しそう」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
このブログ記事では、行政書士である私たちの視点から、エンディングノートの基本的なことから、その驚くべきメリット、そして実際に何をどう書けば良いのかまでを、具体的な例を交えて分かりやすく解説します。
あなたの「未来の安心」を形にするため、ぜひ最後までお読みください。
1.エンディングノートとは?遺言書との決定的な違い
まず、エンディングノートがどのようなものか、そして法律的な書類である「遺言書」とどこが違うのかを明確に理解しましょう。
① エンディングノートの定義と目的
エンディングノートとは、自分にもしものことがあった場合や、病気などで判断能力が低下した場合に備えて、ご自身の希望や大切な情報、家族へのメッセージなどを書き残しておくための私的なノートです。
• 目的:
⑴ ご自身の希望を明確にしておくこと(医療・介護、葬儀、財産管理など)。
⑵ 残されたご家族が、手続きや意思決定で困らないようにすること。
⑶ ご家族への感謝や伝えたい想いを記録しておくこと。
• 特徴:
⑴ 形式や記載内容に法律上の決まりは一切ありません。市販のものを使っても、自由なノートを使っても構いません。
⑵ 法的効力はありません。(※この点が遺言書との決定的な違いです。)
② 遺言書との決定的な違い(効力の有無)
| 比較項目 | エンディングノート | 遺言書 |
| 法的効力 | なし | あり(民法で定められた方式に従った場合) |
| 主な内容 | 連絡先、財産情報、介護・医療の希望、葬儀の希望、家族へのメッセージなど全般 | 誰にどの財産をどれだけ相続させるか、認知、法定相続人の廃除など、法律で定められた事項のみ |
| 作成方式 | 自由 | 厳格な方式が定められている(自筆証書遺言、公正証書遺言など) |
| 目的 | 家族の負担軽減、意思伝達、想いの記録 | 財産分配の指定、相続争いの防止 |
ポイント: エンディングノートは「想い」や「情報」を伝えるツールであり、遺言書は「財産」を法的に分割するためのツールである、と理解すると分かりやすいでしょう。
2.終活をスムーズにする!エンディングノート作成の具体的なメリット
エンディングノートを作成することは、あなた自身とご家族に多くの安心をもたらします。
「あれば安心」ではなく、「なくては困る」ほどの重要なメリットを見ていきましょう。
メリット1:ご自身の「尊厳」と「希望」を守る
• 介護・医療の意思表示の明確化
延命治療の希望の有無、かかりつけ医、アレルギー情報など、ご自身の医療に関する希望を具体的に書き残すことで、「自分の最期」を自分で決めることができます。
• 財産管理の指針となる
万が一、認知症などで判断能力が低下した場合に、誰に、どのように財産を管理してほしいか(任意後見制度の活用など)の意思を事前に示しておくことができます。
メリット2:残されたご家族の手続き負担と精神的負担を大幅に軽減
エンディングノートがない場合、ご家族は故人の意思がわからず、悲しみの中、以下のような大変な作業に追われます。
| ノートがない場合の「ご家族の悩み・負担」 | ノートがある場合の「解決・サポート」 |
| 葬儀の手配:故人の希望がわからず、形式や規模で悩む。 | 葬儀の希望:宗派、規模、連絡してほしい友人のリストなど、故人の意思通りに準備できる。 |
| 口座の把握:どの銀行に口座があるか、証券会社はどこか分からず、残高確認や解約に時間がかかる。 | 財産情報:銀行名、支店名、保険会社名、ネットサービスのID/パスワードなどが一覧で把握できる。 |
| 各種契約・サービス停止:携帯電話、サブスクリプション、クレジットカードなどの停止が漏れる。 | 契約情報リスト:忘れがちな契約サービスや会員情報を漏れなく把握し、スムーズに解約できる。 |
メリット3:ご家族への「感謝のメッセージ」を伝える
デジタル化が進んだ現代において、手書きのメッセージは特に価値があります。
改めてご家族への感謝や伝えられなかった想いを綴ることで、心の整理ができ、残されたご家族の精神的な支えにもなります。
これは、エンディングノートならではの大きな役割です。
3.具体的に何を書く?行政書士が勧める必須記載項目と例文
「何から書けば良いかわからない」という方のために、行政書士が「これは必ず書いてほしい」と推奨する主要なカテゴリと、その具体的な記載例をご紹介します。
必須記載項目(4つの柱)
柱1:基本情報・自分史
• 個人情報:氏名、生年月日、本籍地、戸籍謄本がある場所など。
• 自分史・伝えたいこと:人生の大きな出来事、現在の健康状態、座右の銘、家族へのメッセージ、ペットのことなど。
• 連絡先リスト:親族、友人、仕事関係者など、訃報を伝えてほしい人の連絡先一覧。
柱2:医療・介護の希望
• 介護の希望:どこで介護を受けたいか(自宅、施設など)、誰に世話をしてほしいか。
• 延命治療:延命治療の希望の有無、受けたい医療レベル(緩和ケアなど)。かかりつけ医の情報。
柱3:葬儀・埋葬の希望
• 葬儀の希望:葬儀の形式(家族葬、一般葬など)、宗派、場所、呼んでほしい人、遺影に使う写真。
• 埋葬の希望:墓地の場所、お墓の承継者、散骨や樹木葬の希望の有無。
柱4:財産情報と各種契約
ご家族が最も困る項目です。漏れなく具体的に記載しましょう。
• 不動産:住所、権利書がある場所、固定資産税の通知書がある場所。
• 預貯金・証券:銀行名、支店名、口座種別(普通・定期など)、証券会社名、ネットバンキングのログイン情報(※ID/パスワードは厳重に保管場所を記す)。
• 生命保険・損害保険:保険会社名、証券番号、担当者連絡先、受取人名。
• デジタル資産:スマートフォン・PCのパスワード、サブスクリプション(Netflix, Spotifyなど)、SNSアカウント、メールアドレス、レンタルサーバー契約など。
4.行政書士は「終活」でどのようなサポートができるのか?
エンディングノートはご自身で自由に作成できますが、行政書士は「終活」全般において、法律の専門家として皆さまをサポートします。
① 専門家である行政書士にご依頼いただけること
• エンディングノート作成サポート
記載項目や、財産・権利関係の整理に関するアドバイス、聞き取りによる原案作成補助。
• 遺言書作成の支援
ノートで整理した財産情報を元に、法的効力のある「公正証書遺言」や「自筆証書遺言」の原案作成、公証人との調整。
• 任意後見契約のサポート
将来、判断能力が低下した時に備え、財産管理などを任せる「任意後見人」を選任するための契約書作成支援。
• 相続発生後の手続き
遺産分割協議書の作成、相続人調査、財産調査、銀行口座の解約手続きなど。
② 行政書士ができないこと(他士業との連携が必要な場合)
行政書士は「紛争性のある問題」や「法律上の手続き」の一部は行うことができません。
• 税金・相続税の申告:税理士の業務です。
• 相続人同士の紛争解決:弁護士の業務です。
• 法務局での不動産の登記手続き:司法書士の業務です。
5.さいごに:「人生100年時代」を安心して生きるために
エンディングノートは、一度書いて終わりではありません。ご自身の環境や考え方が変われば、その都度見直し、書き換えることが大切です。
• 結婚、出産、家の購入などの大きなライフイベントがあったとき
• 年に一度(誕生日や年末など)の定期的なタイミング
に内容を確認し、更新することをおすすめします。
エンディングノートを作成することで、「未来の不安」を「今の安心」に変えることができます。
ご自身の想いを整理したいけれど、何から手をつけていいか分からない、遺言書とセットで法的にも完璧に備えておきたいという方は、ぜひ一度行政書士にご相談ください。
あなたの「想い」を尊重し、安心できる未来を形にするお手伝いをいたします。
参考・出典
• 法務省:「自筆証書遺言書保管制度」
• 日本公証人連合会:「遺言」
• 日本行政書士会連合会:「遺言・相続」
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※本記事は令和7年12月時点に入手可能な情報をもとにしています。年度によって制度内容が変更されている可能性があります。必ず最新の法改正情報などでご確認ください。