「もし自分に何かあったとき、集めてきたグッズや描き続けた作品データはどうなるんだろう?」
SNSやオタクコミュニティの中で、こうした声を見かけることが増えてきました。
かつての相続といえば不動産や預貯金が中心でしたが、今やフィギュアや限定グッズといったコレクション、同人誌・イラストの著作権、そしてネット上の販売収益や各種アカウントも立派な財産です。
南魚沼市・魚沼市周辺にお住まいの方の中には、冬の豪雪というリスクを肌で感じているからこそ、若いうちから「もしものとき」を考え始める方も少なくありません。
本記事では、コレクターや創作活動をしている方が今すぐ知っておくべき相続・遺言の仕組みを、できる限りわかりやすくお伝えします。
1. 推しグッズ(コレクション)は相続でどう扱われる?
〈 法律上の位置づけ 〉
アニメキャラクターのフィギュア、アイドルのサイン入りグッズ、限定版ブルーレイ、ヴィンテージのプラモデル……これらはすべて法律上「動産」に分類されます。
不動産(土地・建物)とは異なる区分ですが、れっきとした財産であり、相続の対象です。
一般的な家具や家電と同じ扱いとはいえ、プレミアがついているコレクションの場合は相続税の評価対象になる可能性もあります。
特に市場価値が高い限定品やレアアイテムは、専門の査定が必要になることがあります。
〈 「遺言書なし」で起こりうる悲劇 〉
遺言書がない場合、財産は民法の規定に基づき「法定相続人」(配偶者・子・親・兄弟姉妹など)が引き継ぎます。
問題は、グッズの価値やコレクターとしての思いを理解していない親族が相続した場合です。
「ただの人形だから」「捨てておいて」という判断のもと、数十万円の価値があるフィギュアが処分されてしまうことは、決して珍しくありません。
遺言書に「誰に、何を渡すか」を明記しておくことが、コレクターにとって最大の防衛策です。
2. 同人誌・イラスト・楽曲の「著作権」は誰のもの?
〈 著作権は自動的に発生する 〉
自分で描いたイラスト、書いた同人誌、作曲した楽曲には、創った瞬間に自動的に著作権が発生します。
特許権とは違い、登録申請などの手続きは一切不要です(著作権法第17条第2項)。
これを「無方式主義」と呼びます。
➡ 参考:e-Gov法令検索「著作権法」
〈 著作権の保護期間と相続 〉
著作権(財産権)は、著作者の死後70年間存続します(著作権法第51条第2項)。
この期間中は相続の対象となります。
つまり、あなたが今日亡くなったとしても、昨年描いたイラストの著作権は最長70年間、あなたの相続人が保有することになります。
➡ 参考:文化庁「著作物等の保護期間の延長に関するQ&A」
〈 注意が必要な「二次創作」の著作権 〉
公式キャラクターを題材にした二次創作物にも、作者自身の創作性が認められれば「二次的著作物」として著作権が発生します(著作権法第2条第1項第11号)。
ただし、二次的著作物を利用するには、元の著作権者(原著作者)の許諾が必要です(著作権法第27条・第28条)。
したがって、二次創作の著作権を相続した人が「商業出版したい」「再配布したい」と考えても、公式側の許諾なしに行えばトラブルになります。
この点は非常に重要ですので、遺言書を作成する際に注意事項として明記しておくことをおすすめします。
〈 著作権の相続後に「移転登録」できる 〉
令和元年(2019年)7月1日から、相続による著作権移転の登録制度が設けられました。
この登録は義務ではありませんが、権利の移転を第三者に対して対抗(主張)するための証拠として機能します。
➡ 参考:文化庁「著作権に関する登録制度についてよくある質問」
➡ 著作権移転登録については「こちらの記事もおすすめ」
3. デジタル資産・ネット収益の相続——ここが一番複雑
〈 「デジタル遺産」とは何か 〉
スマートフォンやパソコンの中、あるいはインターネット上に存在する財産的価値のある情報を、総称して「デジタル遺産」と呼ぶことがあります。
代表的なものとして次のものが挙げられます。
• SNSアカウント・ブログ・YouTube チャンネル
• 電子書籍・デジタルコンテンツの購入データ
• BOOTH・DLsite・pixivFANBOXなどでの販売収益
• 暗号資産(仮想通貨)
• ネットバンクの残高
〈 「利用権」と「財産権」の大きな違い 〉
KindleやApple Musicで購入した電子書籍や音楽は、多くの場合サービスの利用規約により「一代限りの利用権」として扱われており、第三者への譲渡や相続が認められていません。
たとえ遺言書に「Kindleライブラリを子に渡す」と書いても、規約上は実現できないケースがほとんどです。
一方、BOOTH・DLsiteなどのクリエイター向けプラットフォームに蓄積した未払い収益(売上金)は金銭債権として相続対象になります。
ただし、アカウントの引き継ぎや残高の受取手続きはプラットフォームごとに異なり、一部では遺族による手続きが困難なケースもあります。
事前に各サービスの規約を確認し、対応策を準備しておくことが大切です。
〈 パスワード管理の問題 〉
「ログインできないから手続きができない」というのは、デジタル遺産で最も多い問題です。
しかし、パスワードを遺言書に直接書くことはセキュリティ上おすすめできません。
遺言書には「パスワード管理表の保管場所(例:自宅金庫の中のノート)」のみを記載し、詳細情報は別途管理することをご検討ください。
4. 大切なコレクションと権利を希望通りに渡す——遺言書の基本と書き方
〈 遺言書の種類 〉
大きく分けて2種類があります。
① 自筆証書遺言
全文・日付・氏名を自分で手書きし、押印するもの。
財産目録はパソコン作成可。
費用はほぼかかりませんが、形式ミスが多く、無効になるリスクもあります。
2020年7月からは、法務局で保管してもらえる「自筆証書遺言書保管制度」が始まり、検認手続きが不要になりました。
➡ 参考:法務省「自筆証書遺言書保管制度」
➡ 自筆証書遺言書保管制度については「こちらの記事もおすすめ」
② 公正証書遺言
公証役場で、公証人が作成に関与する遺言書。費用はかかりますが、形式面でのミスがなく、紛失・改ざんのリスクがほぼゼロです。
特に著作権や複雑なデジタル資産が絡む場合は、公正証書遺言が安心です。
➡ 公正証書遺言と自筆証書遺言の比較については「こちらの記事もおすすめ」
〈 法定相続人以外に渡したい場合——「遺贈」という方法 〉
家族以外の友人や、信頼できるコレクター仲間にコレクションや著作権を譲りたい場合は、「遺贈(いぞう)」という方法を使います。
遺言書に「〇〇(氏名・住所)に△△を遺贈する」と明記することで、法定相続人以外の方にも財産を渡せます。
【 著作権を遺贈する場合の文言例(想定例) 】
遺言書に著作権を含む遺贈を記載する際の、あくまで参考としての文言例を示します(実際の作成は専門家に依頼されることをおすすめします)。
(想定例) : 「遺言者は、自らが執筆・描画した漫画『〇〇(作品名)』のデジタルデータ一式及び当該作品に関する一切の著作権(財産権)を、〇〇県〇〇市〇〇町〇番地 〇〇(氏名)に遺贈する。なお、上記著作物がいわゆる二次的著作物に該当する場合は、原著作権者の許諾が必要である旨を受遺者に申し添える。また、BOOTHショップ名『〇〇』から発生している未払い販売収益の受領権もこれに含める。」
〈 デジタルアカウントには「死後事務委任契約」をセットで 〉
遺言書だけでは、SNSアカウントの削除、ネットショップの閉鎖、パスワードの整理といったデジタル面の実務的作業には対応しきれません。
そこで活用されているのが「死後事務委任契約」です。
これは、信頼できる人(友人や行政書士など)に対して、「自分が死亡した後に行ってほしい事務手続き」をあらかじめ委任しておく契約です。
「ログイン情報を使ってショップを閉鎖する」「成人向けコンテンツを遺族が見る前に専門業者に処理を依頼する」といった指示を盛り込むことができます。
5. 【想定例】 南魚沼・魚沼地域ならではの事情とその対策
南魚沼市・魚沼市周辺は、日本有数の豪雪地帯です。
冬場の積雪は2メートルを超えることもあり、特に山間部では「雪が降り積もったら外に出られない」という状況が何週間も続くことがあります。
こうした地域特有の事情が、コレクション管理にも影響してきます。
【 想定例 ① 】 蔵に眠るコレクションと冬の問題
南魚沼市在住のAさん(30代・独身)は、自宅の蔵に大量のヴィンテージプラモデルを収蔵していました。
Aさんが突然亡くなった場合、冬場は降雪で蔵への道がふさがれ、親族がすぐに確認に行けない状況が想定されました。
さらに、蔵の換気が滞ることで、コレクションが湿気で劣化するリスクもありました。
Aさんは行政書士に相談のうえ、以下の対策を講じました(あくまで想定例です)。
• 公正証書遺言を作成し、コレクター仲間への遺贈を明記
• 冬期間の管理委託と死後の譲渡方法を遺言書に付記
• 行政書士を遺言執行者に指定し、雪解け後にスムーズな引き渡しができる体制を整備
これにより、親族に負担をかけず、かつコレクションの価値を守った形での承継が実現できる見込みとなりました。
【 想定例 ② 】 同人活動の収益とネット環境の問題
魚沼市在住のBさん(20代・女性・一人暮らし)は、イラストをBOOTHとpixivFANBOXで販売していました。
月数万円の収益がありましたが、家族はBさんの活動を全く知らない状況でした。
Bさんは行政書士との相談を経て、次の対策を取ることにしました(想定例)。
• 遺言書に「ネット上の販売収益の受領権を友人Cさんに遺贈する」旨を記載
• 死後事務委任契約で「アカウントのパスワード一覧(別保管)に基づき、所定の手続きを行うこと」を友人Cさんに委任
• エンディングノートに各アカウントのプラットフォーム名と「パスワード一覧は〇〇の引き出しに保管」と記載
6. 行政書士に「できること」と「できないこと」
相談前に役割の範囲を把握しておくと、スムーズです。
〈 ✔ 行政書士が対応できる主な業務 〉
① 遺言書作成のサポート : 内容の起案、公証役場との調整、自筆証書遺言の書き方チェック
② 遺産分割協議書の作成 : 相続人全員の合意内容を法的な書類にまとめる
③ 死後事務委任契約の受任 : デジタルアカウントの閉鎖や整理など、死後の事務手続きを担う
④ 著作権移転登録の手続きサポート : 文化庁への移転登録申請を支援
➡ 参考:文化庁「著作権の登録手続き」
⑤ エンディングノートの整理支援 : デジタル資産・アカウント情報の整理方法をアドバイス
➡ エンディングノートについては「こちらの記事もおすすめ」
〈 ✖ 行政書士が対応できない業務(他士業の領域) 〉
① 相続人間の争いの仲裁・交渉 ➡ 弁護士
② 相続税の計算・申告 ➡ 税理士
③ 不動産の名義変更(相続登記) ➡ 司法書士
遺産の内容が複雑な場合は、複数の専門家が連携して対応することもあります。
行政書士はその「総合窓口」として機能することが多く、必要に応じて他の専門家に橋渡しすることも可能です。
7. よくある疑問と答え(FAQ)
Q1. 遺言書がなければ、コレクションはどうなりますか?
A. 法定相続人が引き継ぎます。
配偶者がいれば配偶者と子が、いなければ親や兄弟姉妹が相続人となります。
グッズの価値を知らない親族が「捨ててしまう」「売り飛ばす」ことも珍しくないため、特定の人に渡したい場合は必ず遺言書を作成してください。
Q2. 成人向けの同人誌やグッズが大量にあります。家族に見られたくないのですが……
A. 死後事務委任契約の中で、「遺族が内容を確認する前に、あらかじめ指定した業者に買取または廃棄を依頼すること」と定めることが可能です。
信頼できる友人や行政書士に委任しておくことが有効な対策です。
Q3. BOOTHやDLsiteの売上金は相続できますか?
A. 未払いの売上金(金銭債権)は相続の対象です。
ただし、各プラットフォームの規約によって手続きが異なります。
アカウントの引き継ぎ自体は認められていないケースが多いため、遺言書で「販売収益の受領権を特定の人に遺贈する」と明記し、アカウント情報は死後事務委任で処理することをお勧めします。
Q4. 遺言書にパスワードを書いてもいいですか?
A. 遺言書は相続人全員が閲覧できる可能性があります。
セキュリティの観点から、遺言書にはパスワード情報の「保管場所のみ」を記載し、実際のパスワード一覧は別途管理することをお勧めします。
Q5. 二次創作の著作権も相続できますか?
A. 二次創作物にも、作成者の創作性が認められる部分については「二次的著作物」として著作権が発生し、相続の対象となります(著作権法第2条第1項第11号)。
ただし、その著作物を利用(再配布・販売など)するには原著作権者の許諾が必要です(著作権法第28条)。
相続人が知らずに再配布等を行うとトラブルになりますので、遺言書に注意事項を付記しておくことが大切です。
Q6. 遺言書を書いた後で内容を変えることはできますか?
A. できます。
遺言書はいつでも内容を変更・撤回することが可能です。
コレクションの状況やお付き合いの変化に合わせて、定期的に見直すことをお勧めします。
8. 2026年現在の課題と、今できる現実的な解決策
課題① プラットフォームの利用規約が法律より優先される
現状では、SNSやコンテンツ配信サービスの利用規約が法律上の相続ルールより優先されることがあります。
「アカウントを相続させたい」と遺言書に書いても、規約で禁止されていれば実現できません。
➤ 今できる対策
各プラットフォームの規約を確認のうえ、できる範囲でエンディングノートに情報を整理しておく。
収益の受け取りについては金銭債権として別途遺言書に記載する。
課題② デジタル遺産の「評価」が難しい
暗号資産やネット収益は変動が大きく、相続税の評価が難しいケースがあります。
相続税が発生する規模の財産がある場合は、税理士への相談も必要になります。
➤ 今できる対策
財産の概要をエンディングノートに記録し、相続人が把握できるようにしておく。
課題③ 「生前整理」への意識がまだ低い
「遺言書は高齢者のもの」と思っている方が多いですが、コレクターや創作活動をしている方にとって、遺言書・死後事務委任契約は年齢に関係なく有効なツールです。
特に南魚沼・魚沼地域のように、冬の孤立リスクがある地域では、若い方でも早めの備えが重要です。
➤ 今できる対策
遺言書と死後事務委任契約を一体で整備する。
公正証書遺言が理想ですが、まずは自筆証書遺言から始め、法務局の保管制度を活用することも有効です。
〈 「遺言書+死後事務委任契約」のセットが現状の最善策 〉
法改正を待つより、今ある制度をフル活用する方が確実です。
「遺言書で財産を守り、死後事務委任契約でデジタル資産の実務を整理する」という2本柱の体制が、2026年現在において最も現実的かつ確実な対策です。
9. まとめ——「好き」を未来に残すために、今から動こう
推し活やコレクション、同人活動は、あなたの人生を豊かに彩るものです。
しかしその熱量がどれだけ高くても、準備がなければ大切な財産が「ただの不用品」として処分されてしまうリスクがあります。
• コレクション(動産)は遺言書で「誰に渡すか」を明記する
• 著作権(死後70年間有効)は相続対象。遺言書で遺贈先を指定できる
• デジタル資産・ネット収益は死後事務委任契約とセットで管理する
• 公正証書遺言が最も確実だが、まずは自筆証書遺言書保管制度を活用するのも一手
何から手をつければいいかわからない方も、まずは「自分にはどんな財産があるか」をリストアップするところから始めてみてください。
【 こんなお悩みはありませんか? 】
• 「自分のコレクションを特定の友人に譲りたい」
• 「ネット上の収益を確実に引き継がせたい」
• 「遺言書を作りたいけど、何から始めたらいいかわからない」
• 「死後事務委任契約って自分に必要?」
行政書士などの専門家が、コレクションや著作権・デジタル遺産といった「新しい財産」の相続についても、わかりやすくサポートいたします。
どんな些細なことでも構いません。
まずはお気軽に、お近くの行政書士などの専門家までお問い合わせください。
あなたの「推しへの情熱」と大切な資産の未来を、一緒に考えましょう。
出典・参考
• e-Gov法令検索「著作権法」(昭和四十五年法律第四十八号)
• 法務省「自筆証書遺言書保管制度」
• 文化庁「著作権の登録手続き」
• 文化庁「著作権に関する登録制度についてよくある質問」
• 文化庁「著作物等の保護期間の延長に関するQ&A」
• 文化庁「著作権テキスト」 著作権を学ぶ(教材・講習会)
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