南魚沼地域のスキー場経営者様、人事担当者様。
2026年、日本のスノーリゾートは空前のインバウンドブームの中にあります。
特にパウダースノーで世界に名を馳せる南魚沼・湯沢エリアでは、外国人観光客の増加に伴い、「多言語対応できるスタッフ」と「現場を支える現業スタッフ」の両面で深刻な人手不足が続いています。
冬の数ヶ月に集中する「短期・季節雇用」において、外国人を適法に雇用するためには、入管法(出入国管理及び難民認定法)の深い理解が欠かせません。
「うっかり不法就労」をさせてしまうと、事業主には非常に重い罰則が科され、今後の外国人受け入れが不可能になるリスクがあります。
本記事では、行政書士の視点から、スキー場事業における外国人雇用の注意点を徹底解説します。
特定技能、技術・人文知識・国際業務(技人国)、特定活動、ワーキングホリデーの使い分けから、南魚沼地域独自の活用モデルまで、実務に直結する情報をお届けします。
1. 知らないと経営が傾く「不法就労助長罪」の恐怖
外国人雇用において、経営者が最も注意すべきは「不法就労助長罪(入管法第73条の2)」です。
【 2026年現在の厳格な運用 】
2026年現在、マイナンバーカードと在留カードの一体化が進み、不適切な雇用形態は以前よりも容易に当局に把握されるようになっています。
「繁忙期だけだから」「周りもやっているから」という言い訳は通用しません。
• 罰則の内容: 3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金。
• 併科の可能性: 懲役と罰金の両方が科されることもあります。
• 企業の不利益: 罰則を受けると、以後5年間は「特定技能」などの外国人材を受け入れることができなくなります。また、ハローワーク等の求人受理も制限される可能性が高いです。
【 典型的な「うっかり違反」事例 】
① 資格外活動のオーバーワーク: 留学生を冬休みだからと週40時間以上(長期休業期間外に)働かせた。
② 専業義務の違反: 「通訳(技人国)」で入社したスタッフに、1日の大半をリフト係や雪かきに充てさせた。
③ 不法残留者の雇用: 在留期限が切れていることに気づかず、雇用を継続した。
➡ 参考:出入国在留管理庁「不法就労等外国人対策の推進について」
2. 在留資格別・スキー場での「実務範囲」と注意点
スキー場で外国人が就労する際、検討される主な在留資格について、その詳細と「現場でさせて良い仕事」を整理します。
① 技術・人文知識・国際業務(技人国)
インバウンド客のフロント対応、海外マーケティング、予約管理などを担う「ホワイトカラー」の資格です。
【 認められる業務 】
• ホテルのフロントでの翻訳・通訳を伴う接客
• 海外向けSNSでの情報発信、Webサイトの多言語化
• 海外旅行代理店との契約・交渉
【 注意点(重要) 】
「単純労働」は付随的な範囲(目安として全体の1割程度)しか認められません。
• 客室清掃、レストランの配膳、レンタルコーナーでの貸し出し、リフト係などは、この資格では原則として行えません。
• 小規模な宿泊施設で「フロントもやるが、ほとんどの時間は掃除をしている」という実態がある場合、入管の調査が入れば一発で資格取消・不法就労助長となります。
➡ 参考:出入国在留管理庁:在留資格「技術・人文知識・国際業務」
② 特定技能(宿泊・外食・農業)
2019年に新設され、2024年・2025年の改正でさらに活用しやすくなった即戦力人材のための資格です。
【 特定技能(宿泊) 】
• フロント、企画、広報、接客に加え、客室清掃やレストランでの配膳もメイン業務として認められます。
スキー場併設のホテルにとって最も汎用性の高い資格です。
【 特定技能(外食) 】
• スキー場内の独立したレストランやフードコートでの調理・接客に特化します。
【 特定技能(農業) 】
• 実は南魚沼地域で最も「季節雇用」と相性が良いのがこの分野です。
派遣形態が認められているため、冬の間だけスキー場へ人員を融通する仕組み(後述)の鍵となります。
➡ 参考:出入国在留管理庁:「特定技能制度」
③ 特定活動(スキーインストラクター)
「スキー」の指導に限定された資格です。
【 要件 】
日本プロスキー教師協会(SIA)の認定資格、または同等の海外資格と実務経験。
【 注意点 】
あくまで「指導」が目的です。
スクールの受付業務や、スキー板のメンテナンス、リフトの操作などは「付随業務」の範囲内に収める必要があります。
【 「スノーボード」の落とし穴 】
スノーボードの指導は「特定活動」ではなく、「技能」という別の在留資格に該当します。
技能は「3年以上の実務経験(教育期間含む)」が必要であり、スキーよりもハードルが高いため、インストラクター雇用の際は種目を必ず確認してください。
➡ 参考:出入国在留管理庁「特定活動(スキーインストラクター)」
④ ワーキングホリデー(特定活動)
日本との協定国(2026年現在、30カ国近く)の若者が対象です。
【 最大のメリット 】
就労制限がほぼありません。
リフト係、清掃、調理補助、託児所スタッフなど、どんな業務でも任せられます。
【 デメリット 】
期間が1年以内であり、本人の主目的が「観光」であるため、繁忙期の急な退職(スキーに行きたいから辞める、等)のリスクがあります。
➡ 参考:外務省「ワーキング・ホリデー制度」
3. 南魚沼・湯沢地域での「特定技能」戦略的活用モデル
南魚沼地域は、日本有数の米どころ(農業)と、日本有数のスキー場(観光)が共存しています。
この特性を活かした「年間雇用の創出」が、今後の外国人雇用のスタンダードになります。
【戦略1】「農業×宿泊」のマルチキャリア・リレー雇用
南魚沼の農業法人とスキー場がパートナーシップを組み、一人の外国人を年間通して雇用するモデルです。
• 4月〜11月: 特定技能(農業)として、コシヒカリの栽培・収穫・加工に従事。
• 12月〜3月: 特定技能(宿泊)として、スキー場のホテルで接客・運営に従事。
【 行政書士の役割 】
このモデルでは、途中で在留資格の「変更申請」を行うか、あるいは「特定技能(農業)」の派遣形態を活用し、冬場に宿泊施設へ出向させるための法的構成を組む必要があります。
これが実現すれば、外国人は南魚沼に定住でき、企業は熟練したスタッフを毎年確保できます。
【戦略2】「周辺産業」との連携による派遣活用
特定技能の「農業」と「漁業」は、直接雇用だけでなく「派遣」が認められています。
「農業特定技能受入協議会」等を通じて派遣された人材が、冬の閑散期にスキー場の維持管理や、付随する軽作業を行うことが、法改正により柔軟に検討できるようになっています(※業務範囲には厳格な制限があるため、詳細は専門機関にご確認ください)。
➡ 参考:農林水産省「在留資格「特定技能」について (農業分野)」
➡ 参考:出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A(Q4)」
4. 2026年〜2027年:育成就労制度(新制度)への備え
長らく続いた「技能実習制度」に代わり、新たに「育成就労制度」が2027年より開始します。
これは外国人材を「労働力」として正式に位置づけ、将来的に「特定技能」へ移行させることを前提とした制度です。
【 スキー場経営者への影響 】
• 転籍(引き抜き)への対応
以前の技能実習とは異なり、一定の条件(1〜2年の就労や日本語能力)を満たせば、本人の意思で職場を変わる「転籍」が認められるようになりました。
• 対策
「給与水準」だけでなく、「寮の生活環境(Wi-Fi、家電完備など)」「地域コミュニティへの参加」といった居住環境の質が、選ばれるスキー場の条件となります。
➡ 参考:出入国在留管理庁:「育成就労制度」
5. 南魚沼地域での申請実務:新潟管理局でのポイント
南魚沼・湯沢エリアの事業者が申請を行うのは、新潟出入国在留管理局(新潟市)です。
【 申請に必要な主要書類リスト(特定技能の場合) 】
① 特定技能外国人の報酬に関する説明書: 日本人と同等以上の給与である証拠(賃金台帳など)。
② 特定技能雇用契約書: 労働条件を母国語でも併記する必要があります。
③ 1号特定技能外国人支援計画書: 登録支援機関(または自社)が行う、生活オリエンテーションや相談体制の証明。
④ 登記事項証明書・決算書: 企業の経営安定性を証明します。
【 行政書士による「オンライン申請」のメリット 】
2026年、入管業務はデジタル化が加速しています。
「オンライン申請」には以下のメリットがあります。
• 移動コストの削減: 新潟市まで往復する時間と交通費をカットできます。
• 審査期間の短縮: 書類の不備チェックを専門家が行うため、差し戻しが少なく、スムーズに許可が下ります。
• 24時間対応: 窓口の受付時間を気にせず、迅速に申請手続きを開始できます。
6. 行政書士に「できること」と「できないこと」の境界線
「行政書士に頼めば全部やってくれるのか?」という疑問に、正直にお答えします。
〈 ✔ 行政書士にできること 〉
① 在留資格の「最適解」提案
貴社の業務実態をヒアリングし、「技人国」で行けるのか、無理をして「特定技能」を採るべきか、法的リスクを考慮して診断します。
② 理由書の作成
入管は書類の「形式」だけでなく、雇用の「必然性」を見ます。
なぜこの人数が必要なのか、なぜこの外国人でなければならないのかを論理的に文章化します。
③ コンプライアンス顧問
雇用後の「定期報告」や、住所変更などの届け出を失念しないよう管理します。
〈 ✖ 行政書士にできないこと 〉
①人材の面接・選定
私たちは「法務のプロ」であり、人材紹介(マッチング)は本業ではありません。
② 虚偽の事実への加担
「実際は掃除をさせるが、通訳として申請してほしい」といった、法に触れる依頼は一切お受けできません。
7. よくある質問(FAQ):現場のトラブル解決編
Q1. インバウンド客が多すぎて、フロントの「技人国」スタッフに客室清掃を手伝わせたいのですが…。
A1. 1日の業務のうち、数十分程度の「付随的業務」であれば許容範囲とされることもありますが、常態化している場合は違法です。
人手不足が深刻なら、最初から清掃も可能な「特定技能(宿泊)」への変更を検討してください。
Q2. ワーキングホリデーのスタッフが、シーズン途中で別のスキー場へ行きたいと言い出しました。引き止められますか?
A2. 労働契約上の拘束は可能ですが、強制的に働かせることはできません。
ワーホリは自由度が高いため、事前に「退職時のルール」を明確にした契約書(英文併記)を交わしておくことが重要です。
Q3. 海外から直接インストラクターを呼びたいが、何ヶ月前から準備すべき?
A4. 最低4ヶ月前です。
資格の照合、在留資格認定証明書(COE)の発行、現地大使館でのビザ発給を含めると、12月のシーズンインなら8月には着手すべきです。
8. 2026年以降の課題:雪不足と「労働力の流動化」への対応策
今後、地球温暖化による雪不足の影響で、スキー場の営業期間が変動するリスクがあります。
〈 課題:休業中の給与補償 〉
雪が降らずに営業できない期間、外国人の給与をどうするか。
特定技能の場合、原則として「安定した報酬」が求められます。
【 解決案 】
雇用契約において「休業手当」の規定を明確にするだけでなく、前述した「屋内業務(食品加工やメンテナンス)」を業務範囲に含めることができる在留資格(特定技能など)を選択しておくことがリスクヘッジになります。
〈 課題:地域内での「人材シェアリング」 〉
南魚沼・湯沢エリア全体で、繁忙期が微妙にずれる施設(苗場と湯沢駅周辺など)同士で、スタッフを融通し合う「共同雇用」の枠組み作りが考えられます。
9. まとめ:適正な外国人雇用が、南魚沼の観光を強くする
スキー場での外国人雇用は、一見すると「冬の間の使い捨て」のようなイメージを持たれがちでしたが、2026年の今、その考え方は通用しません。
適正な在留資格を選び、適正な報酬を支払い、地域の担い手として大切に育てる。
この姿勢こそが、結果として不法就労のリスクをゼロにし、海外からも選ばれる最高のスノーリゾートを作ることにつながります。
「この業務で申請が通るか不安だ」「特定技能を導入したいが書類が多すぎて手が出せない」 そのような悩みは、一人で抱え込まずに、行政書士などの専門家にお任せください。
行政書士は、南魚沼・湯沢エリアの雪と観光を守るために、全力でサポートいたします。
出典・参考
• 出入国在留管理庁「不法就労等外国人対策の推進について」
• 出入国在留管理庁:在留資格「技術・人文知識・国際業務」
• 出入国在留管理庁:「特定技能制度」
• 出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A(Q4)」
• 出入国在留管理庁:「育成就労制度」
• 出入国在留管理庁:「特定活動(スキーインストラクター)」
• 外務省「ワーキング・ホリデー制度」
• 厚生労働省:「外国人雇用対策」
• 農林水産省「在留資格「特定技能」について (農業分野)」
• 新潟県:「外国人労働者に関する情報」雇用能力開発課
• 南魚沼市:「起業・創業」事業者向け補助金・支援情報
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