木材産業で外国人を採用する際に使える在留資格を整理して解説。
特定技能「木材産業」と「林業」の違い、必要な手続き・書類、よくある失敗例、南魚沼・湯沢・魚沼地域の想定例まで、行政書士がわかりやすくまとめました。
1. この記事は、こんな方に向けて書いています
製材業、合板製造業、集成材やプレカット加工など、木材産業に関わる会社の経営者や人事担当の方に向けた記事です。
「外国人を採用したいが、そもそもどの在留資格が使えるのか分からない」
こういった声が、南魚沼市や湯沢町、魚沼市、十日町市などの新潟県魚沼地域でも、今後増えていくと想定されます。
木材産業では2024年に特定技能という在留資格が新設されました。
ただし、「木材関連の会社だから特定技能を使える」と単純に考えるのは危険です。
実際に外国人が従事する業務の中身によって、使える在留資格も、必要な準備も変わってきます。
この記事では、木材産業で検討できる在留資格の違い、採用の流れ、必要書類、よくある失敗例までを整理します。
2. 木材産業で想定される相談例(地域の事情)
魚沼地域は豪雪地帯であり、林業と木材加工業が古くから根づいている地域です。
冬季の除雪や現場作業の負荷が大きいこと、若手の入職者が少なく高齢化が進んでいることから、人手不足に悩む事業者は少なくありません。
全国的にも、木材産業では業界全体の高齢化と若年層の参入不足が課題として指摘されています。
地域特性を踏まえると以下のような相談が想定されます。
• 製材工場で丸太の加工や仕分け作業を担う人材が不足している
• 合板・集成材工場で機械操作を任せられる人材を探している
• プレカット加工の会社で、木材加工の技能を持つ外国人材の採用を検討している
こうした場合、まず確認すべきは「会社の業種」ではなく「外国人に実際にどの業務を任せたいか」です。
同じ木材加工の会社でも、任せたい業務によって選べる在留資格が変わります。
3. 木材産業で検討できる在留資格の全体像
木材産業で外国人を雇用する場合、主に次の在留資格が候補になります。
• 特定技能(木材産業分野) : 製材業や合板製造業などの現場業務全般
• 技術・人文知識・国際業務 : 品質管理や海外営業、通訳など専門知識を要する業務
• 技能実習・育成就労 : 人材育成を目的とした在留資格(技能実習は2027年に育成就労へ移行)
このうち、木材加工の現場作業(丸太の加工、製材、合板や集成材の製造工程など)を任せたい場合に中心となるのが特定技能です。
以下、それぞれ詳しく見ていきます。
4. 特定技能「木材産業」の中身
特定技能制度には現在19の特定産業分野(本記事執筆時点)があり、木材産業はそのひとつです。
2024年3月の閣議決定により、林業・木材産業・自動車運送業・鉄道の4分野が新たに追加されました。
出入国在留管理庁の公表資料によれば、木材産業分野で従事できる業務は「製材業、合板製造業等に係る木材の加工等」と定められています。
人材基準は次のとおりです。
• 技能水準 : 木材産業特定技能1号測定試験に合格していること
• 日本語能力 : 国際交流基金日本語基礎テスト、または日本語能力試験N4以上
• 雇用形態 : 直接雇用のみ(労働者派遣は認められていません)
➡ 参考:出入国在留管理庁「木材産業分野」
受け入れ機関には分野独自の条件も課されます。
農林水産省(林野庁)が設置する木材産業特定技能・育成就労協議会の構成員になること、協議会で決まった措置に協力することなどです。
この協議会は2026年に、特定技能に加えて育成就労制度もあわせて扱う形へと改組されています。
➡ 参考:林野庁「木材産業における外国人材の受入れ」
受け入れ見込数については、注意が必要です。
2024年の制度創設時点では5年間で最大5,000人という枠が示されていましたが、2026年1月23日の閣議決定で見直され、現時点の運用方針では特定技能1号で4,500人、育成就労とあわせた分野全体で6,700人という数字に改められています。
制度は年々更新されるため、最新の見込数は都度確認することをおすすめします。
➡ 参考:出入国在留管理庁「外国人労働者に関する制度概要」(令和8年7月1日更新)
なお同資料によると、2026年3月末時点で在留する特定技能1号の木材産業分野の人数は34人にとどまっています。
制度が始まってまだ日が浅く、受け入れの実例自体が少ない分野だという点は、採用計画を立てるうえで踏まえておく必要があります。
受け入れ機関には、1号特定技能外国人に対する支援の実施も義務付けられています。
事前ガイダンスの実施、入国時の送迎、住居確保の支援、生活オリエンテーション、日本語学習機会の提供、相談・苦情への対応、日本人との交流促進、転職支援、定期的な面談などが主な内容です。
これらの支援は自社で行うこともできますが、全部を登録支援機関に委託することも可能です。
登録支援機関は支援の実施を担う機関であり、書類作成や申請取次を行う行政書士とは役割が異なります。
両者を混同して依頼先を決めてしまうと、本来必要な業務が抜け落ちることがあるため注意してください。
特定技能2号については、木材産業分野は対象外です(2026年9月時点)。
同じく2024年に追加された林業分野も対象外となっており、長期雇用や家族帯同を前提とした採用を考える場合は、この点を誤解しないよう注意してください。
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5. 「林業」分野との違い
木材産業と混同されやすいのが、同じく2024年に追加された林業分野です。
林業分野で従事できる業務は「林業(育林、素材生産等)」と定義されており、山林での木の育成や伐採、丸太の生産が中心です。
➡ 参考:出入国在留管理庁「林業分野」
林業分野では、自社が生産した林産物を材料として林内で行う簡易な加工は関連業務として認められますが、それはあくまで付随的な範囲にとどまります。
製材や合板製造といった木材加工そのものを主な業務にする場合は、林業分野ではなく木材産業分野を検討することになります。
山で木を切り出す仕事と、工場で木材を加工する仕事とでは、分野が分かれている点を押さえておきましょう。
➡ 林業での外国人雇用については「こちらの記事もおすすめ」
6. 技術・人文知識・国際業務との違い
品質管理担当者、海外向けの営業担当、通訳や翻訳業務を担う人材を採用したい場合は、技術・人文知識・国際業務という在留資格が候補になります。
これは大学卒業などの学歴や実務経験を通じて得た専門知識を活かす業務が対象で、単純な加工作業や機械操作といった現場の肉体労働には使えません。
木材産業の会社であっても、「工場のラインで木材を加工してもらう」目的でこの在留資格を使うことはできません。
現場作業を任せたいのか、専門知識を要する業務を任せたいのかによって、選ぶべき在留資格が根本的に異なる点に注意が必要です。
➡ 技術・人文知識・国際業務については「こちらの記事もおすすめ」
7. 技能実習・育成就労の位置づけ
技能実習制度には「木材加工職種(機械製材作業)」という区分が2023年10月に追加されました。
ただし技能実習制度は段階的に廃止され、2027年4月1日から育成就労制度に移行します。
木材産業分野は育成就労制度でも受け入れ対象分野に含まれる予定で、木材加工を主たる技能として育成する仕組みが想定されています。
すでに技能実習中の方には経過措置が設けられます。
➡ 参考:林野庁「木材産業における外国人材の受入れ」
これから新たに人材育成型の受け入れを検討する場合は、技能実習ではなく、2027年施行の育成就労を視野に入れた準備が現実的です。
施行後は概ね3年間、技能実習と育成就労が併存する経過期間が設けられ、2030年頃に技能実習制度は完全に廃止される見通しです。
育成就労では、本人の意向による転籍(転職)が一定の条件のもとで認められる点も、従来の技能実習にはなかった特徴です。
➡ 育成就労制度については「こちらの記事もおすすめ」
8. 採用手続きの流れ
在留資格の種類や、外国人本人が海外にいるか国内にいるかによって、手続きの流れは異なります。
以下は特定技能を念頭にした一般的な流れであり、すべてのケースに一律に当てはまるものではありません。
① 外国人に任せたい業務内容を具体的に整理する
② 業務内容にあった在留資格の候補を確認する
③ 外国人本人の技能試験・日本語試験の合格状況や技能実習歴を確認する
④ 雇用条件(報酬、労働時間など)を日本人従業員と同等以上に設定する
⑤ 雇用契約を締結し、1号特定技能外国人支援計画を作成する
⑥ 協議会への加入など、分野独自の要件を満たす
⑦ 海外から呼び寄せる場合は「在留資格認定証明書交付申請」、国内在留者の場合は「在留資格変更許可申請」などを行う
⑧ 出入国在留管理局による審査を経て許可
⑨ 在留カードの交付を受け、就労を開始する
⑩ 受け入れ後は定期届出など、継続的な義務を履行する
なお、2026年10月1日から「在留資格変更許可申請」・「在留期間更新許可申請」の手数料が改定されます。
現行は窓口6,000円・オンライン5,500円の一律ですが、改定後は許可される在留期間に応じて窓口1万円から7万5,000円、オンライン1万円から6万5,000円の段階制になります。
2026年9月30日までに受け付けられた申請は、許可が10月以降になっても改定前の手数料が適用されます。
➡ 参考:出入国在留管理庁「令和8年10月1日付け在留許可手数料の額の改定等について」
➡ 【 更新情報 】 2026年10月1日改定の新手数料については「こちらから」
9. 必要書類
必要書類は在留資格の種類や外国人本人の状況によって異なります。
「必ずこの書類がすべて必要」というわけではなく、申請内容によって加減がある点をご理解ください。
おおまかな分類は以下のとおりです。
• 外国人本人に関する書類
パスポート、技能試験・日本語試験の合格証明、技能実習の修了証明(該当する場合)など
• 会社側に関する書類
登記事項証明書、決算書類、労働・社会保険や税に関する納付状況を示す書類
• 雇用契約関係書類
雇用契約書、雇用条件書
• 業務内容を説明する書類
従事させる業務の内容を具体的に説明する資料
• 給与・労働条件に関する書類
賃金規程、報酬が日本人と同等以上であることを示す資料
• 特定技能の場合に追加で必要となる書類
1号特定技能外国人支援計画書、協議会への加入を証する資料など
たとえば、海外から新たに呼び寄せる場合と、すでに国内に技能実習生として在留している方から切り替える場合とでは、提出が必要となる書類の組み合わせが異なります。
技能実習「木材加工職種(機械製材作業)」を良好に修了している方であれば、木材産業特定技能1号測定試験や日本語試験が免除される仕組みもあります。
こうした個別の判断は、申請内容や本人の経歴によって変わるため、申請前に管轄の出入国在留管理局や専門家に確認することをおすすめします。
10. よくある失敗例
現場でよく見られる失敗例を紹介します。
※ 以下は制度を分かりやすく説明するための想定例です。実在の個人・法人を特定するものではありません。
• 「木材関連の会社だから」という理由だけで特定技能が使えると思い込み、実際の業務内容を確認していない
• 林業分野と木材産業分野を混同し、業務区分に合わない申請をしてしまう
• 特定技能は直接雇用のみという条件を見落とし、人材派遣での受け入れを検討してしまう
• 技能・人文知識・国際業務で採用した人材に、現場の加工作業を担当させてしまう
• 報酬額が日本人従業員と同等以上になっているかを確認していない
• 外国人本人の在留資格や在留期限の管理が不十分になる
• 特定技能で必要な支援計画や協議会への加入を後回しにしてしまう
• 受け入れ後に必要な届出を失念する
これらは、業務内容の整理と在留資格の要件確認を早い段階で行うことで、多くが防げるものです。
11. 行政書士に依頼「できること」・「できないこと」
行政書士(申請取次行政書士)に依頼できる主な業務は次のとおりです。
• 在留資格の選択に関する相談
• 必要書類の案内と申請書類の作成
• 出入国在留管理局への申請取次
• 雇用契約書や業務内容説明資料の整理に関する助言
一方で、行政書士には対応できない業務もあります。
労務管理そのもの、社会保険・労働保険の手続き(社会保険労務士の業務)、税務申告(税理士の業務)、求人・採用活動そのものは、それぞれ別の専門家が担う領域です。
行政書士がすべてを代行できるわけではない、という点は誤解のないようお伝えしておきます。
12. 南魚沼・湯沢・魚沼地域での想定例
以下は制度を分かりやすく説明するための想定例です。
実在の個人・法人を特定するものではありません。
♦ 想定例 ① : 南魚沼市の製材・木材加工会社
丸太の製材工程を担う人材が不足している場合、まず検討されるのは特定技能(木材産業分野)です。
ただし本人が木材産業特定技能1号測定試験に合格しているか、技能実習「木材加工職種(機械製材作業)」を良好に修了しているかによって、必要な手続きが変わります。
♦ 想定例 ② : 湯沢町周辺の建築資材関連事業者
プレカット加工など建築資材の製造を行う場合も、業務内容が「木材の加工等」に該当するなら木材産業分野の対象となり得ます。
海外向け営業や品質管理といった専門職を別途採用したい場合は、技術・人文知識・国際業務との使い分けを検討します。
♦ 想定例 ③ : 魚沼地域の集成材・木材関連事業者
林業から木材加工まで一貫して手がける事業者の場合、山林での作業を担ってもらうのか、工場での加工作業を担ってもらうのかによって、林業分野か木材産業分野かが分かれます。
両方の業務を任せたい場合は、それぞれの分野の要件を個別に確認する必要があります。
13. 今後の課題と実務的な対応
木材産業の外国人材活用には、いくつかの課題が指摘されています。
日本語でのコミュニケーション、安全教育、技能の習得、現場との意思疎通などです。
これらは法律上の義務と、企業として推奨される取り組みを区別して考える必要があります。
法律上の義務としては、1号特定技能外国人支援計画に基づく支援の実施、報酬の適正な支払い、在留カードや在留期限の管理などが挙げられます。
一方、日本語学習の機会提供や、現場での丁寧な安全教育、定着支援のための面談などは、法律上必須とまでは言えない場合でも、長期的な人材確保のためには重要な取り組みとなります。
「何が義務で、何が推奨事項か」を整理したうえで、無理のない体制を段階的に整えていくことが現実的な進め方です。
14. よくある質問(FAQ)
Q1. 木材会社で外国人を雇うことはできますか?
A.できます。
ただし、任せたい業務内容によって使える在留資格が異なるため、まず業務内容を整理することが出発点になります。
Q2. 製材業や合板製造業は特定技能の対象になりますか?
A.木材産業分野の対象業務は「製材業、合板製造業等に係る木材の加工等」とされており、対象になり得ます。
Q3. 林業と木材産業ではどちらの在留資格を使えばよいですか?
A.山林での育林・素材生産が中心なら林業分野、工場での木材加工が中心なら木材産業分野です。
業務の実態に沿って判断する必要があります。
Q4. 技術・人文知識・国際業務で木材加工の現場作業に就かせることはできますか?
A.できません。
この在留資格は専門知識を要する業務が対象で、加工作業などの現場労働には使えません。
Q5. 特定技能「木材産業」に2号はありますか?
A.2026年9月時点では対象外です。
長期就労や家族帯同を前提とする場合は、この点をあらかじめ確認しておく必要があります。
Q6. 技能実習生を木材加工の仕事で受け入れることはできますか?
A.「木材加工職種(機械製材作業)」という区分が存在しますが、技能実習制度自体が2027年4月に育成就労制度へ移行するため、これから新規で検討する場合は育成就労を視野に入れるのが現実的です。
Q7. 育成就労制度が始まると何が変わりますか?
A.2027年4月の施行後、木材産業分野は育成就労の対象分野に含まれる見込みで、木材加工を主たる技能として人材を育成する仕組みが想定されています。
詳細は今後の運用方針の確定を待つ必要があります。
Q8. 外国人を採用する際、会社は何を準備すればよいですか?
A.業務内容の整理、雇用条件の設定、必要書類の準備、特定技能の場合は協議会への加入や支援計画の作成が必要です。
Q9. 在留資格の手続きは行政書士に頼めますか?
A.申請取次行政書士であれば、書類作成や申請取次を依頼できます。
ただし労務管理や社会保険手続き、税務申告は対応範囲外です。
Q10. 特定技能で採用した外国人は自由に転職できますか?
A.同一の業務区分内であれば転職が可能とされています。
ただし転職先でも、木材産業特定技能・育成就労協議会への加入など分野独自の条件を満たす必要があります。
Q11. 登録支援機関と行政書士は何が違いますか?
A.登録支援機関は、1号特定技能外国人への生活支援などを実施する機関です。
行政書士(申請取次行政書士)は、在留資格の申請書類の作成や出入国在留管理局への取次を行います。
どちらに何を依頼するかを整理したうえで、必要に応じて両方を活用する形が現実的です。
➡ 登録支援機関と行政書士の違いについては「こちらの記事もおすすめ」
Q12. 不許可になった場合はどうすればよいですか?
A.不許可の理由を確認したうえで、業務内容の説明や提出書類に問題がなかったかを見直すことが第一歩です。
個別の事情によって対応が異なるため、専門家への相談をおすすめします。
15. まとめ : 在留資格は「業種」ではなく「業務内容」で選ぶ
木材産業での外国人採用は、「業種名」ではなく「実際に任せる業務内容」から在留資格を選ぶことが出発点です。
林業分野との切り分け、技術・人文知識・国際業務との使い分け、そして技能実習から育成就労への制度移行など、確認すべきポイントは少なくありません。
自社の場合にどの在留資格が使えるのか判断が難しい、必要書類が分からない、自社だけで申請を進めるのが不安だという場合は、行政書士への相談をひとつの選択肢としてご検討ください。
当事務所は申請取次行政書士の資格を持ち、外国人本人や会社の担当者に代わって出入国在留管理局への申請取次を行うことができます。
南魚沼市・湯沢町・魚沼市・十日町市を含む新潟県魚沼地域を中心に、木材産業をはじめとする外国人雇用に関するご相談を承っています。
詳しくは当事務所のホームページをご覧ください。
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出典・参考
• 出入国在留管理庁「木材産業分野」
• 出入国在留管理庁「林業分野」
• 林野庁「木材産業における外国人材の受入れ」
• 出入国在留管理庁「外国人労働者に関する制度概要」(令和8年7月1日更新)
• 出入国在留管理庁「令和8年10月1日付け在留許可手数料の額の改定等について」
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