はじめに
行政手続きや許認可、相続手続き、契約書の作成など「行政書士」という言葉は聞いたことがあるけれど、実際に何をどこまでできるのか、どこから他の士業(弁護士・司法書士・税理士など)に頼むべきか、意外とあいまいになっている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、「取扱い可能な業務は1万種類以上」と言われる行政書士業務について、法律・実務の最新情報を元に、行政書士の「できること」と「できないこと」を整理し、依頼時に注意すべきポイントを初心者にも分かるように解説します。
1.行政書士が「できること」~業務範囲の基本~
まず、行政書士が法律上掲げられている業務範囲から、内容を確認していきましょう。
1-1. 法律上の定義
行政書士法第1条の2では、行政書士が業として報酬を得て行えるのは「他人の依頼を受けて、①官公署に提出する書類、②権利義務に関する書類、③事実証明に関する書類」の作成とその代理・相談業務であると定められています。
ただし、②・③の書類であっても、他の法律で別に制限されている場合には行政書士が行えないものがあります。
1-2. できることの具体例
以下、行政書士業務で代表的なものを挙げます。
①官公署に提出する書類:
ⅰ)建設業許可申請
建設業を営むには、一定規模以上の工事を行う場合「建設業許可」が必要です。
行政書士は、
• 経営業務の管理責任者・専任技術者などの要件確認
• 財務諸表・決算報告書などの作成補助
• 申請書・添付書類一式の作成・提出代行
を行い、許可取得を全面的にサポートします。
建設業許可は更新(5年ごと)や業種追加、変更届出などもあり、継続的にサポートする行政書士事務所も多い業務です。
ⅱ)飲食店営業・風俗営業などの許認可申請
飲食店を開業するには、「食品衛生法」や「風俗営業法」など複数の法令に基づく許可が必要です。
行政書士は、
• 保健所や警察署への提出書類の作成
• 図面(店舗平面図、周辺略図)の作成補助
• 管轄官公署との事前相談・手続き代行
を行います。
特に、風俗営業許可や深夜酒類提供飲食店営業の届出は、図面や照明設備の基準など細かい条件があり、行政書士の実務経験が重要となります。
ⅲ)入管業務(外国人の在留資格)
外国人が日本で働く・暮らすためには、出入国在留管理局に対する「在留資格」の申請が必要です。
行政書士の中でも「申請取次行政書士」は、依頼者に代わって入管へ直接申請を行うことができます。
主な対応内容は以下の通りです。
• 在留資格認定証明書交付申請(外国人を日本に呼び寄せる)
• 在留資格変更・更新申請
• 永住許可申請・帰化申請の書類作成
• 外国人雇用に関する会社側サポート
入管業務は書類の要件が非常に厳格なため、専門の行政書士に依頼するケースが多くなっています。
ⅳ)農地転用・開発許可申
農地を宅地や駐車場など他の用途に変える場合、農地法や都市計画法に基づく許可が必要です。
行政書士は、
• 農地転用許可申請書の作成
• 添付書類(位置図・公図・現況写真など)の作成
• 行政との協議・申請代行
を行います。
農地転用は土地の場所・面積・用途により関係法令が異なるため、経験豊富な行政書士に依頼するとスムーズです
②権利義務に関する書類
ⅰ)相続・遺言関連業務
相続に関する相談は、行政書士が最も多く扱う分野のひとつです。
主な業務は以下の通りです。
• 遺言書(自筆証書・公正証書)の作成支援
• 相続人・相続財産の調査
• 遺産分割協議書の作成
• 相続関係説明図の作成
• 行政機関への届出手続き
※ただし、相続人間で争いがある場合や、調停・裁判を伴う案件は弁護士の業務範囲となります。
また、相続した不動産の登記に関しては司法書士の業務範囲となります。
ⅱ)契約書・内容証明郵便の作成
行政書士は「権利義務に関する書類」を業として作成できるため、契約やトラブルを防ぐための書面作成に強みがあります。
• 売買契約書、請負契約書、業務委託契約書などの作成
• 離婚協議書、示談書、和解書などの起案
• 内容証明郵便の文案作成(※相手方との交渉を含む場合は弁護士業務となるため注意)
法的効力を持たせたい書面を、法律に沿って整えるのが行政書士の役割です。
ⅲ)自動車関連手続き
自動車の登録・車庫証明・ナンバー変更なども、行政書士の主要業務のひとつです。
• 新車・中古車の登録手続き
• 名義変更(譲渡・相続など)
• 車庫証明の申請代行
• 一括OSS申請(オンライン申請)対応
特に自動車販売業者やリース会社との取引が多く、地域に根付いた実務として行われています。
③事実証明に関する書類:
ⅰ)会社設立・法人関係書類の作成
会社を設立する際の「定款」は行政書士が作成できる代表的な書類です。
電子定款認証を利用すれば、印紙代4万円を節約できるため、行政書士への依頼が一般的です。
ただし、登記申請は司法書士の業務範囲となるため、行政書士は「定款作成・認証まで」を担当し、その後の登記は司法書士に引き継ぐ形になります。
その他、会社の議事録、会計帳簿・決算書、図面(案内図・現況測量図など)などを作成・相談も行政書士の業務です。
上記業務の他、近年では行政手続きの電子化や新制度の導入により、行政書士の活躍の場はさらに広がっています。
• 補助金・給付金申請のサポート(※制度により代理可否あり)
• ドローン飛行許可申請
• 医療法人・NPO法人設立の手続き
• 各種届出(道路使用許可、産業廃棄物収集運搬業許可など)
これらの分野は法改正や制度変更が多いため、最新情報に精通した行政書士に相談することが重要です。
1-3. なぜ“行政書士へ依頼”が有効なのか
個人や事業者が自分で手続きを進める場合、許認可などでは書類の内容や添付資料、要件を満たしているかどうかが不明確なまま申請を出してしまい、却下・差戻し・補正が発生することがあります。
行政書士に依頼することで、法律・条例に即した書類作成・手続き代行を行い、スムーズな申請を目指すことができます。
2.行政書士が「できないこと」~依頼時に知っておくべき制限~
続いて、行政書士には法的に制限されている「できないこと」もあります。ここを誤ると、必要な助言・手続き先を誤ってしまうため、依頼前に把握しておきましょう。
2-1. 他士業の独占業務に関する制限
行政書士が行えない代表的な業務には、以下のようなものがあります。
• 弁護士の独占業務:紛争性のある契約書/協議書の作成・相談、裁判所での訴訟代理など。
• 司法書士の独占業務:不動産登記申請(相続登記含む)、会社設立登記申請など。
• 税理士の独占業務:税務申告・税務相談など。行政書士は申告書の作成代理などはできません。
• 社会保険労務士業務:社会保険手続き・助成金申請の代理(特に厚生労働省系)にも一定の制限があります。
2-2. よくある依頼ミス・注意点
• 「自社の登記(会社設立・不動産名義変更)をすべて行政書士に任せていたらできなかった」というケース。
→例えば、不動産登記は司法書士の領域で、行政書士が代理申請できません。
• 契約書を作ってほしいが、相手方との紛争状態・交渉が発生しており、法的アドバイスや解決を期待していた場合。
→これは弁護士の仕事です。
• 助成金申請を依頼したが、対象が厚生労働省管轄のものであって行政書士では代理できなかったケース。
→経済産業省や地方自治体の補助金申請は行政書士業務です。
2-3. 「できないこと」の背景と法律根拠
行政書士法第1条の2第2項には「前項の書類の作成であっても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない」と明記されています。
つまり、「書類作成=すべてOK」ではなく、他の士業が独占していたり、別の法律で代理・相談を制限されている領域には行政書士は関われません。
依頼を検討する際には、行政書士に「この手続き、私の依頼内容で問題ないか?」を確認するのが安心です。
3.どんなときに行政書士に依頼すると良いか?
ここでは、相談者・依頼者目線で「行政書士に頼むメリット」と「依頼前に確認すべきこと」を整理します。
3-1. 依頼するメリット
• 専門の書類作成・手続き代行によるミス削減・時間短縮。特に許認可申請では、要件チェックや添付書類の整備が重要です。
• 自分で手続きするよりも、スムーズな進行が期待できる。特に忙しい事業者・個人にはメリットがあります。
• 他士業との連携が整っている行政書士事務所であれば、案件に応じて弁護士・司法書士等を紹介してもらえることも。
3-2. 依頼前に確認すべきポイント
• 「この手続きは行政書士に任せて大丈夫か?」:登記・裁判・税務・弁護士業務等へ関わる部分がないかを確認。
• 費用・報酬体系:相談料、書類作成料、代理手続き料などを明示してもらう。
• 実績・得意分野:許認可、相続・遺言、在留資格など分野がありますので、「この分野は得意か」「過去の実績は?」を確認。
• 他士業との連携:もし訴訟・登記・税務が関わる可能性がある場合、弁護士・司法書士・税理士との連携体制があるかを聞いておくと安心です。
• 相談範囲・業務範囲の明確化:例えば「契約書の作成まではお願いするが、紛争の解決交渉までは弁護士に依頼」といった範囲を事前に確認。
4.よくあるQ&A形式で整理
Q1.行政書士に頼めば「会社設立登記」も丸ごと任せられますか?
A:登記申請の代理は、司法書士の独占業務ですので、行政書士が登記そのものを代理することはできません。
例えば、会社設立時の定款作成などは行政書士が可能ですが、登記申請部分は司法書士を併用することになります。
Q2.遺言書・相続の手続きについて、行政書士にどこまで頼めますか?
A:遺言書の作成支援・遺産分割協議書の作成などは行政書士が対応可能です。
ただし、相続人同士で争いがある、交渉が必要・裁判になる可能性がある場合は、弁護士に依頼すべき場面です。
Q3.「許認可申請の代行」と「助成金申請」は同じですか?
A:許認可申請(例えば飲食店営業、建設業許可など)は行政書士の業務範囲です。
一方、厚生労働省管轄の「助成金」申請は、労務関係・社会保険関係が深いもがあり、社会保険労務士の業務範囲となります。
これに対し、経済産業省や地方自治体が管轄する「補助金」申請は、行政書士の業務範囲です。
5.まとめ:行政書士に頼む前にこの3点を押さえよう
①「書類作成+提出代行+相談」が行政書士の基本業務。法令・手続きに基づくサポートが可能。
②ただし、登記・裁判・税務・労務など他士業が独占する分野には手を出せません。
③依頼前に「この案件は行政書士で対応可か」「どこまで任せられるか」を具体的に確認すると安心です。
手続きの手間・時間・法律の複雑さを考えると、専門家である行政書士の活用は非常に合理的な選択肢です。
ただし「丸ごと任せたから安心」と思わず、その専門家が実際にその分野に精通しているか、他士業と連携できるか、費用・範囲が明確かをチェックすることをおすすめします。
参考(本文で参照した主な公的・業界資料)
• 行政書士法
• 日本行政書士会連合会:「行政書士の業務」
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※本記事は2025年11月時点の法令・実務状況を基に作成しております。案件によっては地域条例・制度改正などで扱いが変わる場合があります。より詳しい内容は担当行政書士にご確認ください。