超高齢社会を迎えた日本において、介護タクシー事業は今後ますます需要が高まる分野です。
2021年時点で70歳以上の高齢者数は3640万人と過去最多を記録しており、移動支援のニーズは年々拡大しています。
この記事では、介護タクシー事業の開業を検討されている方に向けて、事業の基礎知識から許可取得の流れ、行政書士のサポート内容まで解説いたします。
1.介護タクシーとは何か?
① 正式名称と定義
介護タクシーは、正式には「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)」と呼ばれます。
自力での移動が困難な高齢者や障がい者の方を対象に、車椅子やストレッチャーに対応した専用車両で移動支援を行うサービスです。
② 利用対象者
介護タクシーを利用できるのは、以下の方々に限定されています。
• 身体障害者福祉法第4条に規定する身体障害者手帳の交付を受けている方
• 介護保険法第19条に規定する要介護・要支援認定を受けている方
• 肢体不自由、内部障害、知的障害、精神障害等により単独での移動が困難な方
③ 介護保険タクシーと福祉タクシーの違い
「介護タクシー」には、介護保険適用の有無により2つのタイプが存在します。
【 介護保険タクシー(介護保険適用) 】
• 対象者:要介護1以上の認定を受けた方
• サービス内容:乗降介助、通院先での受診手続きなど
• 運転者資格:普通二種免許+介護職員初任者研修が必須
• 利用目的:通院、公共施設利用など日常生活に必要な外出に限定
• 事業形態:法人格が必須
【 福祉タクシー(介護保険適用外) 】
• 対象者:要介護・要支援の方、身体障害者の方など
• サービス内容:車両での移動のみ
• 運転者資格:普通二種免許のみ
• 利用目的:制限なし(旅行、レジャーなども可能)
• 事業形態:個人事業主でも開業可能
法令上、「介護タクシー」と「福祉タクシー」の明確な定義づけはされていません。
両者とも同じ「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)」の許可を受けた事業者であり、介護保険適用の可否は、その事業者が別途介護事業所の指定を受けているかどうかで決まります。
2.なぜ介護タクシーは参入しやすいのか?
〈 一般タクシーとの比較 〉
① 一般タクシー(個人タクシー)の場合
• 新規参入:一部地域を除き個人タクシーのみ許可
• 取得条件:タクシー・ハイヤー事業者として10年以上の雇用経験が必須
• 年齢制限:65歳未満
② 介護タクシーの場合
• 新規参入:個人・法人を問わず参入可能
• 取得条件:タクシー事業の経験は不要
• 年齢制限:なし
• 最低車両数:1台から開業可能
介護タクシーは業界未経験者でも開業できる点が大きな魅力です。
定年退職後のセカンドキャリアとして始める方も少なくありません。
③ 初期投資の違い
• 一般タクシー:車両500万円程度+免許譲渡費用250万円前後
• 介護タクシー:車両1台から開業可能、初期投資150万〜300万円程度
3.介護タクシー開業に必要な許可要件
介護タクシーを開業するには、国土交通省の各運輸局から許可を取得する必要があります。
許可を得るためには、以下の要件をすべて満たさなければなりません(以下は代表的な項目を抜粋して記載)。
① 人的要件
【 運転者(ドライバー) 】
• 普通自動車第二種運転免許の保有が必須
• セダン型などの一般車両を使用する場合:介護職員初任者研修などの介護資格が必須
• 福祉車両を使用する場合:介護資格は努力義務
【 運行管理者・整備管理者 】
• 使用車両が5台未満の場合:資格不要
• 使用車両が5台以上の場合:有資格者が必須
② 設備要件
【 営業所 】
• 営業区域内に設置
• 事務所および休憩・仮眠室があること
• 土地・建物の使用権限が3年以上
• 関係法令に抵触しないこと
• 自宅での開業も可能(要件を満たす必要あり)
【 車庫 】
• 原則として営業所に併設
• 車両の長さ×幅+1m以上のスペースが必要
• 使用権限が3年以上
【 車両 】
• 1両以上の事業用自動車を配置
• 福祉車両または一般車両
• リース契約期間が概ね1年以上
③ 資金要件
• 所要資金の合計額の50%以上
• かつ、事業開始当初に要する資金の100%以上の自己資金を、申請日以降常時確保
• 所要資金の目安:軽自動車使用で約200万円、普通自動車使用で約300万円
④ 法令遵守要件
• 1年以上の懲役または禁錮の刑に処せられ、執行終了後2年を経過していない者などは許可不可
• 運輸局によっては法令試験あり(合格率は比較的高い)
• 関東運輸局管内などでは法令試験免除
4.許可取得までの流れ
許可申請から営業開始までには、約3〜4ヶ月の期間が必要です。
【ステップ1】 事前準備(約1〜2ヶ月)
• 二種免許の取得(費用:約20万円、期間:約1ヶ月)
• 介護資格の取得(介護保険タクシーの場合)
• 営業所・車庫の確保(契約前に必ず、介護タクシー事業に使用可能か、許可要件を満たすか確認)
• 車両の選定(購入は許可後でOK)
【ステップ2】 許可申請(約2週間)
管轄の運輸支局へ以下の書類を提出
• 許可申請書
• 事業計画書
• 運賃・料金設定届
• 営業所・車庫の賃貸借契約書
• 車両の見積書
• 残高証明書など
• 申請手数料:登録免許税3万円
【ステップ3】審査・法令試験(約2〜2.5ヶ月)
• 法令試験(運輸局により免除の場合あり)
• 書類審査
【ステップ4】 許可後の準備(約2週間〜1ヶ月)
• 車両の本契約・納車
• 事業用ナンバーへの変更
• タクシーメーターの設置
• 任意保険の加入
• 許可後6ヶ月以内に運輸開始が必須
【ステップ5】 運輸開始届の提出
運輸開始後30日以内に管轄運輸支局へ提出
5.南魚沼市とその周辺地域の需要
① 南魚沼市の現状
南魚沼市は新潟県南部に位置する人口約5.2万人の地方都市です。
② 深刻な高齢化
• 高齢化率35.3%(全国平均を大きく上回る)
• 2045年には2.3人に1人が高齢者になると推計
③ 公共交通の課題
• 市民バスは土日祝日運休
• 広大な市域(584.55㎢)に対し人口密度が低く、バス路線でカバーできない地域が存在
• 高齢者のバス停までの移動や乗り換えが困難
④ 南魚沼市特有の需要
【 豪雪地帯ならではのニーズ 】
• 特別豪雪地帯に指定(積雪2〜3m)
• 冬季(11月〜3月)は通院困難で介護タクシーの需要が特に高まる
• 高齢者の自家用車運転が危険
【 医療機関への通院需要 】
• 南魚沼市民病院、魚沼基幹病院などへの定期通院
• 透析患者の週3回の通院
• リハビリテーションのための定期通院
【 周辺地域への展開可能性 】
• 魚沼市、湯沢町、十日町市など周辺地域も高齢化が進行
• 営業エリアを拡大することで安定した事業運営が可能
6.開業時の注意点
〈 よくある失敗 〉
① 資金計画の甘さ
• 初期費用だけを準備し、運転資金を確保せず資金繰りに困窮
• 対策:開業後1〜2年分の運転資金を別途用意
② 営業所・車庫の契約ミス
• 契約後に建築基準法や都市計画法に抵触することが判明
• 対策:契約前に行政書士などの専門家に確認
③ 二種免許取得の遅れ
• 深視力検査で不合格となり、免許が取得できなかった
• 対策:最優先で二種免許を取得すること
④ 顧客獲得の見込み不足
• 開業したものの、営業方法が分からず顧客が獲得できない
• 対策:開業前から病院、介護施設、ケアマネージャーとの関係構築を開始
7.活用できる補助金・助成金
介護タクシーの開業には、国や自治体から様々な補助金・助成金制度が用意されています。
〈 主な制度 〉
① 地域公共交通確保維持改善事業費補助金
• 実施機関:国土交通省
• 補助率:費用の3分の1
• 対象:福祉車両の導入など
② 小規模事業者持続化補助金
• 補助額:最大50万円
• 補助率:2/3
• 対象:販路開拓費用(広告、ホームページ作成など)
③ 自治体独自の補助金
• 都道府県や市区町村で独自の補助制度がある場合あり
• 確認方法:開業予定地の運輸局、自治体の交通政策課、商工会など
④ 重要な注意点
• 補助金・助成金の多くは後払い
• 予算が限られているため、事前に募集期間や条件を確認
8.行政書士ができること、できないこと
〈 ✔ 行政書士ができること 〉
① 許可申請書類の作成・提出代行
• 一般乗用旅客自動車運送事業の許可申請書一式の作成
• 事業計画書、運賃・料金設定届の作成
• 管轄運輸支局への提出代行
② 許可要件の確認と事前相談
• お客様の状況が許可要件を満たしているかの確認
• 営業所・車庫の物件が要件を満たすかの調査
• 前面道路の幅員調査
③ 法令試験対策サポート
• 法令試験対策資料の提供
• 過去問題の提供と解説
④ 許可取得後の手続きサポート
• 運輸開始届の作成・提出
• 変更認可申請(車両の追加、営業所の移転など)
⑤ 法人設立サポート
• 株式会社・合同会社の設立手続き
• 定款の作成
⑤ 開業全般のコンサルティング
• 開業スケジュールの立案
• 事業計画作成のアドバイス
〈 ✖ 行政書士ができないこと 〉
• 法人登記手続き(司法書士の業務)
• 税務申告・税務相談(税理士の業務)
• 社会保険・労働保険の手続き(社会保険労務士の業務)
〈 行政書士に依頼するメリット 〉
• 時間と労力の大幅削減:本業に集中できる
• 高い許可取得率:書類の不備や要件不足によるリスクを最小限化
• スピーディーな開業:最短での許可取得が可能
• トータルサポート:開業前の相談から運輸開始まで一貫サポート
行政書士費用の目安:10万〜30万円程度
9.よくある質問(Q&A)
Q1. 介護タクシーは儲かりますか?
A. 月間の粗利益は20万〜50万円程度が目安です。
稼働率の向上、リピーター獲得、営業エリアの拡大が収益向上の鍵です。
Q2. 個人事業主と法人、どちらで開業すべきですか?
A. 福祉タクシーなら個人事業主、介護保険タクシーなら法人が必要です。
将来的な事業拡大計画も考慮して選択してください。
Q3. 二種免許がなくても申請できますか?
A. 申請自体は可能ですが、許可が下りるまでに取得が必要です。
事前に取得することを強く推奨します。
Q4. 自宅を営業所にできますか?
A. 可能ですが、事務所・休憩スペース、車庫の確保、関係法令への適合が必要です。
マンションの場合は管理規約の確認が必須です。
Q5. 車両はリースでも大丈夫ですか?
A. リースでも問題ありませんが、契約期間が概ね1年以上である必要があります。
Q6. 福祉車両は必須ですか?
A. 必須ではありません。
一般車両でも開業可能ですが、運転者に介護資格が必須となります。
10.まとめ:介護タクシー開業を成功させるために
介護タクシー事業は、高齢化社会において今後ますます需要が高まる将来性のある事業です。
特に南魚沼市のような高齢化率が高く、公共交通が限られ、豪雪地帯である地域では、ドア・ツー・ドアの移動支援を提供する介護タクシーのニーズは極めて高いといえます。
一般タクシーに比べて参入障壁が低く、1台からの小規模開業が可能なため、定年退職後のセカンドキャリアとしても最適です。
しかし、開業には国土交通省の許可が必要であり、人的要件・設備要件・資金要件など、満たすべき条件は多岐にわたります。
許可申請書類の作成には専門知識が必要で、不備があれば申請が却下され、開業が遅れる恐れもあります。
行政書士は許可申請手続きのプロフェッショナルです。
要件確認から書類作成、運輸局への提出代行、許可取得後のフォローまで、開業のあらゆる段階でサポートいたします。
ご自身で申請される場合に比べ、時間と労力を大幅に削減でき、高い確率で許可を取得できます。
介護タクシー開業をお考えの方は、ぜひ一度、専門の行政書士にご相談ください。
お客様の状況に合わせた最適な開業プランをご提案し、スムーズな開業をサポートいたします
参考・出典
• 国土交通省 北陸信越運輸局:「一般旅客自動車運送事業に関する公示等」
• 国土交通省 北陸信越運輸局PDF:
「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)の許可等の取扱いについて」
• 南魚沼市公式:「市民バス」
• 南魚沼市公式:「医療機関」
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