新潟県南魚沼地域は、国内屈指の豪雪地帯として知られ、多くのスキーリゾートが集積する「ウィンタースポーツの聖地」です。
近年、インバウンド需要の回復と国内のスキー人気再燃により、スキー場周辺でのビジネスチャンスが広がっています。
「スキー場で売店を開きたい」「レンタルショップを経営してみたい」——そんな夢を抱く方が増えている一方で、「どんな許可が必要なのか」「手続きはどこから始めればいいのか」という疑問に直面する方も少なくありません。
スキー場という特殊な環境でのビジネスには、一般的な小売業とは異なる許認可や注意点が存在します。
本記事では、行政書士の視点から、スキー場での売店・レンタルショップ開業に必要な手続きを、南魚沼地域での具体的な申請方法とともに詳しく解説します。
1.スキー場ビジネスの全体像を理解する
① ビジネスモデルによって必要な許可が変わる
スキー場で展開できるビジネスは大きく分けて以下の3タイプがあります。
【 物販(売店) 】
新品のスキー用品、ウェア、お土産、飲食物などを販売するビジネスです。
扱う商品によって必要な許可が異なります。
【 レンタル業(リース) 】
スキー板、ブーツ、ウェア、ゴーグルなどを貸し出すビジネスです。
新品のみを扱う場合と、中古品を仕入れる場合で許可の要否が変わります。
【 中古品売買 】
使用済みのギアを買い取って販売したり、レンタル品を中古として売却したりするビジネスです。
この場合、古物商許可が必須となります。
自分のビジネスがどのタイプに該当するのか、または複数を組み合わせるのかを明確にすることが、スムーズな開業への第一歩です。
② 南魚沼エリアでの開業が注目される理由
南魚沼市や湯沢町は、東京から新幹線で約70分というアクセスの良さと、年間降雪量10メートルを超える豊富な雪に恵まれています。
2026年現在、このエリアは従来の「日帰りスキー」から「滞在型スノーリゾート」への転換期を迎えており、単なる用具レンタルだけでなく、地域の魅力を発信する拠点としての役割が期待されています。
2.物販・売店開業に必要な基本手続き
① 個人事業の開業届(税務署)
個人事業主として開業する場合、まず提出が必要なのが「個人事業の開業・廃業等届出書」です。
事業開始から1か月以内に、所轄の税務署へ提出します。
南魚沼市の場合、管轄税務署は小千谷税務署となるケースが多いですが、事業所の所在地によって異なる場合があるため、事前に国税庁のウェブサイトで確認しましょう。
➡ 参考: 国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
開業届と同時に青色申告承認申請書を提出すると、最大65万円の特別控除など税制上のメリットを受けられます。
② 飲食物を販売する場合の許可
【 包装済み食品のみ販売する場合 】
お土産用の菓子や飲料など、包装された食品を販売するだけであれば、原則として特別な許可は不要です。
【 調理・加工を伴う場合 】
その場で温めて提供する、カットして小分けにするなど、何らかの調理・加工行為が伴う場合は、飲食店営業許可または食品製造業許可が必要になります。
申請先は新潟県南魚沼地域振興局 健康福祉環境部(南魚沼保健所)です。
➡ 参考: 新潟県「飲食店営業許可申請」
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【 重要な注意点:HACCP対応 】
2021年6月の食品衛生法改正により、すべての食品等事業者にHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理が義務化されました。
小規模事業者向けの簡易的な基準も用意されていますが、施設基準や記録の保管など、遵守すべき事項があります。
➡ 参考: 厚生労働省「HACCPに沿った衛生管理の制度化」
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③ 酒類を販売する場合
南魚沼は日本酒の名産地でもあり、地酒を販売したいと考える方も多いでしょう。
酒類を販売するには一般酒類小売業免許が必要です。
この免許は税務署に申請しますが、審査には通常2~3か月程度かかります。
人的要件(経営経験、資金要件など)や場所的要件(距離基準は廃止されましたが、経営基盤の審査があります)など、クリアすべき条件が複数あるため、計画段階から専門家に相談することをお勧めします。
➡ 参考: 国税庁「免許申請の手引(販売業免許関係)」
➡ 酒類販売業免許については「こちらの記事もおすすめ」
3.レンタルショップに必須となる古物商許可
① なぜレンタル業に古物商許可が必要なのか
「新品を仕入れて貸すだけなら許可は不要では?」と考える方もいますが、実務上、レンタルショップでは以下のケースが頻繁に発生します。
• 型落ちモデルの中古品を仕入れて貸し出す
• お客様から使用済みの板やブーツを買い取る(下取り)
• レンタルで使用した板を、シーズン終了後に中古品として販売する
これらはすべて「古物営業」に該当するため、古物商許可が必要です。
無許可で古物営業を行った場合、3年以下の懲役または100万円以下の罰金、あるいはその両方が科されるという非常に重い罰則があります(古物営業法第31条)。
「知らなかった」では済まされませんので、必ず取得しておきましょう。
➡ 参考: 警察庁「古物営業・質屋営業について」
② 南魚沼地域での古物商許可申請方法
南魚沼市でレンタルショップを開業する場合、申請先は南魚沼警察署 生活安全課となります。
【 必要書類 】
• 古物商許可申請書
• 住民票の写し(本籍地記載のもの)
• 身分証明書(本籍地の市区町村で発行)
• 略歴書
• 誓約書
• 営業所の使用権原を疎明する書類(賃貸借契約書、使用承諾書など)
• URLの使用権原を疎明する書類(ネット取引を行う場合)
• 営業所の見取り図・周辺図
【 手数料 】
19,000円
【 審査期間 】
申請から許可証交付まで、おおむね40日程度(土日祝日を除く)かかります。
シーズン開始に間に合わせるには、余裕を持った申請が不可欠です。
➡ 参考: 新潟県警察「古物商の許可申請等」
【 取り扱う古物の区分 】
古物は13品目に分類されており、レンタルショップで扱うスキー・スノーボード用品は「スポーツ用品類」に該当します。
申請時に取扱品目を選択する必要があるため、将来的に扱う可能性のある品目もあらかじめ選んでおくと良いでしょう。
➡ 古物商許可申請については「こちらの記事もおすすめ」
4.その他の必要な手続き・届出
① 消防法に基づく届出
不特定多数のお客様が出入りする売店やレンタルショップは、消防法上の「防火対象物」に該当する可能性があります。
【 防火管理者の選任 】
収容人員が30人以上となる場合、防火管理者を選任し、消防署に届け出る必要があります。
防火管理者になるには、消防署または指定機関が実施する講習を受講する必要があります。
➡ 防火管理者については「こちらの記事もおすすめ」
【 消防用設備の設置 】
建物の規模や用途に応じて、消火器、誘導灯、自動火災報知設備などの設置が義務付けられます。
➡ 参考: 総務省消防庁「防火管理制度」
② 法人として開業する場合
株式会社や合同会社として開業する場合は、定款の作成と法人登記が必要です。
定款の作成は行政書士が、登記申請は司法書士が担当します(実務上は連携して進めることが多いです)。
法人化のメリットとしては、社会的信用の向上、税制上の選択肢の増加、従業員の採用がしやすくなるなどがあります。
5.南魚沼エリアでの具体的な開業ステップ
【 ステップ1:事業計画の策定と物件確保 】
まずは、どこで、どんな規模で、誰をターゲットにビジネスを展開するのかを明確にします。
立地の選択肢
• スキー場のゲレンデ内(スキー場との賃貸契約)
• スキー場の麓・駐車場周辺
• 駅前や温泉街の空き店舗
南魚沼市では、創業支援事業を積極的に展開しており、六日町駅近くの「MUSUBI-BA(むすびば)」という創業支援拠点で無料相談が受けられます。
➡ 参考: 南魚沼市「起業・創業」
市の認定を受けた創業支援事業計画に基づいて支援を受けると、登録免許税の軽減や、日本政策金融公庫の創業融資における金利優遇などのメリットがあります。
【 ステップ2:各種許認可の申請 】
事業内容に応じて、以下の許可・届出を順次進めます。
① 税務署へ開業届(開業後1か月以内)
② 古物商許可申請(営業開始の2~3か月前)
③ 飲食店営業許可申請(営業開始の2週間~1か月前)
④ 酒類販売業免許申請(営業開始の3~4か月前)
⑤ 消防署への届出(営業開始前)
複数の許可が必要な場合、それぞれ審査期間が異なるため、逆算スケジュールを立てることが重要です。
行政書士に依頼すれば、並行して複数の申請を進めることができ、時間の短縮につながります。
【 ステップ3:地域資源の活用とブランディング 】
南魚沼の魅力を最大限に活かすことが、競合との差別化につながります。
活用例①:地元特産品とのコラボレーション
売店の一角で、南魚沼産コシヒカリや地酒、伝統的工芸品である塩沢紬などを使った小物などを販売。
単なるスキーショップではなく、「地域の魅力発信拠点」としてのストーリーを打ち出せます。
活用例②:インバウンド対応の強化
多言語対応のレンタル契約書、キャッシュレス決済、Wi-Fi環境の整備など、訪日観光客が安心して利用できる環境づくりが求められています。
特に契約書については、法的トラブルを未然に防ぐため、行政書士と協力して英語・中国語版を用意しておくことが推奨されます。
活用例③:DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入
Web予約システム、スマートロックによる無人返却、在庫管理システムなど、ITを活用した省人化は人手不足対策として有効です。
IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金などの公的支援も活用できます。
➡ 参考:「中小企業庁」
6.行政書士にできること・できないこと
〈 ✔ 行政書士が提供できるサポート 〉
① 許認可申請の代行
古物商許可、飲食店営業許可、酒類販売業免許など、各種許認可申請の書類作成から提出まで代行します。
複雑な添付書類の準備や、行政機関とのやり取りもお任せいただけます。
② 契約書・規約の作成
レンタル利用規約、売買契約書、業務委託契約書など、ビジネスに必要な各種契約書を法的観点から作成します。
特にインバウンド対応の多言語契約書は、トラブル予防に不可欠です。
③ 補助金・助成金の申請サポート
小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金、地域独自の支援制度などの申請をサポートします(※補助金によっては認定支援機関との連携が必要な場合があります)。
④ 法人設立のサポート
株式会社や合同会社の定款作成を行います。
登記申請自体は司法書士が行いますが、実務上は連携してワンストップで対応することが一般的です。
〈 ✖ 行政書士にできないこと 〉
① 税務申告・会計業務
確定申告、決算書の作成、税務相談などは税理士の独占業務です。
開業後の経理や税務については、税理士と契約する必要があります。
② 登記申請
法人設立の登記、不動産登記などは司法書士の業務です(ただし定款作成は行政書士も可能)。
③ 裁判の代理
訴訟の代理人になれるのは弁護士のみです。
万が一、法的紛争に発展した場合は弁護士への依頼が必要です。
④ 社会保険・労働保険の手続き
従業員を雇用する際の社会保険加入手続きなどは社会保険労務士の業務です。
それぞれの専門家の役割を理解し、必要に応じて連携することで、スムーズな開業と安定した経営が実現します。
7.よくある質問(FAQ)
Q1. スキー場が営業していない夏季はどうすればいいですか?
A. 南魚沼エリアでは、夏季にマウンテンバイクレンタルやキャンプ用品販売、トレッキングギアのレンタルなど、業態を転換する事業者が増えています。
通年での収益確保を視野に入れた事業計画を立てましょう。
Q2. 副業でレンタルショップを始めることは可能ですか?
A. 可能です。
ただし、古物商許可には「営業所(拠点)」が必要です。
自宅を営業所とする場合、賃貸物件であれば賃貸借契約書で「事業使用可」となっているか確認が必要です。
また、副業が本業の就業規則に抵触しないかも事前に確認しましょう。
Q3. 申請書類を自分で作成するのは難しいですか?
A. 申請書の様式自体は警察署や保健所で入手できますが、営業所の図面作成、欠格事由に該当しないことの証明、各機関特有の運用ルールへの対応など、初めての方には難しい部分があります。
書類の不備で審査が長引いたり、差し戻しになったりすると、シーズン開始に間に合わないリスクもあります。
開業準備で忙しい時期に、確実かつ迅速に進めるなら、専門家への依頼が合理的な選択です。
Q4. スキー場と賃貸契約を結ぶ際の注意点は?
A. スキー場内に出店する場合、スキー場運営会社との賃貸借契約または使用許可契約を結びます。
契約内容に、営業時間の制約、収益の一部上納、退去時の原状回復義務などが含まれることが多いため、契約前に行政書士や弁護士にチェックしてもらうことをお勧めします。
Q5. インバウンド客とのトラブルを避けるには?
A. 多言語対応の利用規約と明確な免責事項を用意することが重要です。
特にレンタル品の破損・紛失時の補償、怪我の責任範囲などを、法的に有効な形で明示しておく必要があります。
行政書士に相談すれば、英語・中国語・韓国語などの契約書作成をサポートできます。
8.今後の課題と解決案
【 課題①:気候変動による雪不足リスク 】
地球温暖化の影響で、降雪量の減少や営業期間の短縮が懸念されています。
解決案
マルチシーズン対応への転換を図りましょう。
スキー・スノーボードだけでなく、スノーシュー、冬季トレッキング用品、春・夏・秋のアウトドアギアなど、四季を通じて利用できる品揃えにシフトすることで、リスク分散が可能です。
業態拡大に伴い、新たな許認可が必要になる場合もあるため、専門家に相談しながら進めることが重要です。
【 課題②:人手不足への対応 】
スキー場周辺は人口減少地域であり、スタッフの確保が年々困難になっています。
解決案
省人化・無人化技術の導入が有効です。
スマートロック、監視カメラ、セルフチェックインシステム、自動在庫管理などのITツールを活用することで、最小限の人員で運営できる体制を構築できます。
IT導入補助金などの公的支援を活用すれば、初期投資の負担も軽減できます。
【 課題③:インバウンド需要の変化 】
訪日観光客のニーズは多様化しており、単なる「用具レンタル」だけでは満足されなくなっています。
解決案
体験価値の提供に注力しましょう。
地元ガイドとの連携、雪国文化の紹介、地酒の試飲イベント、写真映えするディスプレイなど、「モノ」ではなく「コト」を売る発想が求められます。
SNSでの情報発信も重要な集客手段です。
【 課題④:法規制の変化への対応 】
食品衛生法、個人情報保護法、消費者契約法など、事業に関わる法律は頻繁に改正されます。
解決策
行政書士と顧問契約し、定期的な法令チェックとアドバイスを受ける体制を整えることで、法令違反のリスクを回避できます。
特にインバウンド対応では、契約書の法的妥当性を継続的に見直すことが不可欠です。
9.まとめ:確実な一歩を踏み出すために
スキー場での売店・レンタルショップ開業は、地域経済を支え、訪れる人々に喜びを提供する、やりがいのあるビジネスです。
しかし、その実現には正確な法的知識と迅速な手続きが不可欠です。
「古物商許可の取得が遅れて、シーズンインに間に合わなかった」
「知らずに無許可営業をして、行政指導を受けてしまった」
「契約書が不十分で、トラブルに発展してしまった」
こうした事態を避けるためには、専門家のサポートが大きな助けになります。
行政書士は、南魚沼・湯沢エリアを中心に、スキー場ビジネスの立ち上げをサポートいたします。
✓ 「自分のビジネスにどの許可が必要か分からない」
✓ 「複雑な書類作成は専門家に任せて、店舗準備に集中したい」
✓ 「インバウンド向けの契約書を整備したい」
✓ 「補助金を活用して初期投資を抑えたい」
こうしたお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度、行政書士への相談をご検討ください。
あなたの夢を、確かな「許可」という形にするお手伝いをいたします。
出典・参考
• 国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
• 国税庁「免許申請の手引(販売業免許関係)」
• 新潟県「飲食店営業許可申請」
• 厚生労働省「HACCPに沿った衛生管理の制度化」
• 警察庁「古物営業・質屋営業について」
• 新潟県警察「古物商の許可申請等」
• 総務省消防庁「防火管理制度」
• 南魚沼市「起業・創業」
• 「MUSUBI-BA(むすびば)」:創業支援
• 「中小企業庁」:IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金など
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