「実家の裏山を相続したけれど、どこからどこまでが自分の土地か分からない」
「遠方に住んでいて、雪深い南魚沼の山を管理し続ける自信がない」
近年、このようなご相談が急増しています。
かつては貴重な財産だった「山」が、今や「負の遺産(負動産)」として次世代の重荷になってしまうケースは少なくありません。
しかし、2024年(令和6年)4月から始まった「相続登記の義務化」をはじめ、山林を取り巻く法律は今、大きな転換期を迎えています。
「よく分からないから」と放置しておくことは、将来的に大きなペナルティを招くリスクがあります。
本記事では、南魚沼地域特有の事情を踏まえ、相続した山林の管理方法や最新の法律、そして行政書士にできるサポートについて、専門用語を噛み砕いて徹底解説します。
1.知らないと損をする「山林管理」の最新ルール
「山なんて放っておいても大丈夫だろう」という考えは、現代では通用しなくなっています。
まずは、相続した際に避けては通れない2つの大きな義務を確認しましょう。
① 相続登記の義務化(2024年4月1日〜)
これまでは相続登記(名義変更)をしなくても罰則はありませんでしたが、現在は「相続を知った日から3年以内」に登記をすることが法律で義務付けられました。
正当な理由なく放置した場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
これは過去に相続した山林にも適用されるため注意が必要です。
② 森林法に基づく「届出」の義務
山林を相続した場合、登記とは別に、その土地がある市町村長(南魚沼市など)へ「森林の土地の所有者届出」を出さなければなりません。
期限は相続した日から90日以内で、こちらも怠ると10万円以下の過料の対象となります。
行政が「誰が山の持ち主か」を把握し、災害防止や適切な整備を行うために必要な手続きです。
2.南魚沼における山林管理の現状と課題
新潟県南魚沼市は、日本屈指の豪雪地帯であり、特有の管理課題を抱えています。
① 厳しい気候による「雪害」のリスク
南魚沼の山林で最も多いトラブルの一つが、積雪による倒木や枝折れです。
手入れが行き届かない人工林(杉など)が雪の重みで折れ、隣接する道路を塞いだり、近隣の建物や電線を損壊させたりする事例が発生しています。
所有者には「工作物責任」があり、管理不足で他人に損害を与えた場合、多額の賠償責任を問われる可能性もあります。
② 境界不明と空き家・空き地問題
南魚沼では、先祖代々の山が「公図(地図)」と現況で大きくズレている、あるいは境界杭が雪崩や風化で消失しているケースが多々あります。
また、所有者が首都圏へ移住し、地元に管理できる親族がいない「不在地主」の増加が、適切な管理をより困難にしています。
➡空き家・空き地問題については「こちらの記事もおすすめ」
3.南魚沼で多い事例と、今後予想されること
南魚沼で多い事例や、地域の傾向から見る将来予測です。
• 事例:境界が分からず「相続土地国庫帰属制度」が使えない
「いらない山を国に返したい」という相談が増えていますが、新設された「国庫帰属制度」を利用するには、境界が明確であることなどの厳しい条件があります。
南魚沼の山林は境界が曖昧なことが多く、申請前の調査に苦労するケースが目立ちます。
• 今後:環境価値(J-クレジット)への注目
一方で、放置されていた山林が「二酸化炭素の吸収源」として価値を持つ時代が来つつあります。
適切に管理されている森林は、企業にクレジットを売却できる可能性もあり、単なる「負担」から「資源」への転換が期待されています。
➡ 環境価値(J-クレジット)については「こちらの記事もおすすめ」
• 今後:規制の強化
所有者不明土地問題の解消に向け、今後さらに行政による管理指導は厳しくなると予想されます。
早めの対策が、結果として最もコストを抑えることにつながります。
4.管理できない山をどうすべきか?3つの選択肢
「どうしても管理が難しい」という場合、主に以下の3つの道があります。
① 管理を委託する(森林組合など)
南魚沼市には「南魚沼市森林組合」など、専門の組織があります。
間伐や枝打ちなどの手入れを委託することで、資産価値を維持し、災害を防ぐことができます。
② 売却・譲渡を検討する
隣地の所有者や林業事業体への売却、あるいは最近では「山を売りたい人と買いたい人を繋ぐマッチングサイト」も活用されています。
③ 国に返す(相続土地国庫帰属制度)
一定の審査手数料と10年分の管理費相当額を納めることで、土地を手放すことができる制度です。
ただし、前述の通りハードルは高めです。
➡ 相続土地国庫帰属制度については「こちらの記事もおすすめ」
5.行政書士ができること・できないこと
山林の相続や管理について、行政書士は「書類作成と調査の専門家」としてサポートします。
① 行政書士ができること
• 森林法に基づく届出の代行: 市役所への90日以内の届出を迅速に行います。
• 遺産分割協議書の作成: 親族間で誰が山を引き継ぐか話し合った結果を、法的な書類にまとめます。
• 土地利用の許認可申請: 山をキャンプ場にしたい、太陽光パネルを設置したいといった際の、開発許可申請を行います。
• 公的書類の収集・調査: 登記簿や公図、森林計画図などを取り寄せ、権利関係を整理します。
② 行政書士ができないこと
• 登記の実行(法務局への申請): 実際の登記手続きは司法書士の業務です。
• 紛争の解決: 境界や相続を巡って争いがある場合、交渉や裁判の代理人は弁護士の業務です。
• 測量: 境界標を設置するための実地測量は土地家屋調査士の業務です。
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6.まとめ:放置する前に、まずは「現状把握」から
山林の管理は、時間が経てば経つほど境界が分からなくなり、法的な義務も複雑化していきます。
南魚沼という豊かな自然を守りつつ、ご自身の負担を減らすためには、早めの専門家への相談が不可欠です。
「まずは何をすればいいのか分からない」という方は、ぜひ一度お近くの行政書士へご相談ください。
出典・参考リンク
• 法務省:「相続登記の義務化について」
• 法務省:「相続土地国庫帰属制度について」
• 林野庁:「森林の土地の所有者届出制度」
• 新潟県:「森林の土地の所有者届出制度」
• 南魚沼市:「農地・林業(届出・補助金情報)」
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※本記事は令和7年12月時点に入手可能な情報をもとにしています。年度によって制度内容が変更されている可能性があります。必ず最新の法改正情報などでご確認ください。