〈 この記事は、こんな方に向けて書いています 〉
外国人材の採用を進めている企業の担当者から、こんな声を耳にします。
「登録支援機関に頼んでおけば、在留資格の手続きまで含めて全部お願いできるんですよね?」
結論から言うと、これは誤解であることが多いです。
登録支援機関と行政書士は、法律上まったく別の役割を持つ存在です。
この違いを知らないまま契約を進めてしまうと、いざ在留資格の申請が必要になった段階で「対応できる範囲外です」と言われ、急いで別の依頼先を探すことになりかねません。
この記事は、はじめて特定技能外国人の採用を検討している企業の人事・総務担当者、すでに外国人従業員を雇用していて手続きの分担に疑問を感じている経営者の方に向けて書いています。
新潟県南魚沼地域で農業・建設業・製造業・宿泊業に携わる方を主な読者として想定していますが、制度そのものは全国共通です。
南魚沼市・魚沼市・湯沢町エリアで想定されるの相談例を交えながら、それぞれにできること・できないこと、手続きの流れ、よくある失敗例までを、申請取次行政書士の立場から整理します。
なお、出入国在留管理庁が公表している特定技能制度の情報を基に、2026年7月時点の内容で解説します。
➡ 参考:出入国在留管理庁「特定技能制度」
1. 登録支援機関とは何をする機関か
登録支援機関は、特定技能1号外国人に対する支援計画の実施を、受入れ企業に代わって行うことができる機関です。
出入国管理及び難民認定法とその関係省令に基づき、出入国在留管理庁長官の登録を受けることで活動できます。
支援の中身は、空港への送迎、住居確保のサポート、生活オリエンテーション、日本語学習に関する情報提供、定期的な面談、行政機関への同行、相談や苦情への対応など多岐にわたります。
詳しい支援内容は、出入国在留管理庁の特定技能運用要領(1号特定技能外国人支援に関する運用要領を含む)に掲載されています。
➡ 参考:出入国在留管理庁「特定技能運用要領」
ここで押さえておきたいのは、登録支援機関は「在留資格申請の代理人」ではないという点です。
生活面の支援を専門とする立場であり、入管への申請書類を作成したり提出したりする資格そのものとは別物です。
2. 行政書士とは何をする資格者か
行政書士は行政書士法に基づく国家資格者で、官公署に提出する書類の作成やその提出手続の代理を業務としています。
「申請取次行政書士」、すなわち地方出入国在留管理局長に届出を行った行政書士であれば、本人に代わって在留資格に関する申請書類を提出することができます。
具体的には、「在留資格認定証明書交付申請」、「在留資格変更許可申請」、「在留期間更新許可申請」、「就労資格証明書交付申請」、「永住許可申請」などが対象です。
この申請取次の仕組みは、出入国在留管理庁が公表する在留資格認定証明書交付申請のページでも確認できます。
➡ 参考:出入国在留管理庁「在留資格認定証明書交付申請」(申請提出者参照)
つまり、登録支援機関は「支援」、行政書士は「手続」を担当する、と整理すると分かりやすいはずです。
特定技能外国人を採用する場面では、両者の業務が重なって見えることもありますが、法律上の立場はまったく異なります。
3. 南魚沼・魚沼・湯沢エリアで想定される相談例
新潟県南魚沼地域は、農業、建設業、製造業、宿泊業を中心に外国人材の受入れが広がっているエリアです。
次のような相談が想定されます。
※ 以下はいずれも、よくある相談を基にした想定例であり、実在の企業・個人を示すものではありません。
【 想定例 ① 】
建設業の会社から、「登録支援機関と契約すれば在留資格申請もまとめて対応してもらえますか」という相談。
実際には登録支援機関が当然に申請の代理を行えるわけではなく、申請取次資格を持つ行政書士など法令上認められた者が手続きを担う必要があります。
【 想定例 ② 】
農業法人から、「来日後の生活支援まで自社の人員だけでは手が回らない」という相談。
こうした場合、支援業務を登録支援機関へ委託する選択肢があります。
自社支援を選ぶことも制度上は可能ですが、継続的な支援体制を整えられるかどうかがポイントになります。
【 想定例 ③ 】
宿泊業からは「行政書士に依頼すれば登録支援機関は不要になりますか」という相談。
これも必ずしもイコールではなく、在留資格の手続きと生活支援は別の業務として考える必要があります。
【 想定例 ④ 】
製造業の工場からは、「技能実習からの移行と、新規で特定技能を取得する場合とで、必要な手続きは変わりますか」という相談。
技能実習2号を良好に修了しているかどうかで試験免除の可否が変わるため、移行を検討している場合は早めに現在の在留状況を確認しておく必要があります。
湯沢町ではスキーシーズンに向けた宿泊業の求人が増える傾向があり、南魚沼市・魚沼市では農業や建設業の人材確保が季節ごとの課題になりやすい地域です。
制度を十分理解しないまま採用活動を進めてしまうと、後になって手続きのやり直しが発生することもあるため、採用計画の初期段階から在留資格・支援体制の両面を整理しておくことをおすすめします。
4. 採用から就労開始までの流れ
特定技能外国人を採用する際の一般的な流れを時系列で紹介します。
実際の手続きは、本人が国内にいるか海外にいるか、どの在留資格から移行するかによって多少前後します。
まず、採用予定者が特定技能として働ける条件を満たしているかを確認します。
特定技能評価試験の合格状況や、技能実習2号を良好に修了しているかどうかなど、資格証明書や修了証明書といった資料で裏付けを取ることが重要です。
次に雇用条件を固めます。
日本人と同等以上の報酬であること、労働時間や休日が労働基準関係法令に適合していることなど、特定技能制度特有の基準を満たす必要があります。
ここで支援体制を決定します。
自社支援を選ぶか、登録支援機関へ全部または一部を委託するかという判断です。
特定技能1号では外国人への支援が義務付けられているため、この段階を飛ばして先に進めることはできません。
支援体制が固まったら、いよいよ在留資格申請の準備に入ります。
必要書類を集め、地方出入国在留管理局へ提出する申請書を作成します。
ここから先が、申請取次行政書士の専門領域です。
申請取次行政書士は、地方出入国在留管理局長への届出を経た上で、本人に代わって書類を提出できます。
新潟県内の企業様の場合、管轄は東京出入国在留管理局新潟出張所となります。
許可が下りたあとは、住居確保やライフライン契約、社会保険加入といった受入れ準備を進め、就労開始後も定期面談や相談対応といった支援を継続していきます。
➡ 特定技能については「こちらの記事もおすすめ」
5. 申請に必要となる主な書類
提出書類は申請の種類や個別の事情によって変わりますが、代表的なものを挙げます。
外国人本人が用意する書類には、パスポート、在留カード(国内在留者の場合)、顔写真、試験合格証明書や技能実習修了証明書(該当する場合)があります。
受入れ企業が用意する書類には、雇用契約書、雇用条件書、支援計画書、登記事項証明書、納税関係書類、労働・社会保険関係資料などがあり、分野ごとに追加で求められる資料もあります。
最新の提出書類一覧は出入国在留管理庁のページで随時更新されているため、申請直前に必ず確認することをおすすめします。
➡ 参考:出入国在留管理庁「在留資格「特定技能」」
登録支援機関へ委託する場合は、支援委託契約書や支援計画に関する資料も別途必要になります。
委託契約の内容と支援計画の整合性は、契約前によく確認しておきたいところです。
6. 実務でよくある失敗例
制度の理解不足から生じるトラブルは、決して珍しいものではありません。
※ 以下はいずれも、よくある失敗例を基にした想定例であり、実在の企業・個人を示すものではありません。
【 想定例 ① 】
南魚沼市内の建設会社が登録支援機関と契約したものの、在留資格変更許可申請の直前になって「申請書類はご自身で準備してください」と説明を受け、慌てて行政書士を探すことになったケース。
契約前に「在留資格申請は誰が担当するのか」を確認しておけば防げた事例です。
【 想定例 ② 】
「登録支援機関に委託したのだから会社は何もしなくてよい」と考えていたところ、地方出入国在留管理局から追加の説明を求められたケース。
支援業務を委託しても、受入れ企業としての責任がなくなるわけではありません。
従業員の勤務状況や生活環境を把握し続けることは、企業側の役割として残ります。
【 想定例 ③ 】
宿泊業の企業が、必要な試験の合格状況を十分確認しないまま採用を内定し、予定していた在留資格変更申請が思うように進まなかったケース。
紹介会社からの情報だけに頼らず、資格証明書などの原本を企業側でも確認しておく姿勢が欠かせません。
これらに共通するのは、「登録支援機関=手続きも支援も丸ごと任せられる」という思い込みです。
契約前に業務範囲、対応言語、面談方法、追加費用の有無などを具体的に確認しておくことで、多くのトラブルは未然に防げます。
7. 行政書士として「できること」・「できないこと」
申請取次行政書士が扱う業務は、「在留資格認定証明書交付申請」、「在留資格変更許可申請」、「在留期間更新許可申請」、「就労資格証明書交付申請」、「永住許可申請」、そして申請理由書の作成支援や資料収集のサポートなどです。
企業の状況を整理し、どの手続きが必要かを見極めることも重要な役割だと考えています。
一方で、行政書士であっても当然にできるわけではない業務もあります。
特定技能1号外国人への法定支援は、登録支援機関としての登録を受けていない限り担当できません。
職業紹介事業や労働者派遣事業、社会保険労務士の独占業務、弁護士法に抵触するような法律事務も同様です。
行政書士が登録支援機関としても登録を受けている場合には、両方の業務を法令に従って区別しながら提供することになります。
依頼を受ける際は、「どこまでが自分の業務範囲か」をお客様に明確にお伝えするよう心がけています。
制度が複数の法令にまたがるため、境界線があいまいなまま進めてしまうと、後から「聞いていた話と違う」という誤解につながりやすいためです。
8. よくある質問
Q1. 行政書士は全員、登録支援機関なのですか。
A. いいえ。
行政書士であっても、登録支援機関として活動するには別途、出入国在留管理庁長官の登録を受ける必要があります。
Q2. 登録支援機関になるには行政書士資格が必要ですか。
A. いいえ。
登録支援機関は一定の登録基準を満たせば、法人でも個人事業者でも登録できます。
行政書士資格は登録の要件ではありません。
➡ 参考:出入国在留管理庁「登録支援機関の登録(更新)申請」
Q3. 費用はどちらに依頼する方が安くなりますか。
A. 一概には言えません。
行政書士への依頼は在留資格の申請手続きが中心、登録支援機関への委託は継続的な生活支援が中心であり、業務の性質が異なるため単純比較はできません。
両方が必要な場合は、それぞれの見積もりを取って総費用を確認することをおすすめします。
Q4. 両方に依頼するのは二度手間になりませんか。
A. むしろ実務では、行政書士に在留資格申請を、登録支援機関に生活支援を、それぞれ依頼する企業が多く見られます。
行政書士法人が登録支援機関の登録も受けている場合は、窓口を一本化できることもあります。
Q5. 採用が決まってから相談しても間に合いますか。
A. 間に合うケースもありますが、おすすめはしません。
採用予定者が特定技能として就労できる条件を満たしているか、必要書類は揃っているか、支援体制をどう整えるかといった検討には一定の時間がかかります。
採用活動を始める前の段階で相談しておくと、スケジュールに無理が生じにくくなります。
9. 依頼先を選ぶ際に確認しておきたいポイント
登録支援機関にせよ行政書士にせよ、「どこへ依頼するか」を費用だけで判断すると、あとで想定外の対応漏れに気づくことがあります。
契約前に、次のような点を確認しておくと安心です。
① 業務範囲が明確かどうか
在留資格申請の支援、支援計画の実施、入国後のフォロー、定期面談、行政機関への同行のうち、どこまでを対応してもらえるのかを具体的にすり合わせておきましょう。
「当然含まれていると思っていた」という思い込みは、トラブルの典型的な原因になります。
② 制度改正への対応状況
重要な判断材料です。
外国人雇用に関する制度は改正が続いているため、最新の運用要領や分野別運用方針を踏まえた説明ができるかどうかは、依頼先の実務対応力を測る目安になります。
③ 地域事情への理解
南魚沼地域のような豪雪地帯では見過ごせない要素です。
冬季の通勤手段の確保、除雪期間中の生活支援、公共交通が限られる地域での住居探しなど、都市部とは異なる事情を踏まえた提案ができるかどうかで、実務のスムーズさが変わってきます。
④ 継続して相談しやすい体制かどうか
こちらも確認しておきたい点です。
外国人雇用では採用後にもさまざまな疑問が生じるため、電話、メール、オンライン相談、対面のいずれで継続的にやり取りできるかを事前に把握しておくと安心です。
10. 今後の制度動向と企業が備えておきたいこと
外国人雇用に関する制度は、人材需要や社会情勢に応じて見直しが続いています。
技能実習制度に代わる「育成就労制度」は2027年4月1日の施行が予定されており、特定技能制度との接続や運用要領の詳細は今後も更新される見込みです。
数年前の情報をそのまま参考にすると、現行制度とずれが生じる可能性があるため、採用計画を立てる際は出入国在留管理庁や厚生労働省など公的機関の最新情報を確認することが欠かせません。
➡ 参考:出入国在留管理庁「トップページ」
➡ 参考:厚生労働省「外国人雇用対策 Employment Policy for Foreign Workers」
企業側でできる備えとしては、採用計画の初期段階で「在留資格の要件確認」「支援体制の決定」「必要書類の洗い出し」を並行して進めておくことが挙げられます。
採用が決まってから慌てて相談先を探すのではなく、募集をかける前の段階で行政書士や登録支援機関に相談しておくことで、手続きの遅れや追加費用を防ぎやすくなります。
11. まとめ : 自社に合った依頼先を見極めるために
登録支援機関と行政書士は、どちらも外国人雇用を支える重要な存在ですが、法律上の役割はまったく異なります。
登録支援機関は特定技能外国人への生活支援・法定支援を担い、行政書士(申請取次行政書士)は在留資格など官公署への申請手続きを専門とします。
優劣の関係ではなく、それぞれの専門分野を理解した上で、必要に応じて両者と連携することが、円滑な外国人採用につながります。
当事務所は南魚沼市・魚沼市・湯沢町を中心に、新潟県内の企業様から就労系在留資格に関するご相談を承っております。
制度の細かな確認から申請書類の作成支援まで、状況に応じてサポートいたします。
外国人採用をご検討中の企業様は、募集をかける前の段階でお気軽にご相談ください。
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参考・出典
• 出入国在留管理庁「特定技能制度」
• 出入国在留管理庁「特定技能運用要領」(1号特定技能外国人支援に関する運用要領を含む)
• 出入国在留管理庁「在留資格認定証明書交付申請」(申請取次者について)」
• 出入国在留管理庁「登録支援機関の登録(更新)申請」
• 出入国在留管理庁「在留資格「特定技能」」(特定技能に係る在留諸申請提出書類)
• 出入国在留管理庁「トップページ」
• 厚生労働省「外国人雇用対策 Employment Policy for Foreign Workers」
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